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INTERVIEW

Japanese

"MITSUBACHI ROCK CIRCUIT"特集

2022年10月号掲載

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Member:しゃおん(Vo) 奏(Key)

Interviewer:藤坂 綾

2021年12月27日に活動を終了したchocol8 syndromeが、Grand chocol8として今年4月22日より活動を開始し、11月16日に1st EP『天性のドロドロE.P.』をリリースする。わずか約4ヶ月というスパンで活動を再開した理由はただひとつ、"やりたい気持ちが強すぎて待てなかった"から。なんとも単純明快で気持ちがいい。とはいえまったくの手探りの状態から始めたというのだから、今のかたちになるまでにはいろいろと試行錯誤もしたのだろう。新たな一歩を踏み出したちょこはち(Grand chocol8)のそんな再始動までの経緯について、その流れから完成した新しい作品について、そして今年開催3回目となる"MITSUBACHI ROCK CIRCUIT"について、しゃおんと奏に話してもらった。

-昨年12月にchocol8 syndromeの活動を終了して、今年4月からGrand chocol8として活動を始められていますが、まずはその経緯を教えてもらえますか?

奏:chocol8 syndromeとして活動していた6年半は、ライヴを楽しむバンド・スタイルだったので、17都道府県を回ったり、ワンマン・ライヴをやったりという活動がメインだったのですが、コロナ禍でそんな活動が難しい状況になってしまったのと同時に、当時作曲を担当していたケンコモブチ(Key)ってちょっと変な人がいたのですが(笑)、その人が家庭の事情でバンドを終了したいということになったんです。なのでいったん去年の12月で終了することを決めて、そこからサポート・メンバーだったベースのノモトクンがすべての作曲を担当するようになって、曲のスタイルが変わればまったく別モノのバンドになるだろうし、コロナ禍に対応するという意味で、ライヴハウスに来ない人たちも楽しめるような音楽を追求していこうと、新しくGrand chocol8として活動を始めました。

-かなり短いスパンで動き始めましたけど、それだけやりたい気持ちが強かったんでしょうか。

しゃおん:やりたい気持ちが強すぎて待てなかったです。これまでいろんなバンドの活動休止を見てきて、消えてしまうのは一瞬だけど、思い出してもらうことや立て直すことはかなり時間がかかるなと思って。特に今のバンド・シーンは目まぐるしいじゃないですか。だから新しい姿を早く見せたい気持ちが強くて。12月いっぱいはchocol8 syndromeのためだけに動いてたんで、年を跨いだそのときから"よし、新しいバンドだ"って気持ちを切り替えてやり始めました。

-すぐに気持ちは切り替えられましたか?

しゃおん:はい。ただ、何もかもがまっさらな状態で、これから何をしていくかとか、バンド名もそうだし、すべてまっさらな状態から決めていく作業だったので、かなり手探りな状況ではありましたね。

-そういうなかで、どんなバンドにしていこうと?

しゃおん:今までのちょこはちは、曲を作るときもライヴでどう盛り上がるかとか、ライヴでどう遊ぶかとか、すべての中心にライヴがあったんですよ。当時のメンバーのケンコモブチも、時には芸人みたいなことをしてたし。

奏:サイコロ振ったり、ハリセンで叩いたり。

しゃおん:コロナ禍前だったからみんなに歌わせるとかもしたしね。そういう意味でいうと茶番は一切なくなったし(笑)、音楽性で言ったら旧ちょこはちは演歌、バラード、ロック、ポップというようにサウンドもかなり広かったんですけど、その世界観をきゅっと洗練して"これが新しいちょこはちです"ってしっかりと自信を持って示しているので、そこは大きく変わったというか、もうまったくの別モノになったと思います。

-そこまで変えることに不安はなかったですか?

奏:僕はめちゃくちゃありました。僕はバンドの中でどちらかというとマーケティング担当的なポジションなんですよ。このバンドをどう広げていこうとか、そんなことを考える役割。だから、実際にどんな音楽ができるかわからない状況で、またバンドを広げていかなくちゃいけないというのはかなりの不安で。前は、ちょこはちと言えばこれだ! みたいなものがある程度あったけど、活動のスタイルが変われば離れていく人もいるだろうし、そうなったらまた好きになってくれる人たちはいるのかなっていう不安もあって、それは今でもありますね。

しゃおん:私はヴォーカルやアートワークといった表舞台に立って何かをする立場で、ちょこはちがどうやったら広がっていくかとかは奏を信頼して身を預けてるので、不安はないですね。新しく始めることになったとき作曲家のノモトクンと話し合って、私の声のどこがいいとか、どの部分がよく響くとか、そういう声やステージングを見つめ直しながら曲を作っていったんです。今は自分の得意なもの、光ってるところを選んで作品を作っているので、不安よりも楽しみのほうが大きいかな。

-今は、より自分のやりたいことや自分らしさみたいなものが出せてると。

しゃおん:はい。私色が強くなったと思います。今まではケンコモブチというクセの強い人がいて、その個性をつぶさないように自分はちょっと引いたりしてたんですけど、今は歌と私がどーんとあるので、私色が強くなったと感じます。

-奏さんがドラムからキーボードに変わったのは?

しゃおん:メンバーが3人になってその3人がベース、ドラム、ヴォーカルだとサウンドを彩るキーボードやギターがいないじゃないですか。それがすべて同期っていうのはちょっとなっていうのもあったし、奏はもともとピアニストなんですよ。これはちょっと失礼なんですけど、私はドラムを叩いてる姿よりピアノを弾いてる姿のほうが好きだったから、この際ピアノになっちゃえばいいじゃん! って(笑)。で、なりました。

-あははは(笑)。奏さんはそれで納得いきましたか。

奏:そういう流れもあったし、そもそも今回の『天性のドロドロE.P.』もドラムの入ったバンド・サウンドではないし、実を言うと最初はドラムが必要かどうかわからなかったんですよ。

-というのは?

