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INTERVIEW

Japanese

PELICAN FANCLUB

2016年06月号掲載

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Member:エンドウ アンリ(Gt/Vo) カミヤマ リョウタツ(Ba)

Interviewer:松井 恵梨菜

抽象的で文学的――PELICAN FANCLUBに対して抱いていたイメージが、良い意味で覆された。彼らが、6月8日にリリースする3rdミニ・アルバム『OK BALLADE』。セルフ・タイトルの前作をリリースしてからの10ヶ月で芽生えた純粋な思いを軸に、今作では"今"この瞬間のことを、これまで見せなかった丸裸の言葉で歌う。そしてより強固となったメンバーの関係性と各々の個性を武器に、自ら殻を破り、新たな音楽性を打ち出している。そんな驚喜がたくさん詰まった今作の全貌と、"今"の彼らを届けていきたい。

-前作『PELICAN FANCLUB』(2015年8月リリースの2ndミニ・アルバム)のリリース以降、UK.PROJECT主催イベントである"UKFC on the Road"への出演や、渋谷WWWでのワンマン・ライヴ(※2015年11月に開催された[PELICAN FANCLUB TOUR"MANIA"]のツアー・ファイナル"CINEMA")など、バンドにとって大きなステージを重ねてこられましたが、それらが今のPELICAN FANCLUBに影響を与えた部分はありますか?

カミヤマ:いろんなライヴがあったんですけど、その中で、もっとお客さんの近くにいたいとか、寄り添いたいっていう気持ちが芽生えてきて。それが、最近のライヴや曲作りに表れています。

エンドウ:以前は、小さなステージと大きなステージを心のどこかで差別化してしまっていたんですよね。でも、実際に大きなステージに立ってみると、小さなステージと変わらないことに気づいて、自分たちからもっとアプローチをしていきたいなって。会場の大小に関係なく、人と人で向き合いたいと思いました。

-寄り添いたいという思いから、何か具体的に変えたことはありますか?

エンドウ:例えばライヴのMCですかね。以前だったらMCをしないのがスタンダードだったし、したとしても"言いたいことはすべて曲で言ってるから"で終わってたんです。でも最近は、"お客さんにもっと自分たちのことを知ってもらいたい"っていう思いがあるので、"この曲にはこういう思いを込めてる"、"最近はこういうことを考えてステージに立ってる"ということを話すようになりました。

カミヤマ:自分をさらけ出すようになりましたね。楽曲制作にもそれが出てきていて、音作りや歌詞は、前作と比べると色が濃くなったと思います。

-その表れなのか、今作はストレートなメッセージ性のある曲が多かったのが意外でした。今までの曲の歌詞は、"抽象的"、"文学的"、"シニカル"といったイメージが強かったので。特にTrack.1「記憶について」では、"待つ人がいるから会いたくなる"など、誰もが共感するような歌詞が綴られていますよね。

エンドウ:前作の楽曲もそうなんですけど、歌詞のもとの文章はどの曲も「記憶について」のようなストレートな状態なんですね。それを言い換えたり、ぼやかしたりっていう施しをしているんです。でも今回は、"寄り添いたい"っていう共通認識があったので、メンバーに歌詞を見せたときに、"抽象的でわかりにくい"っていう意見があって。僕はスーツを着ている感覚というか、女性でいうところの化粧をしているような感覚なのかな、そんな感覚で歌詞を書いているつもりだったんですけど、メンバーはもっとわかりやすい方がいいって言ってくれて。だからと言って裸の状態の詞を見せるのは恥ずかしいし、葛藤もいろいろあったんですけど、その裸の状態で1回メンバーに見せてみたんです。そしたらそれが一番いいって言ってくれたんで、これでいこうってなりました。今までどおり書いた曲もありますけどね。

-作品全体のテーマは"今"とのことですが、なぜでしょうか?

エンドウ:さっき、ライヴを通して"寄り添いたいと思うようになった"という話をしましたけど、寄り添うためにはどうしたらいいんだろうと思って。そんなとき、"時間の経過"というものに対して恐怖心を覚えたんです。僕はその時間の経過に対する恐怖が、"今"をもっと"今"として強く実感したら自然となくなっていったんですね。というのも、時間の経過って、過去を思い返して実感するものじゃないですか。だから、"今"っていうものをもっとちゃんと意識すれば......過去も未来もどうでもよくなって、今をもっと感じていたいっていう気持ちが強くなるんじゃないかと思って。それで、人はみんな"時間"を、"今"を持っているから、みんなが持っているものなら寄り添えそうだし、それについて歌いたいなと思ったんです。

-"今"というテーマは歌詞にメッセージを込めるだけではなく、音にもバンドの今を詰め込みたいという思いがあったのではないかと思うのですが、いかがでしょう?

カミヤマ:ありましたね。ライヴを意識して曲を作った部分も大きいので、それがサウンドやアレンジに表れていると思います。

エンドウ:あとは、曲を聴き終わったあとの感覚を大事にしています。前作は"謎"がテーマだったから、アルバムを通して聴き終わったあとに"なんか違和感がある"っていう感覚を持たせたかったんですよ。でも今回は、全体を聴き終わってからじゃなくて、"音が鳴っている今その瞬間"に伝わればいいなと思って。だから、前回は轟音で音の壁を作っていたけど、今作はタイトに、リバーブをかけずにそのまま伝えるっていう手段をとりました。

-なるほど。今回のアルバムは、いろんな意味で殻を破った感じがありますね。

エンドウ:自分たちに何ができるのか、だんだんわかってきたんです。今までだったら、"こういうのがPELICAN FANCLUBだ"っていう型があって、自分たちができる限界はここまでかもって自らブレーキをかけていて。今回はそれを取っ払っていろいろやってみたら、意外と形になるなと。なんと言うか......ドアをひとつ開けたら大草原が現れた、みたいな(笑)。