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INTERVIEW

Japanese

レルエ

2020年03月号掲載

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Member:櫻井 健太郎(Vo/Gt) エンドウリョウ(Ba) saya(Vn/Syn/Cho)

Interviewer:TAISHI IWAMI

00年代後半~10年代前半に、インディー・ロックやEDMなどからの洗礼を受け、血肉となったそれらのエネルギーが、現在進行のポップスやドメスティックな音楽から受けた影響や、クラシック・ルーツのヴァイオリンと化学反応を起こす。そのサウンドは時代を超越した概念なのか、トレンドの一歩先なのか。いずれにせよ、既存の成功例に寄せることではなく、大衆性を塗り替えることや、新たな価値観を提案することが"ポップ"なのだとすれば、レルエのニューEP『Eureka』は、その可能性に満ちた重要作だと言えよう。3人は時代をどう見つめ、自分たちがどうあるべきだと考えているのか。そのメンタリティから制作にまつわるこだわりなどを、読むことでもじっくり味わってもらいたい。


様々なスタイルやジャンルのオリジナルな融合。レルエ流サウンドメイキングの秘密に迫る


-インディーからメジャーにレーベルを移籍してから、変わったことはありますか?

エンドウ:まだ走り出したばかりなので、見えていない部分も多いんですけど、やっぱり僕らの音楽が届く層は、広がっているように感じます。

saya:メジャーに移ったことで、意識や音楽的な何かが大きく変わったということはないんですけど、アニメのタイアップとか、インディーズにいるとなかなかない話をいただいたりして、新たな楽しみやそれに伴う責任感の芽生えはありますね。

-"Eureka"というタイトルは、レルエとリスナーの関係性においての意味が大きいとのことですが、バンドとしての新たな目覚めも明らかに実感していると感じるほどに、サウンド面での進化に驚きました。

櫻井:レルエにできることとは、レルエらしさとはなんなのか。その基盤が固まったのが、昨年9月にリリースしたフル・アルバム『Alice』でした。そのイメージをより発展させたのが今作なんです。なので、おっしゃるような感触はたしかに持っています。

-その"レルエらしさ"とは、なんですか?

櫻井:僕はEDMシーンがすごく好きなんですけど、そういうデジタルなサウンドを採り入れながらも、バンドとしてのアナログ感、アコースティック感も大切にすること。そして多彩な音の中に、しっかりと響くポップなメロディがあることですね。

-EDMや世界照準のインディー、バンドを中心に国内アーティストのみで構成されるドメスティックなフェス・シーン、そしてお茶の間に向かういわゆるJ-POP。大きく言うとこの3つを股に掛けられることがレルエの強みだったと思うんですけど、近年その構図自体が、簡単に割り切れるものではなくなっています。そういった時代の流れについては、どう捉えていますか?

櫻井:"これはちょっと古いからやらない"とか、そういう選択をすることはないですね。自分が好きで信念を持ってやってることを聴いてほしい。そこが念頭にある指針を、どれだけ発展させられるかに重きを置いています。

-EDMを躊躇なく切り取っていることは、まさにおっしゃることの象徴だと思います。では、EDMの取ってつけたような展開をド派手に演出するテンプレート、そして長すぎたブーム、レルエにとってあのシーンはなんだったんでしょう。さらにEDMが興味深いのは、ブームが去ってもあまりネガティヴに風化した印象がなくて、むしろいい部分が抽出されて残っている感じがするんです。

saya:レルエの活動を始めた時点でそこにあった音。ある種のスタンダードのようなものですね。

櫻井:帰れる場所、故郷みたいな。だからアッパーなんですけど妙に落ち着くんです。

saya:たしかに、爆発的なブームは去ってるんですけど、"終わっちゃった"感覚はないですよね。そのうえで倣うか外すか、みたいな。

櫻井:日本では、大きな規模感で流行りはしましたけど、局地的なブームでもあったと思うんで、まったく触れてこなかった人も多いから、まだまだ新鮮な感覚で届けられる余地もあると思っています。そんなEDMに限らず、海外のインディーも、日本のロックも好きだし、それらすべてが自分の土台になっています。そのうえで、時代の変化とともに生まれる音楽をインプットし続けることも大切だと思いますし、単純に新しい音楽を聴くことも好き。全部ひっくるめて、"これが流行っているから"とか、"これが定番だから"ではなく、やりたいからやってるって、そこはハッキリと出していきたいです。

-では、"やりたいこと"とリスナーに"届ける"意識との関係性については、いかがですか?

櫻井:そこが結びついていることが、僕らにとってのポップス。ポップスをやりたいという気持ちは、ここまでいろいろと話したことの大前提としてあります。

saya:メインストリームを意識するとどれも似たり寄ったりになるから、あえて意図的に外して古い素材を入れるとか、考えることもあるんですけど、そういうことばかりに気がいくと、それはそれで楽しくはありつつ、ポップスから外れていっちゃう。そうなると本末転倒なんで、ポップスであることは崩さずに、どれだけ面白いことができるか。それがレルエであることなんだと思います。

-その"ポップス"、"ポップ"とはどういうことなのでしょう。私は、常に新たな可能性を切り開くことがそれだと思いますし、今はもはや既存の大衆性を狙いにいくフェーズではないような気がしていて。

saya:そこはまず歌ですね。メロディこそが、レルエのポップスたらしめる最も大きな存在だと思います。

櫻井:今はいろんな情報から好きなものを選べる時代。だからこそ、中途半端なことはできないなって、思います。自分たちがやりたいことをとことん突き詰めるべき。客観性よりも主観性が重要になってきているように感じていますね。言ってしまえば、客観も自分のキャパシティから出てくるという意味では主観じゃないですか。

-たしかに。

櫻井:だったらそこをいかにソリッドにしていくか。でなければ、この先は勝負できないように思います。

saya:リスナーも、ジャンルによって取捨選択している人って少なくなってきてると思うんです。どのジャンルにどういうお客さんがいて、じゃあどうやってどこを狙うか、みたいなロジックは通じなくなっているように思います。その先にある新しい感覚が、ポップスであり、それを提案することが基盤になっているんです。

櫻井:だから、これまでの常識みたいなものがあるとしたら、僕らは平気でタブーを犯してるバンドだと思いますし、それでいいんです。