Japanese
tricot
Member:中嶋 イッキュウ(Vo/Gt) キダ モティフォ(Gt/Cho) ヒロミ・ヒロヒロ(Ba/Cho) 吉田 雄介(Dr)
Interviewer:吉羽 さおり
バンドとして固まってきた。メジャーに行くことによってできることの選択肢が増えるし、レーベルが自分たちのスタイルを理解して力を貸してくれるなと感じた
-この時期に、新しいものを取り入れようとか、いろんなものを吸収したりもしていたんですか?
キダ:吸収はあまりしてなかったんです。気分が沈んでいたっていうわけではないんですけど、あまり新しいものを自分が受けつけていなかったというか。何もいいと思えなかったような時期でもあって。気分が落ちていたとか、病んでいたとかともまた違うんですけどね。あまり外に目を向けていなかったというか、自分の中の狭ーい空間にいたんですけど、そのなかから出てきたようなもので。
-そのひとりのところから、うまくシフトしていけた感じはありましたか?
キダ:スッとシフトしていけたら良かったんですけど、逆に悩まされたりもしましたね(笑)。どんな曲を作ればいいんやろうとか、めちゃくちゃ考えました。
-そうですよね、曲作り自体も、それぞれが自由な題で宿題を出されているような感じでもありますしね。
中嶋:そうですね。とりあえず思いついたままに送っていってみようという感じだったので。
-それぞれデモの集まりは良かったですか。
中嶋:最初はポンポンとみんな送ってきてた感じでしたね。ある程度出揃ったら歩みは遅くなりましたけど。そこからはどちらかというと、もう出ているものに対してのアレンジという段階になっていったので。でも、みんな同じくらい出してきて、全部でたぶん20~30個くらいはあったのかな?
-そして、MVにもなっている「悪戯」は、このアルバムの中ではストレートなイメージが強いです。
中嶋:たしかに。従来のっていう感じの(笑)。フレーズもわりとtricotらしさがありますね。これを作るに当たってはもともと、イラストレーターのまつむらあさみさんとのコラボが決まっていたんです。アルバムのリリース時期がハロウィンに近かったので、ハロウィンのキャラクターを描いてもらうみたいな感じで、コラボすることが決まっていたので、この曲だけ先にテーマがあったんですよね。あとは、いろんなところで一番かけてもらう曲になるのかなと思ったので、キャッチーさや、tricotらしさも他の曲よりも意識しました。
-そうだったんですね。他の曲では、そのtricotらしさというのは取っ払っていた感じですか?
中嶋:どちらかというと今までにないとか、そういうことばかり自分は求めていましたね。"次のtricot"というか。
-それはメジャーでの1stアルバムを踏まえてというのもある?
中嶋:メジャーでの1stアルバムは名刺代わりというか、メジャーに行ってもこういう感じですというのを、いろんな角度で示せたらと思っていたんですけど、2ndアルバムは自分たちがもっと自由であっていいと思ったので、そのへんは意識しました。作り始める前から、自分のフレーズを提出する段階から、意識してましたね。
-改めてお聞きしたいのですが、バンドを長くやってきてここでメジャー・デビューというのは、なぜこのタイミングだったんですか?
中嶋:メジャーについては、最初のアルバムを出した2013年くらいから、ふんわりと行く/行かないという話を定期的に考えていたんです。バンドを始めてわりとすぐくらいから、メジャーの方からお話をいただいていたし、叶えるタイミングは何回もあったんですけど、その頃は、自分たちが未熟というか、tricotが完成してない感じだったので。ドラムがいなかったことも一番大きかったんですけどね。ドラムを募集して吉田さんが入ってくれて、その前のサポートの時代から一緒に47都道府県ツアー("tricot VS 47")もしたよな?
吉田:うん。
中嶋:サポート時代にアルバム『3』(2017年リリース)も一緒に一度作っているし、加入してすぐにヨーロッパ、アメリカ、アジアと海外もひと通り回って。バンドとして、4人でtricotだというものに自信が持てたので、今やったらメジャーの力を借りて、もっと広げてもらってもいい準備が整ったかなと思いました。それまでの段階は、何か欠けているというものを補ってるハードな感じだったんですけど、そうじゃなくて、ちょっとどっしりとできたというか。
-インディーズでも、自分たちで海外ツアーなどもしていたから、あえてメジャーでなくてもいいのかなというか、メジャーでやるという思考ではないのかなとも思っていたんです。
中嶋:周りからはそういうふうに言っていただいたり、そうしたいのかと思われていたりしたのは大きかったんですけど、もちろん海外にも行けるものなら行きたいし、でも日本での活動を一番大事にしたうえで海外に行きたかったので。日本のマーケティングとかにおいては、まだまだ自分たちだけでは手が及んでいないというか、手が足りないところがあったので、ぜひお力を貸してくださいという感じだったんです(笑)。
キダ:4人がバンドとしてちゃんと固まってきた感じはあったので、今この状態でもっと広めてほしいというか。メジャーに行くことによってできることの選択肢が増えるし。これまでやりたくてもやれなかったこととかもあったんです。avexと話したときに、ちゃんと自分たちのスタイルを理解して力を貸してくれるなと感じたので、じゃあお任せしますという感じでしたね。
-この2枚目のアルバムもまったく妥協がないのはもちろん、とことん自由に突き抜けてますしね。
中嶋:avexのおかげですね(笑)。自由に何も言われずに。前回は、"ギター・ソロ一発どう?"って言われたんですけど、オーダーみたいなものはそれだけだったんです。
吉田:1曲くらいギター・ソロがあってもいいんじゃないかっていうね。
中嶋:それも強要されるわけでなく、"ギタリストなんやし、たまには弾いてみたら?"くらいの感じだったんですけど。今回は、"3人で歌ってみたら?"というご提案はありました。
-それが「サマーナイトタウン」ですね。曲調も新鮮でしたけど、3人の声がリズミカルに組み合わさることで、独特のグルーヴを生んでます。
ヒロミ:歌の振り分けはイッキュウが考えてくれたんですけど、ここまでメインとして歌うことはなかなかないので、それぞれの色を出しつつで。あえてこういう癖のある歌い方をしようとかは面白かったんですね。曲だけ聴くと、渋めというか、かっこいい曲なんですけど、3人が歌うことによってすごく開けた感じになったので、それぞれの色や声質とかが相まってそうなったのかなとは思います。
-"やってみたら?"というひと言で、新しさも出ましたね。
吉田:(レーベルも)もうちょっと言ってもいいのにね(笑)。
中嶋:うん、10くらいいってもいいのに。
ヒロミ:毎回1しか言わないんですよ(笑)。
中嶋:と言っても、やらなくても全然怒られないし。だから、逆に頑張らないといけないなと思いますね。ひとつしか言われないということは、自分たちの作るものにそれだけ期待されているということなので。そこが頑張れないと残念に思われちゃうなと考えているので、底力を出しながら頑張ってます。
-またこのアルバム『10』で、一気にtricot像が広がっちゃいましたね(笑)。
中嶋:時間が死ぬほどありましたしね。時間死ぬほどあったのに、今まで通りのものを出しても、"へ~"って感じになっちゃうので(笑)。へ~、そうなんやって思われないような作品になったかなと思います。
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