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INTERVIEW

Japanese

KABUKIMONO'DOGs 座談会

2024年06月号掲載

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"神使轟く、激情の如く。"らが所属するアーティスト事務所、KABUKIMONO'DOGs(カブキモノディージー)とSkream!の12ヶ月連載企画が、いよいよ最終回を迎える。今回でラストに相応しい企画として、レーベル代表 大城文哉を迎えKABUKIMONO'DOGsの歴史やこだわりを所属メンバーと共に訊いた。このレーベル、名前に負けないまさに傾奇者の集まりだ。

KABUKIMONO'DOGs代表:大城 文哉
バブルバビデガム∀:七音 そら
GANGDEMIC:Tsubaki
キュン!?恋堕ちキューピッド:愛野 ゆう
Panic Monster !n Wonderland:タネ
戦国アニマル極楽浄土:猫屋敷 くろえ
ヲドルマヨナカ:白羽 ひな
Interviewer:宮﨑 大樹 Photographer:藤咲千明

-大城さんがメディアの取材に出てくるのって珍しいですよね。

大城:実は僕、こういう取材に代表として出るのが初めてなんですよ。もちろんお声掛けいただいたことは何回もあったんですけど、ライヴとかはするんですが、インタビューとかめっちゃ語る系運営さんと一緒になりたくなかったので基本はお断りさせていただいていて。じゃあ今回なんでやらせていただくことになったかというと、僕が18歳で東京に出てきたときは、激ロックさんが鬼盛り上がり時期で、渋谷をブチアゲまくっていたんです。そういう時期に自分がストリートに携わっていたので、言わば一種の青春みたいなもので。その激ロックさんの姉妹誌であるSkream!さんの誌面に載ることができるというのは、自分にとってはひとつの夢だったので、今回参加させていただきました。

-ありがたいです。まずはレーベルの歴史と背景についてうかがえますか。

大城:今お話しした通り18歳で東京に来て、22歳ぐらいまで都内でバンドをやっていたんですね。23歳ぐらいのときに、自分的にはバンドをやりきった感というか、別のことをしたいなと考えていたときに、神激(神使轟く、激情の如く。)のプロデューサーであるMTRと偶然知り合ったんですよ。あの当時の渋谷って、今で言うトー横キッズじゃないけど、不健康さがファッションみたいになっていたと思うんですよね。そういうカルチャーがあったなかで、それに似合わずめちゃくちゃ健康体が来て(笑)、純正のイケメンに会ったことがなかったから"おっ"て思いました。そこから仲良くなって、ふたりで話しているときに"アイドルをやろう"という話になり、(株式会社)SENKOU SOUNDを紹介してもらって入ることになったんです。で、"SENKOU SOUNDでやるんだったらレーベルを立てたほうがいいね"となるんですけど、当時の僕は入りたてだったのでまだ代表にはなれなかったんですよ。なので、別の女性の方に代表をやっていただいて、そこで第1のグループとして神激を始めさせてもらいました。僕がやっていたバンドがミクスチャー・ロック・バンドで、MTRがラウドとかプログレなサウンドを好んでいたので、どうせならそういうのを全部混ぜて、自分が激ロックさんとかで見ていたようなラウドなバンドさんとも戦えるような、まだ聞いたことがないようなものをやりたくて、それができるのはMTRだけだなと思って始まったのが神激なんです。

-なるほど。

大城:神激がこの業界に残した功績は大きいと思っていて。(KABUKIMONO')DOGsがアイドル・シーンに入る前って、如実に地下と地上が分けられていたと思うんです。今みたいに売れている/売れていないみたいな曖昧な基準ではなくて、地上であればアー写がレタッチされていて、合成とかもしっかりとしていましたけど、地下であればレタッチもされていない白背景でピースするみたいなものとか、ロゴも素人が作ったようなものでしたし、あとは音源やMVがあるかないかとか、そういうものが明確にあった時代だったんです。でも僕らはバンドで培ったノウハウがあるので、インディーズでもお金を出してカメラマンを押さえればアー写を撮れるし、MVも自分らでプロデュースすれば撮れることを示した。それ以降アートワーク大戦争が起きて、今では地下アイドルもアートワークがわりとしっかりしていると思うんですよ。そこに至るまでは確実に僕らが最初だと思います。

