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INTERVIEW

Japanese

tricot

 

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Member:中嶋 イッキュウ(Vo/Gt) キダ モティフォ(Gt/Cho) ヒロミ・ヒロヒロ(Ba/Cho) 吉田 雄介(Dr)

Interviewer:吉羽 さおり

2019年に、avex/cutting edge 内にプライベート・レーベル"8902 RECORDS"を立ち上げ、2020年1月に、メジャーでの1stアルバム『真っ黒』をリリースしたtricot。そこからわずか9ヶ月という時間で、早くも2ndアルバム『10』がリリースとなる。そして、このアルバムが最高にカラフルで、奇想天外で、且つエッジのあるtricotというバンドの魅力がふんだんに詰まった作品になっている。一筋縄でいかない、先の展開の読めない面白さと爆音や音の腕力で痛快にねじ伏せていくパワー、繊細で美的なメロウさなど、今年活動10年を迎えたバンドの作品の中でもリスナーの想像力を広げる数々は、様々な筋力を使って制作されたことが窺える。アルバムについて、また今こうしてメジャーというフィールドで活動することについて、4人に話を訊いた。

-メジャーでの1stアルバム『真っ黒』が今年1月にリリースされて、この2ndアルバム『10』は年内2作目のフル・アルバムですが、これは当初からプランとしてあったものだったんですか?

中嶋:もともとのプランとしては前作から1年後くらいの、来年の1月か2月にもう1枚と予定していたんですけど、コロナの影響もあって、ライヴとかもすべて飛んじゃったので。ファンの方に届けるとなると、もう音源かなってなったので、かなり前倒しで作ることになりました(笑)。

-ということは曲作りを始めたのは、緊急事態宣言中あたりですよね。曲の制作方法はいつもとは違った形ですか?

中嶋:そうですね。いつもはスタジオで全員集まってイチから作っていく感じだったんですけど、今回はそれぞれの家から、ひとりで弾いたフレーズや打ち込んだものをシェアして、そこに重ねていくという感じでした。

-誰かがある程度曲のたたき台のようなものを作って、そこからフレーズをつけたり、アレンジしていったりということでもなかったんですね。

中嶋:全員それぞれで、でしたね。こんなベース弾いてみたとか、歌からのものもありますし。私が入れた歌だけの素材にギターを入れてみたとか、そういうふうにどんどん重ねていって。常に何個か曲があるような状態で、その中から例えば、"ヒロミさんが作ったこれいいな"とか、そういう感じでピックアップして10曲作っていった感じでしたね。

-これまでと違った作り方は、どんな感触でしたか?

吉田:僕はすごくやりやすかったですね。打ち込み自体はそんなに得意なほうではないんですけど。スタジオで作るとなると、どうしてもアイディアを出すことと自分のドラムを叩く行為とが同時進行になるので、こうやってデモがトラック別でくると、曲を俯瞰して見ることができるというか。アレンジのジャンル感とか、曲をどういうふうに持っていこうかというのとかが冷静に見られるんですよね。アルバム全体を通して良かったなと思う点はそこでしたね。もちろん叩いたほうが、スピード感としては全然早いんですけど。結果的に全体のバランス感は、前よりも取れたかな。

-キダさんとヒロミさんは、この制作方法はどう感じましたか。

キダ:セッションでやると、自分が適当に弾いたフレーズに対してその場で、誰かがそれに合わせたフレーズを弾いてくれて、さらに、それにインスピレーションを受けて違う展開ができたりするのがいいところなんですけど。逆に、その場で"うーん"と悩んでしまう時間があったりもするんです。リモートでやると、セッションのように直で他の人からインスピレーションを得ることはあまりないんですけど、そのぶんひとりで十分に考える時間があるというか。最終的にスタジオで、みんなで合わせてアレンジを進めていくんですけど、その前段階の準備がちゃんとできるという感じで。そういう作り方は、それはそれで良かったかなと思います。

ヒロミ:デモを何個か作って並べて聴けることで、これはこんなふうなものでも面白いかなっていうのが見えやすい部分はありましたね。こんな曲はまたやってみてもいいんじゃないかっていうのが見えたのは良かったなと思います。

-アルバムのリリースに先駆けて、まず7月に配信スタートしたのがアルバムの1曲目を飾る「おまえ」ですね。これをアルバムからの曲として第1弾として選んだのは、何が大きかったのですか?

