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INTERVIEW

Japanese

ピロカルピン

2017年05月号掲載

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Member:松木 智恵子(Vo/Gt) 岡田 慎二郎(Gt)

Interviewer:岡本 貴之

-「小人の世界」ができたことで1曲目の「精霊の宴」のイメージができたんでしょうか? 世界観が繋がっている印象ですが。

松木:いや、この曲はもともとネタとしてあった曲で、いつかやりたいと思っていたんです。歌詞がなくて、Enyaみたいな声を重ねていくような。私は声を楽器として捉えているので、オーケストラのようなイメージで声で作れたらいいなと思っていたので、今回のアルバムでやっと入れられた感じですね。

-この曲から始まって、途中に「小人の世界」があることで、結果的にアルバムがトータルなコンセプトを感じさせるものに聴こえます。

岡田:最近はアルバムの曲順ってそんなに重視されない時代ですけど、世代的にはやっぱり1曲目から最後まで聴いて、ひとつの作品として仕上げたいという気持ちは強い方だと思うので。そういう意味では前作『a new philosophy』に関しては、そういうところは希薄だったと思うんですよね。1曲目から最後までの流れでひとつの作品になっているというところも、最初にお話した原点回帰に繋がっているのかなって思います。

-アレンジは岡田さんが主導権を握っているんですね。

岡田:そうですね、承認制で(笑)。

松木:駄目なものは一応"ちょっとこれは"って言わせてもらってます(笑)。イメージは伝えますけど、最近は長年の積み重ねでわかってもらっている部分もあって。ただREC前には全員で世界観を共有するようにはしています。

-ギターを中心としたサウンド作りというのは岡田さんの中で変わらないですか。

岡田:バンド形態をすごく意識しているので、"シンセとかを入れたら"とか言われることもあるんですけど、まったく入れたくないということではなくて、そっちがメインになるのはちょっと違うなと思っているんです。僕は90年代のUK、USバンド、グランジとかのバンドを聴いて育ったので、そういうちょっと泥臭いギター・バンドとして表現したいという気持ちがあります。

-今回は何曲かに鍵盤の音も入ってますよね?

岡田:今回はいつもよりも多少目立つように入ってますね。もう、自分たちも結構やってきたので、変えようかなっていう意識もあるんです。とはいえ、それがないと成り立たない曲にはしたくないので、前面に出すのではなく、多少効果音的に入れてますね。ただ、今でもシンセで簡単に出せる音でもできるだけギターで表現したいという気持ちは持ってます。

-岡田さんのギターは、コードを弾いているより歌メロの裏でずっとオブリガートを弾いてたりして、かといってアンビエント的な効果音でもないというのが面白いですね。

岡田:ありがとうございます。僕のバックボーン的に、THE SMITHSとかSUEDEとか90年代のUKロック・バンドの、カリスマ・ヴォーカリストがいて目立つギタリストがいるというふたつの絡みを聴いてきたので、オブリでヴォーカルに絡んでいかないと寂しくてしょうがないんですよ(笑)。それを普通にやっちゃうとヴォーカルの声とぶつかってしまってなかなかうまくいかないんですけど、松木の場合はそれを突き抜けているので。僕が好きなようにやっても成り立つというか。

松木:でも結構ぶつけてくるので(笑)、やっぱり大変な部分がありますけど、そこはエンジニアの牧野さんがうまくやってくれて、おかげでまとまりました。

岡田:牧野さんもおっしゃってたんですけど、これまでで一番バランスがいいんじゃないかなって。弾きすぎてもいないし弾かなすぎてもいない、ちょうどいいバランスに落ち着いているという。

松木:ギターの音とヴォーカルの音数がすごく多いので、そのへんの交通整理は牧野さんにお任せして安心してできたというのはありました。

岡田:牧野さん自身がバンド・サウンドに乗った歌を表現するのが上手い人なので、僕が好き勝手やってもなんとかしてくれる安心感はありましたね。僕からするともう少し出したいところもあるんですけど、たぶん僕が好き勝手やっちゃうと聴き苦しくなってしまうところもあると思うので、そこはうまくバランスを取ってくれる感じで、共同プロデュースで入ってくれているところがうまく作用している部分だと思います。

-MVにもなっている先行リード曲「グローイングローイン」(Track.7)はこのアルバムの中では際立ってキャッチーな曲ですね。

松木:アルバムができあがったのを聴いたときに、結果的にこのアルバムの世界の中では浮いてるなっていう立ち位置の曲になってしまったんですけど、最初の制作段階では前作までの、自分の中に刷り込んでしまった"どうしてもキャッチーなものじゃなくちゃいけない"みたいな意識があって(笑)。最初はアルバムの中心みたいな立ち位置で制作がスタートしたんですけど、最終的に仕上がってみたらちょっと浮いてる感じで。今までのピロカルピンの流れのなかにある曲ではあるんですけど。

岡田:メロがとてもキャッチーで立っている曲だし、アレンジ的にもピロカルピンっぽいんだけど今までやったことがないような裏が強調された新しい感じがあったので、リード曲はこれかなっていうことで進めてたんですけど、他の曲がグングン伸びてきて結果的にこの曲がリードになるのがよかったのか? みたいな感じになって(笑)。これが駄目だっていうことじゃなくて、全部の曲がいいっていう印象があったんです。

松木:"このアルバムを伝える"っていう感じの曲ではないなって。なんかシングル曲みたいな感じというか。

-あぁ、たしかにアルバムとアルバムとのリリースの間に出たシングルっぽい感じはありますね。

松木:はい、そういうイメージにはなりましたね。ただ、わりとキャッチーな曲にはなったなと思います。

岡田:年齢層もちょっと違う曲というか。頑張って若くやってます(笑)。