奏:これからどういうかたちでやっていこうかって話し合いになったとき、キーボードとベースとマニピュレーターとヴォーカルがいればライヴは成り立つわけだから、バンドじゃなくてもいいんじゃないかってことになって。だから自分はキーボードで進めていったんですけど、ライヴはやっぱりドラムがあったほうがいいんじゃないかって実際に数回やって感じたので、今はライヴはサポートでドラムの方に入ってもらってやってます。

-なかなか思い切った選択ですよね。

しゃおん:思い切りましたね。

奏:今まで通りドラムだったら、たぶん今までのまま惰性で同じように進んでしまったかもしれないけど、新しいことに挑戦して勉強して、これからも楽しくやっていきたいという気持ちがあるので、結果良かったんじゃないかなって。バンド名もこれまでよりも"堂々と"とか"壮大に"とか"大きく"とか、漠然とだけどそういうイメージがあって、いろいろ出てきたものの中で"Gland"っていう言葉が一番しっくりきたので、Grand chocol8にしました。

-"chocol8"、ちょこはちは変えずに入れようと。

しゃおん:それは最初から決まってました。今はYouTubeとかTikTokも頑張ってるんですけど、ちょこはちのほうが馴染みがあるし。いろんなことが変わるけど、メンバーとか変わらないこともあるので、"chocol8"を入れることは決めてました。

奏:4月から何度かライヴを重ねてきて、ある程度Grand chocol8ってバンドがどういう方向性で進めばいいかも見えてきたし、1作目となる『天性のドロドロE.P.』も今までではありえない作品になって、今はこれを世に出すのが楽しみというところですね。

-『天性のドロドロE.P.』、これはほんとに反応が楽しみだと思います。まず、タイトルが天才だと思いました。

しゃおん:これはまさにタイトルから入ってるんですよ。年明けに先輩のワンマン・ライヴを観に行って、そこで未来への希望とかを話されていたんですけど、私は年が終わるまで終わりに向かっていたので、未来の話が全然できなかったんです。chocol8 syndromeをどう終わらせることが最高なんだろうって、それだけをずっと考えてたので。だからそのライヴを観たときに、やっとこれから未来を考えていけるなと思ったんですよ。でも、その未来を思って、希望だけじゃないよなって、そういうことを思って浮かんだタイトルなんです。努力とか才能って美しいもののように結構されてるけど、果たしてそうなのかなとか、そういうところにフォーカスを当てて、自分の気持ちを吐き出してみようと思って。

奏:今までのスタイルだと、テーマを最初に決めて、そこからストーリーや主人公を決めて、じゃあこういうことを言おう、みたいなことを僕が決めて曲も歌詞も作ってもらってたんです。でもこの曲に関してはテーマがなくて、しゃおんの中から滲み出てきたものからスタートしてるので、そういう意味でもすごく新しいと思います。

しゃおん:今までの歌詞は、いろんな人が持ち寄ったものの中に、自分の個性をちょっとだけブレンドしていくみたいな作り方だったし、話し合いを行わずに書くことはなかったんですけど、これは先輩のライヴを観たあとに、マクドナルドで一気に書き上げました。

-内容的にも、しゃおんさんのリアルな気持ちというところでも共感する人が多いんじゃないかと思います。

しゃおん:最後は絶対ポジティヴに持っていく曲が多いんですけど、これはそういう希望はどこにもなくて、否定も肯定もしてないというか、適当にやれ~みたいな。頑張んないとダメだとか、ゴロゴロしてたら遅れをとった気がするとか、私すぐにそう思うタイプなんです。でもそれを気にしないのもひとつの才能なのかなと思って。ノモトクンが今までのちょこはちにはなかったサウンドを持ってきてくれて、これはなんかすごいのができちゃったって、自分でもすごく手応えを感じてますね。

-「宵の星」は懐かしい感じで、歌詞にも出てきますけど青春って感じがしました。

しゃおん:まさしく大人になって青春を振り返ったときの、キュッてする感じを書いたんで、伝わって嬉しいです。これは先にノモトクンから曲が送られてきたときに懐かしさを感じて、且つわかりやすくシンプルなイメージだったので、複雑なことはやらず誰にでも当てはまる言葉で深く強く刺す感じで、ストーリー性のある曲になりましたね。

奏:僕、この曲は今やってる曲の中でメロディが一番好きで何度も何度も聴いてるし、口ずさんだりしてます。

-「郷愁」は、同じ"青春"ではありますが、どちらかというと今から未来に向かってる印象を受けました。

しゃおん:まさにこれは現在進行形の青春ですね。今を走るみたいな感じで書きました。

奏:この曲はまだライヴでやったことがないんですけど、お客さんからどういう反応があるのかがまだ見えてなくて......

しゃおん:じゃあノーコメントで。

奏:そうですね(笑)。

-奏さんはやっぱりいつもプロデューサーの立ち位置で曲やバンドを見ていらっしゃる?

しゃおん:アーティスト気質じゃないんですよね。アーティストは、こういう曲をこんな想いで作ったから聴けよ! ってところがあるじゃないですか。でも奏は、どんだけ作っても売れなきゃ意味ないし、聴かれなきゃ意味ないしみたいな感じなんで。

奏:あはははは(笑)。

しゃおん:だから評価されるまでは曲のことはわかんないって(笑)。

奏:いい曲だとは思うんですけど、どんなふうに評価されるかっていうところが一番大事かなと(笑)。