中嶋:単純に一番初めに着手していたのもあるんですけど、これはみんなが自粛期間に入る前からタネとしてはあったものだったんです。もともと次のアルバムは1年後にとは言っていたんですけど、ライヴとかもしまくる予定だったので(笑)、今からちょこちょこ作っていこうという話はしていたなかで、「おまえ」と「幽霊船」はすでにあった曲だったんですよ。その中で「おまえ」をアレンジしようかという感じで進めていっているときに、配信という形でしたけど、ライヴができることになったんです。そこで、まだ制作途中だったんですけど、新曲があったらかっこいいかなと思って。まだできてない「おまえ」を無理矢理配信ライヴで演奏したんです。そこで、ファンの方にもうっすら聴いていただいていたので、まずはこれをちゃんと曲にして、最初の配信の曲にしようという感じでした。

-めちゃくちゃ勢いのあるアンサンブルで、ドラムのビートもスケール感があって迫力のある1曲ですよね。

中嶋:デモの段階ではこういう勢いはなかったんですけど、会わない間にみんなの鬱憤が溜まっていたみたいで、"早くデカい音出したい!"、"かき鳴らしたい!"みたいなものがそのまま詰まっちゃったアレンジになりました。

キダ:ギターもガチャガチャしたのを弾きたくなってたみたいで。

中嶋:本当にテンポも全然違ったんです。ドラムもあんなにしんどい感じではなかったし。

吉田:そうそう。

-家いにいなきゃならないし、ライヴもできないとなると、その欲求が曲に。

中嶋:倍、力が入ってしまいますね。

-まず第1弾として、あのまだなかなかライヴにも行けない時期に、バンドの馬力をリアルに感じる曲がきたのは、ファンの方は嬉しかったと思うんですよね。

中嶋:そうですね。ファンの方はまだまだ生のライヴで音を聴けなかったので、少しでもライヴ感じゃないですけど、"バーン!"と勢いある曲がきてくれたほうがいいだろうというか。私たちがそこで出した鬱憤って、ファンの方もきっと溜まっているものだと思うので、そこで共鳴できていたらいいなと。

-以前に書かれた曲ということですが、歌詞も今の世の中にもシンクロするような感覚ですね。

中嶋:歌詞自体はコロナ禍になる前、デモ段階でも入っていたので、大きくは変わっていないんですけど。最後のアレンジで少し増やした部分、大サビみたいなところはより伝わりやすい言葉を入れました。今のことを歌っているわけではなくても、何か繋がるものがあったらいいなと思って言葉選びはしましたね。そこだけちょっと意識しています。

-"あたしはあたしを休めない"、"悲しみも痛みも寂しさも悔しさも/歌うしかないのさ"という部分ですね。この曲でアルバムが始まって、この爆裂な勢いになっていくのかと思いきや、すごく変化に富んだ面白い曲が並んでいく。とてもカラフルな作品ですね。ファンキーな雰囲気の「WARP」なども、それだけでは終わらないtricotの変化球が効いています。

中嶋:「WARP」は、始めに私がこんな曲を作りたいというのがあって、それをみんなにLINEでポンと投げたときに、ヒロミさんがそれを意識してベースを送ってくれて。それにキダさんがギターを乗せてくれたのかな? で、歌を乗せて。たぶんドラムはアレンジまで乗ってなかったかな。

吉田:うん。

中嶋:そこからアレンジをする段階では、わりと他の曲も出揃っていた時期で。次にどんな曲をアルバムに入れていこうかという話になったとき、最初は、「おちゃんせんすぅす」(2013年リリースの1stアルバム『THE』収録曲)みたいな立ち位置の曲があったらいいなって言っていたんです。それでちょっとテンポも寄せたりしたんですけど。結局は歌が、あそこまでふざけられなくて(笑)。あそこまで面白くできなくて、しっかり歌っちゃったんですけど、キャッチーなフレーズとかは意識して、ライヴができるようになったときにまたみんなで楽しめる曲になればというのは、歌の面で意識しました。