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INTERVIEW

Japanese

Muvidat

2020年06月号掲載

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Member:Uqui(Vo) MAH(Dr)

Interviewer:山本 祥子

アルバム『Muvidat』に対する反響、そして、ツアーで得た手応えと熱量と感謝の気持ちをエネルギーに、前作からわずか10ヶ月のインターバルで2ndミニ・アルバム『Fog Lights』が到着した。当然、収録された新曲は鮮やかに6曲6様ながら、ライヴ映え必至。REI MASTROGIOVANNIによる"BISTRO FUNK Remix"曲も含めて、心躍らせ、身体を揺さぶる名曲揃い。残念ながら本作を引っ提げての全国ツアーの内5月公演は中止が発表されたものの、予定通りアルバムを届けられることに安堵し、ちょっとでも時間つぶしをプレゼントできるのは幸せだと笑うふたりは、ほんとに私たちを灯す"Fog Lights"だなと思う。

-ミニ・アルバムとはいえ、1stフル・アルバム『Muvidat』(2019年リリース)から1年空けずに、『Fog Lights』が到着。2020年も濃密な1年になりそうです。

Uqui:前作(『Muvidat』)を作ったときに形にしきれなかった曲がいくつかあったから、それを配信するか!? みたいな話をしていたんだけど、ツアー("Muvidat FALL TOUR 2019")を回って、曲を増やしたい気持ちが膨らんで、そしたらやっぱりみんなに聴いてもらいたい=作品にしたくなっちゃって。せっかくなら"Hallelujah Circus Acoustic Show"で発表したいねって、詳細を決める前にミニ・アルバムって言っちゃったので(笑)、それに追いつこうと一気にスピードを上げたっていう。

-そのパターン結構ありますよね。ライヴの日程と会場をまず決めてから動き出すとか。

MAH:Muvidatのスタートがまさにそれだから、合ってるのかもね。俺らは基本何もしなくていいよって言われたらマジでなんもしないもん。

-前回は"1枚目を作ること自体久しぶりだから、ただただワクワクを詰め込んだ"って話していたけれども、2作目となると制作に向かう意識は違うものですか?

MAH:んー、ワクワクはもちろんあるんだけど、それ以上に感謝の気持ちが強くって。"蔵前レコーズ"と出会って自分たちの考えや表現をまた外に出せる機会を貰えたので、そこは全力で返したいと思うし。そして、改めて俺らはものづくりしかできないんだなって。いや、"わかってるよ、そんなの"って顔してるけどさ。

-フフフフ(笑)。だって20年間誠実に、不器用に、音楽を作り続けてきたじゃない。

MAH:そうなんだけど、会社の運営って恐ろしく面倒臭くて。今こうして制作に情熱を注げるのはレーベルのみなさんのおかげだし。そして、俺らの新しい音楽を待っていてくれる人への感謝ももちろんあるよね。

-『Fog Lights』、本当に素晴らしいアルバムでした。今日もヘッドフォンで聴きながら来たけど、オープニングのタイトル曲「Fog Lights」からもう涙が溢れてきてさ。

MAH:そう。お散歩に合うんですよ。動く景色に寄り添うというかね。もしくは目を瞑って聴いてもらうのもいいと思う。

Uqui:最初にイントロを聴いたときに暗闇を灯す明かりが浮かんで。最初の歌詞は"Fog Lights"って言葉が出てくる前の、全然別の物語だったんだけど、考えすぎてかなり想像力が必要なややこしい曲になっちゃって、"こういうことじゃないよなー"ってイチから書き直したの。でも、タイトルには最初の印象の"Fog Lights"を入れたくて、それしか見えなくなっちゃって結局残したという。

-まったく違和感がなかったです。イントロのサイレンみたいなギター・リフは、ライトがくるくる回っていろんなところを照らしている感じだし。

MAH:作り方として少し珍しいのが、Uquiさんに"こんな曲ができたよ"って送ったら"とってもかっこいいよ。だけど、曲始まりにもうひと声ないと"っていうオファーが戻ってきて。そこから俺の"めいそう"が始まり、あぐらをかき、目を瞑り。

-あっ、迷走ではなく、瞑想?

