Japanese
BLUE ENCOUNT
2019年11月号掲載
Member:田邊 駿一(Vo/Gt) 江口 雄也(Gt) 辻村 勇太(Ba) 高村 佳秀(Dr)
Interviewer:石角 友香
日本語だけど、海外の人も歌えるような感覚で歌いたかった。僕らにとっての洋楽もそうじゃないですか?
-『SICK(S)』(2019年6月リリースのミニ・アルバム)のインタビュー(※2019年6月号掲載)のとき、アリーナでも、ライヴやツアーをできるようなバンドになっていかなきゃというヴィジョンが出てきてましたけど、ちょっとそういう予兆を感じる曲でもありますね。
田邊:ほんとですか? ......あざす(笑)!
-コア・ファンだけが聴く曲じゃないと思うし。
江口:そうですね。それはやってても思うというか、サビに入った瞬間、アップテンポなんですけど、バラードの「はじまり」(2016年リリースの3rdシングル表題曲)をやってるような大きい感じが見えるっていうのは演奏してて思うところではあります。アリーナじゃないけど、開けた感じの世界が見える歌ではあるので。
田邊:今まで知らなかった方まで絶対に届くような曲にはなってると思います。やっぱ今回は世界中で人気のアニメ作品ではあるので、そういう意味では、譜割り自体も日本語だけどちゃんと海外の人も歌えるような感覚で歌いたくて。日本人もそうじゃないですか。洋楽って意味わかんないけど歌えるみたいなところがあるし。その逆もあっていいだろうなというのは常々思ってるので。もちろん、僕らは英詞もやりますけど、ここにきてちゃんと日本語ロックの良さみたいなものはちゃんと伝えたいなって。ブルエンは、そういう楽曲は多いんですけど、今までのものとは意外と似つかないような新しいものができてるなとは思いましたね。
-ところで"ポラリス"って大きな言葉だけど、この曲のタイトルとしては大げさに聴こえないです。
高村:僕がすごく思ったのが、田邊から歌詞が送られてきて、いろんな箇所ですんなり自分で受け入れられたことだったんです。だから今田邊が思って書いてる歌詞と自分が普段感じてることとか、マインドが、わりとシンクロし始めてるんだなって感じてて。そこがやってて気持ちいいところがありますし、やっぱりできるだけ嘘つきたくないじゃないですか? 自分が今思ってる感情をそのまま伝えられたら、一番素敵だなと思ってるので、田邊が歌ってる歌詞を聴きながら、嘘がなく、ちゃんと演奏、表現できるっていうのはすごく気持ち的に楽だし、ちゃんと気持ちを乗せられるっていうか。このタイトルも言ってしまえばすごく大きなタイトルだと思うんですよ。"希望"みたいなもんだし。そのぐらいのデカいタイトルを掲げられるっていうのは、僕は嘘がないからかなと。
-高村さん的にはどういうところに嘘のなさを感じるんですか?
高村:ここ1年ぐらい何回も自分の中で繰り返してる言葉で"負けるのは怖くない。勝つのを諦めるのが嫌だ"っていうのがあって、失敗するのはいいんだけど、挑戦するのは諦めたくないなって。その考えを定期的に自分の中で言い聞かせるというか、キーワードにしてるんで、そこがカチッとハマった感じがあります。勝てるとは思わないかもしれないけど、やれば可能性があるわけじゃないですか。そこは忘れちゃいけないなって、リンクしましたね。
-そしてカップリングの「girl」はモダン・ロックの王道的な曲ですね。
田邊:意外に今回初めてやりましたね。これは今年の頭ぐらいだったか、『SICK(S) 』の曲出しをしてるときに、よっちゃん(高村)とふたりでスタジオ入って作ってたんですけど、"こいつはもちろん主役にはなれないと思うんだ。でも憎めないやつなんだ、聴いてください"つって聴かせました(笑)。
-MCかのように(笑)。
田邊:これ、珍しく頭から最後まで全部、頭の中でできてたんですよ。これ、やりたい、と。で、ここで会議したときも同じこと言ってました。"いや、主役にはなれないですけど、ぜひなんかのタイミングでやりましょう"つって、今回タイミングがきたというか(笑)。ただメロディ感だけ、ちょっと難しかったんですよ。江口に"難しくない? このメロディ"って言われて。かなりオールドな感じになっちゃってたんですよ。
江口:めちゃくちゃ渋かった(笑)。
-80'sのアメリカン・ロックというか。
田邊:なんかオクラホマのバーで地元の50のおじさんが歌ってるぐらいの感じでした。
-カントリーまでいかないけど、そういうニュアンスのメロディではありますね。
田邊:僕の中では小学校5年生のときに初めてSheryl Crowを聴いて、『Sheryl Crow』ってアルバムだったんですけど、それがまぁいろんなことやってて。彼女の基盤にはカントリーがあって、ロックに味つけしたり、ポップスとかバラードもめちゃめちゃいいし。で、そういうアルバムの中で小学校のときから響いてたのが、こういう系の緊張感があるけど、大きく録るようなロックで、そういうのをずっとやりたかったんです。でも、いいメロディとかいいモチベーションに出会えてなかったのでできなくて。そんなときに、『SICK(S) 』を作るとなって、なんでも作れるなと思ってできたのがこの曲だったんです。
-スウィートな歌詞なんだろうなと。そういう歌詞もソングライターとしては作りたいですか?
田邊:そうですね。これはもう浮かんだときから恋愛の曲にしたいという思いがあったというか。ただ単純に悲しんでる女の子をずっと見てる男の子の歌なんですよね。彼女すごく悲しそうだよってずっと言ってるだけなんです。"でも、そういう彼女も嫌いじゃないんだよねっていうことが言えないんだよ、俺"ってずっともじもじしてる男の子の歌で。それをあんだけ渋めの感じで歌うという(笑)。意外に情景描写が難しいんですよね。じゃあ、どういうことで彼女は悩んでるの? って掘り下げ出したらきりがないので、あくまでこれは叙情的な感じで捉えてもらえれば良くて。その人の頭の中にいる主人公たちが、この曲によってパッて出てきたらいいなと思う曲です。
-すべての曲にメッセージを求められても窮屈だし。
田邊:ブルエンのカップリング曲って意外にそういうの多いですね。メッセージの塊の真裏の楽曲って、書きたいことを書いたり、毒を吐いたりっていうのはすごくあるので。やっぱりそうじゃないと楽しくないですよね。こういう真逆みたいなのは久々です。『はじまり』のときの「パラノイア」ぐらい真逆(笑)。
-逆なほうがシングルを聴く者としては楽しいですけど。
田邊:そうですね。これを聴いてくれたアニメ・ファンの人たちもいい意味で"こいつらなんなんだ?"みたいな感じで終わってもらったら一番いいかなと思ってます。
-相変わらず制作とツアーは並行してるんですよね。
田邊:今も鋭意、制作中です。ありがたいことに来年の秋ぐらいまでのいろんな予定はもう決まってますから。昨日もずっとよっちゃんとスタジオ入って新曲を作ったりしてたんですよ。でも今はすごく、これやるためにバンドやってんだからって思いしかないので。ランナーズ・ハイ真っ最中みたいな感じで、最初は"あ、しんどいかも"と思ったんですけど、今ではちょっとやそっと擦りむいたとしても痛みを感じないみたいになってますね。それもツアーと並行してるからいいっていうのもあるかもしれないです。何よりもワンマン・ツアーでこんなに本数回るっていうのは初だし、全員が俺たちを求めて来てくれてるわけですから。
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