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INTERVIEW

Japanese

KABUKIMONO'DOGs 座談会

2024年06月号掲載

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KABUKIMONO'DOGs代表:大城 文哉
バブルバビデガム∀:七音 そら
GANGDEMIC:Tsubaki
キュン!?恋堕ちキューピッド:愛野 ゆう
Panic Monster !n Wonderland:タネ
戦国アニマル極楽浄土:猫屋敷 くろえ
ヲドルマヨナカ:白羽 ひな
Interviewer:宮﨑 大樹 Photographer:藤咲千明


一番ダメなのは流行っているからやること、二番煎じを我が物顔でやるのは自分の生き方として正しくない(大城)


-そうやって、常に流行の逆を行くというのは"KABUKIMONO(傾奇者)"というレーベル名にも関わってくると思うんですけど、このレーベル立ち上げるときからそういう思想があったんですか?

大城:そうですね。神激は当時の王道ではなかったけどそれがニュー・スタンダードになったように、自分の中で"ニュー・スタンダード・フロム・アナーキー"というワードがすごく大事なんです。アナーキーな場所から新しい常識ができるとずっと考えていて。流行っているものには何か理由があるけど、流行っていないものに理由はないと思うんです。カルチャーはカルチャーとしてあるし、ジャンルとしてはあり続けますから。今になって若いシーンでスカが流行っていたりしますけど、スカはずっとあり続けていたし、ミクスチャーもずっと落ち着いてたけど、AFJBさん含め若手のバンドさんもできてきている。流れじゃないんですけど、ちゃんと信じ続けてやっていたら大丈夫なものなんですよ。一番ダメなのは流行っているからやることですよね。その時点で二番煎じ、三番煎じだし。二番煎じ、三番煎じを我が物顔でやるのも別にいいと思うんですけど、それは自分の生き方として正しくないなと思っています。会社をやっていると、自分の矜持と利益の塩梅がすごく難しいですけど、矜持を利益のために曲げてしまうと良くないなと思って、今の考え方に至りますね。

-目先の利益を取らない方向に進んでいるのに、これだけの大所帯になって、さらにこれまでに解散したグループも少ないですよね。

大城:今7年目で、このペースでグループを増やしてきているのにめちゃくちゃ少ないですね。

-何かグループを存続させる秘訣みたいなものがあるんですか?

大城:音楽が好きなことです。親会社が作家会社なので、自分らの曲を自分らで作って、そのグループのこと、グループのコンセプト、メンバーのことを理解している、プラス自分たち自身も音楽が大好き。だからいろんな幅で音楽を楽しんで、それを全部表現し続けています。

-根底として各ジャンルへの愛があるから、ちょっとやそっとじゃグループを畳もうという発想にはならないと。

大城:そうですね。畳んじゃうとそのジャンルがやれなくなっちゃうじゃないですか。また同じジャンルのグループを作るのも嫌ですし。

-ここまで話を聞いてきたように、KABUKIMONO'DOGsの特色って、アンチ精神とDIY精神だと思っているんですけど、各グループ、メンバー目線では他に"こんなところがKABUKIMONO'DOGsらしさだな"と思うことはありますか?

白羽:今ヲドルマヨナカでやっている"ジオラマティックメイク"という企画があるんです。新曲って普通はサブスクで聴いたりライヴやMVで観たりして体感してきたと思うんですけど、この企画は、楽曲の世界観に一緒に没入してみようというものなんですよ。その第1弾として、「ミライカクレンボ」(2024年2月配信リリース)という楽曲では、タイトルにちなんでリリース日の深夜に池袋の街中でお客さんと一緒にかくれんぼをしたんです。楽曲の世界観にお客さんと一緒に入るというのはアイドルで見たことなかったので、そういう企画もKABUKIMONO'DOGsらしさなのかなと思います。



大城:DIYの一部ではあると思うんですけど、お手製だからこそ面白いことができるんです。"ジオラマティックメイク"もそうですし、"超早朝ワンマン"とか"山手線ツアー"とか、"こんなの初めて"が大事だと思っていて。戦極(戦国アニマル極楽浄土)も今、企画をやっているよね?