-はい。

大城:あとは東京のアイドル・シーンにツーステップを持ってきたのは間違いなく僕らだと思っていて。サイプレス上野(サイプレス上野とロベルト吉野/マイクロフォン)さんじゃないですけど、使いたきゃ使いな、でも僕らのおごりだってのは忘れず使いな(「ぶっかます」)って感じですが、知らずに使ってる人多いですね。それもきっかけとしては18歳のころの激ロックさんのシーンが開発したいわゆるキッズツーステで。外タレとか米軍の人たちがやるガチのツーステではなくて、いわゆるキッズツーステ的なものを流行らせていたと思うんですけど、僕が神激を始める際にはもうその文化が死んでいたんですね。で、アイドル・シーンは流行が5年後に回ってくるという情報を得ていたので、5年後である当時にそれを持っていったら......めちゃくちゃ叩かれましたね(笑)。

-(笑)

大城:いわゆるオタクって言われているお客さんに、"なんだあれ、気持ち悪い"みたいな叩かれ方をしていたので、まさかこんなに流行るとは思っていなかったです。ただ、それでも続けていましたね。間違っていないと思っていたし、自分が18歳のときに楽しめていたことは、今の子たちも楽しめるだろうと思っていました。あとはMCとかバンドさんっぽい煽りとかも、アイドル・シーンでは間違いなく自分らが先だと思うんですけど、それも叩かれましたね。"アイドル側が煽ってくるんじゃねぇ"とか、めっちゃTwitter(X)で叩かれて。挙句の果てにはすごいハッシュタグができて、あの当時は炎上しまくっていたんですよ。シーンの敵みたいになっちゃったんです。何しても目立つし、何しても叩かれるみたいな時期があって。でも、結果的に今は自称ロック系のグループさんがMCも煽りもするし、お客さんはツーステをするし、ひっくり返るものだなと思ったんです。ひっくり返ったときにスタンダードになるものなんだなって、そのときにすごく感じたんですよ。だから"叩かれ上等"ではないんですけど、常に新しいことをしていこうと思っています。

-そうして神激が軌道に乗っていくなかで、所属グループが増えていくことになりますよね。

大城:自分が代表になって第2グループ(戦国アニマル極楽浄土)、第3グループ(バブルバビデガム∀/当時のグループ名は"アイスクリーム夢少女")を作ったときに、なぜ毛色が違うグループなのかという話になるんですけど、そのころにはもうロック系が流行っていたからなんですよ。BiSHさんが売れていたというのも大前提なんですけど、ラウド寄り、ストリート寄りのサウンドを入れ込んでいる人たちが増えてきたんです。逆に王道アイドル系とか、盛り上がる系なところが勢いを落としていて。僕は天邪鬼なところがあるので、そういう時代だから逆にそっち系を作るぞ、みたいな感じでこの2グループを作りました。

-だからグループによってジャンルがバラバラなんですね。

大城:アイドル・レーベルってレーベルの色で統一しがちじゃないですか。パンク系とか、ロック系とか、そこで一番売れたグループに合わせたジャンルをやっているところがほとんどだと思うんですけど、僕らは全部バラバラにしたかったんですよ。神激はもう当時から勢いがあったので、神激っぽいグループを作ったら神激のお客さんがある程度流れるから動員は成り立つと思うんですけど、神激よりは売れなくなっちゃうじゃないですか。僕らはどのグループに対しても平等に希望を持っていたいし、可能性を持っていたいので、バラバラのものをやろうとしていました。ただ、ロック系をやりたい子たちも事務所に入ってくるんですよね。それで改めてグループを作ろうとなったときに、もうラウド的なサウンドをやりたくなかったんですよ。