MAH:そうそう。俺、楽器を持ってジャカジャカやっても、出てこないのよ。だから、曲作るときはメディテーションするの。この曲はライヴでどういうふうに始まったら......っていうのをどんどん広げていったら、このイントロがバーンと降りてきて。で、全員ではないかもしれないけど、曲の作り方ってたいていサビがあって、そこにオブリを入れて、"このオブリをイントロに抜き出してみよう"ってやるんだ。でも、この曲は"イントロとして出てきたものをサビのオブリとしてぶち込んでみたらどうだろう?"みたいに閃いて、"やっぱ合う!"ってなった。だから、いつもとは逆の発想というか。しかも、Uquiさんやさっちゃん(ライター)が言ってたように、俺がメディテーションで見えたものもサイレンであり、暗闇の中でチカチカする光で。Uquiさんにはそういう話をせずに渡したんだけど、"Fog Lights"っていうワードが返ってきたから、"あぁ、伝わってるな"と思ったよね。

Uqui:"Fog Lights"って意味がふたつあるじゃん。Muvidatは私たちふたりでやってるし、みんなのモヤモヤや、ザワザワしているものを、ふたりで照らして霧を晴らすことができたらいいなっていう気持ちも込めてる。相変わらず短いけど、ちゃんと物語があるから、すごく面白い曲だと思う。

-曲の作りがドラマチックだよね。イントロから歌が始まるとふたつのライトがキュッとひとつにまとまって。サビ前に音が削られて、そこから一気に広がる世界観とか、聴いている間ドキドキさせられっぱなしだった。

Uqui:嬉しいなぁ。SHAKALABBITSのアルバム『Her』(2017年リリース)の「Longyearbyen」の続きじゃないけど、あの雰囲気をやりたかったっていうのもちょっとあって。

MAH:サビ前の音を減らすっていうテクニックは、昔FRONTIER BACKYARDの田上さん(TGMX/Vo/Syn)と飲んだときに教わったのね。"サビ前に音をとにかく減らして"っていう入れ知恵をしてもらい、いざやってみたらBメロじゃなくて、なぜかサビで結構減らしてしまった(笑)。でも、まぁこのアレンジは他でも試してみようかなと思ってて。

-そもそもMuvidatのアレンジってどう進めているの? 参加してくれてるミュージシャンはどの時点で加わってくるんだろう?

Uqui:最初にふたりでだいたいの道を作りつつ、みんなに提示しつつ、どういうものが返ってくるのかっていう楽しみが毎回あるよね。

MAH:渡す音はあくまで参考ですって感じで。しかも、ベースに関してはノー・アイディア。入れない状態で投げちゃう。

Uqui:そしたらREI(REI MASTROGIOVANNI)や大樹(音の旅crew)がベース・ラインを乗せて返してくれて、そこにまた私たちが思っていることを投げてってキャッチボールしながら、ブラッシュアップしながら、形にしていく感じ。

-勝手知ったるREIさんはもちろん、大樹さんもツアーを一緒に回ったメンバーだから、共有できる想いがいっぱいあるんですね。

MAH:本当にそう。だから、"こういうんじゃないんだよなぁ"みたいな会話をしたことがない。一発目から"そうそう、そういうやつ!"って。今ってSNSでいろんな人が"僕の音に重ねて"みたいなことをやってるでしょ? その感覚に似てるかもしれないね。SNSだと行きっぱなしだけど、俺らの音源は戻ってくる。しかも、これって実は人間的にもミュージシャン的にも、レベルの高い相手じゃないと崩壊するやり方だからね。1往復目でぐちゃぐちゃになったって全然おかしくないんだから。

-全員がMuvidatを自分ごととして、Muvidatの音楽を本気で楽しんで初めて成立する。

Uqui:そうそうそう。それはとても幸せなことだと思う。

MAH:ツアー中になおぴー(佐々木直也/ex-空想委員会)がね、"僕はほんっとにMuvidatに可能性を感じてるんで"みたいなことをサラッと言ってくれて。

Uqui:みんな年下だけど、そんなのは関係なく、Muvidatで演奏する仲間として"どうしたらいいかな?"、"こういうのもできるよね?"っていう会話をさ、ツアーを回ってるときだったり、飲んでいるときだったり、一緒に過ごすなかでビュンビュン交わせて。ひと言ひと言に心がこもっていていつも感動させられちゃうんだよね。

MAH:ひとり残らず、全員自分と戦ってるじゃん。だから、尊敬できるし、不遜な態度は決して取れないって思う。ほんとにいいチームですよ。