猫屋敷:戦極は(戦国アニマル極楽浄土)去年の11月から新体制として活動していて、"Re:Boooooorn"という企画をやっています。そのなかで、昔の戦極が好きだった方にも今の戦極の魅力に気づいてほしいという想いで、"#タイムリープ返"という、過去に投稿された戦極に関するポストに返信しているんです。これも他では見たことがない企画だなと思いますね。

七音:KABUKIMONO'DOGsは流行りと逆を行くのに、なんでグループが上に行けるかというと、全グループが月30本ものライヴをやっていたり、渋谷とか秋葉原でビラ配りをしたり、自分たちの音楽やコンセプトを信じて、どのグループも泥臭く全力でやっているからだと思うんです。そこもKABUKIMONO'DOGsならではなのかと感じます。

-たしかにどのグループもライヴの本数が異常に多いですよね。

大城:理由はふたつあって。初手でライヴ本数やビラ配りを多くした理由としては、正直ぬるいと思っていたんですよ。バンド業界では、ライヴをしたら赤字だし、スタジオ代を自分で払って、ツアーは自分らで運転して、その間にアルバムを作らないといけなかったりして、帰ってきたらバイト――地獄だったのに、活動から貰えるお金は僅かしかない(笑)。でも、それをやっていたからこそステージで語る夢が大きかったし、お客さんにも伝わっていたと思うんですよ。でもアイドルって変な話、すぐにお金を貰えちゃうんですよね。なので、極限まで突き詰めないと言葉が軽くなるからやらせていたというのがあります。そうなると、今もそうですけど僕自身もめちゃくちゃ働いていましたね。

-では、もうひとつの理由は?

大城:もうひとつはアフターコロナでの理由づけになるんですけど、アフターコロナからは業界全体のメンバーの集め方が、オーディションから、すでに数字がついている子にオファー・メールをして集めるようなところが増えていったしそういうグループが結果を出すことが多くなってきたんですね。いわゆるインフルエンサー系グループと呼ばれる時代になっていったんです。そっちに偏っていく理由は、単純にコスパがいいからだと思ってて。事務所の仕事って3つしかなくて、いいものを作ることと、いいタレントに育てていいグループを作ること、それを広げることだと思うんです。で、数字がある子たちというのは1ツイートに対してのアクティビティが圧倒的に多いわけで、プロモーション費用をある程度割いた金額と同じぐらいの効果が出ちゃうんですよ。いいタレントに育てるというところに関しても、なぜこの子たちが事務所に入っていないのにその数字を作れたかって、もうすでに自己プロデュース能力の才能が開花しているからじゃないですか。だからタレントを育てるコストもいらない。そうなるとグループのコンテンツだけに時間とお金を使えるので、コスパがいいからそこに傾倒しているというのも要因としてあると思います。

-でも、大城さんはその方法を取らなかった。

大城:そうです。僕はマジで1回もスカウトをしたことがないんですよ。全部オーディションです。毎週月曜とかは未だに朝の10時から夜の10時まで12時間面談しています。これは自分の歴史の話になっちゃうんですけど、自分がこの業界に入ったときは23歳のガキで、お金もコネクションも実績もなかったから"頑張ります、絶対大きくなるんで"と言っても、"じゃあ何か信じられる数字をください"と言われたら出せなかったんです。でも、そんな自分に"お前、面白いな"と言って、信じて応援してくれた大人たちがいたから今の自分があるんですね。だから、自分が選ぶ側になったときには昔の俺みたいなやつ、サポートすれば上がれるやつを選ぶようにしています。そのうえで、うちの事務所に入ったからっていわゆるインフルエンサーの人たちとの差は埋まらないわけだから、ここはウサギとカメの話をするしかなくて。向こうが休んでいる間に走り続けないといけないし、向こうがやっていない努力をし続けないと勝てないわけじゃないですか。

-そうですね。

大城:やることは"勝つこと"なんですよ。"楽しくアイドル活動をしましょう"だったら他のアイドル事務所でもできる話で。勝つならキツい思いをしないといけない時代なんだと思います。同じステージに立って、同じマイクを使って、同じPAさんで、同じスピーカーだとしても、背景が違ったら響き方が違うと思うんです。ほぼ毎日ライヴをして、ビラ配りをしてきたから、他のぬるいやつとか、夜な夜な六本木、歌舞伎町で飲んでいるやつらとはマイクの鳴り方が違う。そんな感じです。

Tsubaki:本当に愛を感じるんですよ。リスペクトが壮大です。先ほど文哉さんもおっしゃっていたんですけど、自分たちのグループの曲は全部SENKOU SOUNDさん、文哉さんたちが作ってくださっていて。アイドルって自分たちで作っている楽曲を披露するというイメージがあんまりなかったんですけど、自分たちの曲を自分たちでやるという姿勢が本当にいいなと思って、この事務所で活動できて嬉しいです。

タネ:KABUKIMONO'DOGsでは、人間力みたいなところを学ばせてもらっているなと思っていて。いろんな新しいことに挑戦させてもらっていると、ぶつかる壁や困難もあるんですけど、そのたびにスタッフさんが近くにいてくれるんです。そのおかげで活動できています。さっき文哉さんがおっしゃっていたように、バックグラウンド、今までの経験値、どういう気持ちでステージに立つかというのはお客さんに伝わるところだろうし、そういうところを感じ取ってKABUKIMONO'DOGsのお客さんはついてきてくれているんじゃないかと思います。