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INTERVIEW

Japanese

小林柊矢

2023年02月号掲載

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普段通りすがる人にも夢があって、覚悟があって――そうしたものすべてが僕のモチベーションになる


-「名残熱」は女性目線ですね。

女性目線で書きましたね。女性目線の楽曲って少ないんですよ。「茶色のセーター」(2021年リリースのデジタル・シングル)って曲と「私なりの」(『あの頃の自分に会えるなら』収録)っていう曲がありまして、それは女性目線で書いたんですけど、僕の中ではなかなか珍しいです。

-女性のどういう心情を想像して書いたんですか?

男性を女性目線で惚れる要素を女性の友達から聞いたり、想像で書いてみたら、ギャップというか、例えば"服着たまま飛び込み/「寒い」と震えるあなた/誰よりも好きだった"っていう1番と、"夢を語りだすと/ふいに大人びる横顔/何よりも好きだった"っていう2番で、すごくお茶目な子供な部分とふっと大人になるところに女性は惹かれるんだろうなと自分の中で思いまして、それを大事にしました。

-これは逆に女性目線ですけど、彼女自身が自分っていうものを確立する前にその人に頼っちゃいそうで、まだ自信がないっていう気持ちがあるのかなとも思えて。

依存してしまう、みたいな? うんうん。切ないですよね。

-この"わたしの人生があなた色に染まってしまう前に"っていうのが肝で、男性側の「矛盾」とか、自信がない曲と対になってて女性側のリアリティが描かれているのがいいですね。

ありがとうございます。女性の方にそう言っていただけると本当に嬉しいです。

-そして実質的なアルバムのラスト「あの人のため」で、また大きな愛というか、大きな人間関係に戻ってくる感じがします。

これは、自分はちっちゃい頃から野球をやってたんですけど、そんな経験を経て、スポーツをやってる、スポーツに限らず夢を持っているみんなに書いた曲で。歌詞にも書いてあるんですけど、"綺麗事と言われたっていい"というか。"あの人のためにやってるんだ"っていう気持ちは自分を一番動かす源だなと思って。綺麗事だけど綺麗事じゃないんですよ。自分がただただいい曲を作って歌っても、誰かに聴いてもらわないと、誰かが評価してくれないと、誰かが喜んでくれないと出す意味ってないんです。歌う意味ってないんですよ。だから例えば家族だったり、ファンのみんなだったり、スタッフのみんなだったり"あの人のために頑張るんだ"っていうのが一番突き動かす原動力だと思うんです。だから綺麗事とかみんな言うけど、僕はもうあの人のためにやるんだって言い切る、そういう決意の歌ですね。

-人間って自己完結だけでは続けていけないので、あの人もためでもあるし、あの人もやってるからやろうみたいな、そういう存在がすごく大事ですね。

そうですね。もうその相手がいないと、相手がいて夢っていうのが成り立つというか。そうじゃないとただただ自分の自己満な夢になっちゃうので。

-小林さんにとってのその身近な存在もちろんそうだと思うんですけど、こういう人がいるから目指せるみたいなものってあるんですか?

自分の目指している目標は、シンガー・ソングライターの秦 基博さんだったり玉置浩二さんだったりで、ギター1本でシンガー・ソングライターとしてやってる方を結構モチベーションにしてるんです。だけど、逆に本当にまったく関係ない方、例えば格闘家の方とか、それこそ「名残熱」のミュージック・ビデオで、三浦孝太さんという格闘家の方に出ていただいたんですけど、そこから格闘技を見始めてすごくカッコいいなって。

-去年末ぐらいから格闘技熱が再燃してますね。テレビ番組とかでも自然と目に入ります。

そうですよね。格闘技にかかわらずスポーツをやっている方や普段通りすがりに会う人とか、駅員さんやコンビニのアルバイトの方とか、いろんな人なりの夢があって、覚悟があって日々過ごしてて、全部が全部繋がってるなと思って。自分はステージの上ですけど、こうやって歌えてるのって、僕の曲をアレンジしてくれる方がいて、僕が食べてるものを運んでくれる人も......すごく大きな話になってきましたけど、僕が仕事に向かう電車で駅員をしてくれてる人とか、すべてが僕の活動に繋がっていると思うとすごく誇らしくなるというか。だからこそどこを歩いてもどこにいてもモチベーションを貰える。すごく大きな誰々を目指して頑張るとかじゃなくても、周りのみんなに感謝して周りのみんなに愛を与えて愛を貰って、そういう身近なモチベーションがたくさんありますね。

-このアルバムは小林さんが書きたいことを歌うってので全部が占められてるというか、別に変わったことをやってるわけじゃないんですよね。

表現したいっていうのが溢れたアルバムだと思います。

-音楽性のレンジがどうとかよりも、自分の歌詞と歌声はこうなんだっていう、そっちに全振りしてる感じ。

そうなんです。私的な話になっちゃうんですけど、僕のことをスカウトしてくれてずっと二人三脚でやってきたマネージャーさんが辞めちゃったんですよ、この前。いや、二人三脚どころかすべてを任せてたというか、"ここどう思います? じゃあここどうしたいですか?"みたいなこともすべて預けてたんですよ。だから、自分に核がなかったというか、芯がなくて。でもその方が辞めて僕がしっかりしなきゃいけないんだと、僕がみんなを引っ張っていかなきゃいけないんだっていう思いが強くなって。僕はこうするんだというか、レコーディングもそうですし、ライヴもそうですし、ここで芯が太くなったって自分の変化は感じたりしてますね。

-小林さんがセルフ・プロデュースしなきゃいけない状態に自然となった?

そうですね。もう自分の中で試練だと認識して、自分がこう歌いたい、歌いたいことはこうなんだって突き通すというか。でも近視眼的になっちゃうと自己満な音楽になっちゃうので、客観的な意見はすごく大切で。だからそこのいい塩梅を見つけながら頑張った作品でもありますね。