-それでも結果としてラウド寄りなGANGDEMICが誕生していますよね。

大城:ギャンデミ(GANGDEMIC)のマネージャーのWATARU.さんは、僕が渋谷にいたときに通っていたようなバンドの人なんです。なので"WATARU.さんがやるんだったらロック系をやってもいいよ"と言って始まりました。ちょっと歪ませてラウドにするみたいなのはストリートの音楽なんですけど、とりあえずラウド系のアイドルが流行っているからそっち系をやらせるとか、当時は多かったんですよね。で、作る側、プロデュースする側がそこにいなかった人間だったり、そこのカルチャーを理解していないやつだったりするのが僕には解せなくて。それってフェイクだと思うんです。やっている側がストリートにいたかどうか、そのカルチャーをちゃんと理解しているかどうか、これがすべてなんですよ。これが、僕がギャンデミまでロック系を作らなかった理由で、WATARU.さんがいたからギャンデミを始めることができました。

-そして点染テンセイ少女。が誕生します。

大城:テンテン(点染テンセイ少女。)はいわゆるギター・ロック系というか、サーフ・ロック的なサウンドと王道系を掛け合わせた感じですね。THE王道みたいなグループが事務所にいなかったので、王道系も作ってみたいなと思って最初はスタートしたんですけど、やっぱ毛色が出ちゃうというか。うちの作家にはギター・サウンドで制作する人間が多いので、そういうグループができました。当時では一番わかりやすいものをやったなとは思いますね。わかりやすすぎたので、逆に変なことさせようと思って早朝にワンマンをやらせたりとか、富士山から走らせたりとかしましたけど(笑)、自分の中では王道を作ろうとしていました。

-さらにヲドルマヨナカ、Panic Monster !n Wonderlandが立て続けにデビューしますね。

大城:ヲドルマヨナカは下北ロック系、今でいうとフレデリックさんとかKANA-BOONさんみたいな、裏打ちでリフが鳴っているグループがアイドルにいないなと思って始めました。パニモン(Panic Monster !n Wonderland)は、再度王道を作ろうと挑戦したんです。ここまでは癖が強いグループを作っていたのって、王道に対するアンチテーゼ的な考え方があって。王道がすべてだった業界に僕が入って、"ちゃんとした音楽はアイドルがやってもカッコいい"ということを見せるために、いろんなサブジャンルをやっていたんですよ。そうしたら、いよいよ王道が弱くなって、サブジャンル的なグループが増えすぎちゃったんですよね。じゃあ、お前らがそれをやるんだったら、逆に私はめっちゃいい王道を作りますよと。それで始めたのがパニモンです。ただ、やっぱりパニモンも癖がありますよね(笑)。DOGsが王道をやるんだったらこうだろうみたいな形で始めたので、コンセプトがすごく尖っていますし、王道ソングだけどハードコアとかEDM、テクノ的なドロップがあったりしますし、シティ・ポップっぽいシーンが入ったりしています。

-そして、一番新しいグループのキュン!?恋堕ちキューピッドが誕生するわけですが、超王道なグループだったので個人的にはかなり驚いたんですよ。

大城:こんなに個性的なグループが集まったから、逆に本物の王道を作ったら、それってレーベル内ではめっちゃ傾奇者じゃないですか(笑)。それで作ったのがキュピド(キュン!?恋堕ちキューピッド)なんです。グループを作るときには常にそういう思考というか、成り立ちがあって今に至る感じす。

-白羽さんは、今日参加しているメンバーでKABUKIMONO'DOGs歴が一番長いわけですけど、レーベルの歴史を聞いてどう感じましたか?

白羽:先輩グループとか、自分のグループより新しいグループの経緯とかはそこまで知らなかったんですけど、シーンと逆のものに挑戦したいという気持ちはみんなが持っているように感じます。ヲドルマヨナカの会議でも、みんながやっていることと反対のことをやりたがるような意見がたくさん出ていて、そういうところに惹かれてみんなが集まったのかなと思いますね。

-逆に一番歴が短いのは愛野さんですね。

愛野:キュン!?恋堕ちキューピッドは4月1日がデビュー日なんですけど、その日ってエイプリル・フールじゃないですか。なのでファンの方は"KABUKIMONO'DOGsがTHE王道アイドル・グループを作るわけがない。これは壮大なエイプリル・フールだ"と思っていたらしくて、デビュー日に"本当にデビューできたんだね"って言われたんです。その意味が今すごくわかりました(笑)。