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INTERVIEW

Japanese

岸田教団&THE明星ロケッツ

2018年08月号掲載

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Member:岸田(Ba) ichigo(Vo)

Interviewer:杉江 由紀

ここからも生き延びていけるように、頑張ってみました


-たしか、前回のシングルのときも似たようなことをおっしゃっていた記憶があります。

岸田:あぁ、前回のときはEDまでいかなくて劇中歌くらいの感覚で作ってましたね。今回は"EDだとしたら~"っていうスタンスだったんですよ。

-その考え方を根底にしたとき、曲作りにおいて大切にされたことはなんですか?

岸田:EDの場合はわりと自由が許されることが多いし、アニメによってはOP以上にOPっぽいEDもあったりするから、曲そのものは自由に作っていきました。曲を作っていくときにテーマとして考えていたのは、まだ見ぬこれから出てくるであろう若手に対する恐怖心ですね(笑)。

-恐怖心!?

岸田:いやだって、どうせこれからの時代はリズムのいい若手のバンドがわらわら出てくるのは間違いないですから。僕はその未来に対して勝手に恐怖を感じているので、あらかじめ彼らに対抗していくだけの力を僕らも養っていけるように、リズム面での強化練習になる曲を作ったんです。

ichigo:私にとっても、これは手強い練習曲でしたね。

岸田:難しいよねぇ。日本の音楽って昔から何が変わってきたかっていうと、どう考えてもリズムなんですよ。メロディの在り方も、リズムが進化してきたことで譜割りが変わってきたわけじゃないですか。そういう意味で、この「stratus rain」もリズムの取り方を変えるだけで実は簡単に別の曲に変わりますよ。

ichigo:そっかー。そうだね、たしかに! メロディ・ライン自体はあるある系だけど、聴こえ方はすごく今っぽい。

岸田:そうそう。90年代の音楽と、2010年代以降の音楽の違いは完全にリズムです。リズムのアクセントを変えるだけで、世界ががらっと変わる。この点は「シリウス」にも共通していて、リズムの作り方によって一気にモダンさを醸し出していけるんですよ。そして、今のうちからそのへんの対策をちゃんとしていかないと、気づいたときには淘汰されちゃうでしょうからね。ここからも生き延びていけるように、頑張ってみました。

-そんな、ご謙遜を。

岸田:いやいや、マジでヤバいんですって。逆に、僕らより上の世代のプロ・ミュージシャンとかで、メトロノームやクリックにきっちり合わせて演奏できない人は意外といましたからね。だけど、我々の世代はそれができない人の方が珍しい。そして、今度はより進化したリズム・センスを持った若手に我々の方が追い落とされる番なんですよ。そのうち、若手から"へー。クリックに合わせることしかできないんですか? リズムがいいって、決してそういうことじゃないと思いますけど?"とか、物知り顔で言われるようになるんだと思います。あー。怖い、怖い。

ichigo:そうならないように、今から頑張ろう!

岸田:とりあえず、次のその波さえ超えられれば僕らはもう生涯的にアガりだしね(笑)。音楽の世界の大変革は20年に1回くらいのペースのはずだから、次の時代を生き抜ければあとは後進の育成とか指導とか、そんな感じでうまく丸め込んでいけたら大丈夫だと思うんですよ。そう考えると、そのときに初めて出てくるのが精神論でしょうね。55歳を過ぎたあたりくらいから、"プロ・デビューするのに必要なのはスキルでも、テクニックでもなんでもない。何よりも強いメンタルだよ"って、若手に対して自己啓発本に書いてあるようなことをさもそれっぽく言いたいなぁ。

ichigo:えー。私たち、メンタル激弱なのに?

岸田:いける、いける。さすがに50過ぎたら、今と違ってメンタルもそれなりにドッシリしてるんじゃない? そうしたら、昔からそうであるかのように"君たちと違って、若いころの俺たちは何も持ってなかったよ。ただ、ひとつだけ周りの奴らと違った点があったとしたら、それはメンタルの強さだった"とか適当に言えばいい。

ichigo:うっざ(笑)!