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INTERVIEW

Overseas

POP ETC

2016年02月号掲載

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Member:Christopher Chu(Vo)

Interviewer:吉羽 さおり

-たしかに曲それぞれには個性がありますが全体の流れは自然ですよね。気がついたらまったく違うタイプの曲に突入しているような、とてもシームレスな感覚を受けます。

それは嬉しいね。それが狙いだったから、そういう感想が欲しかったんだよ(笑)!

-作曲やアレンジ、またレコーディングも自分たちで行ない、特にレコーディングは自宅の簡易スタジオでも収録をしていますが、今回のレコーディングで何か工夫をしたことや、新たに導入したもの、トライしたことはありますか。あるいは、特に難しかったことは何かありますか。

自分たちでレコーディングをやったのは、好き勝手にできるからだった。どんなタイプの音楽を模索してもいいし、ヴォーカルだけ100テイク録ったっていい。ギターのパートに何時間もかけていたっていいしね。THE BEATLESでもない限り、そんなことをスタジオを借りてやるのは無理だからね(笑)。何ヶ月間もスタジオを借り切ったりしてね。それに最近はそういうことがやりにくくなっている。ビッグなバンドでも難しいらしいよ。今の音楽業界の情勢はそんな感じじゃないからね。そんなわけで、今回は自由も時間もたっぷりあったおかげで、今まで以上にお互いに協力的になれたと思うね。以前は曲を書いてスタジオに持っていった時点で、それをどうするのか具体的に決まっていないといけなかった。そこから調整する余裕がなかったんだよね。でも今は例えば弟が"このセクションはこうしたいな"って言ったらその部分を完全に噛み砕いて手を入れて、そうしたら今度はドラマー(Julian Harmon)が、"この部分がヘンになったからもう一度やり直したいんだけど......"なんて言ってきて、ドラムに手を入れるとか。そういう感じに、物事を何度もやり直すことができるんだ。そうやってできた曲は、3人が3人とも全力を注ぎ込めた手応えのあるものになる。そういう作り方をずっとやりたかったんだけど、これまでは本格的にそうするチャンスがなかったんだよね。

-今回はそうすると、以前よりいっそうグループ・ワークな感覚が強いんですね。

そう、一層強まった気がする。それからバランスのあるものにするまで根気強く取り組めるようになったよね。そのおかげで、君も言ってくれたけど、一体感がありながら個々の曲には多様性を持たせることができたんだ。

-時間をかけたということで、実験したり新しいことを試みたりはできましたか。

間違いなくできたと思うね。アルバム作りにあと1年かけてたら、まったく違ったものができていたと思うよ。時間をかけることができたのは大きかったね。

-日本での滞在中に制作をスタートしたということで、日本での出来事が作曲のきっかけになっている曲も多くあります。文化や様式の違い、みたいなところの面白さが曲へのアイディアになっていったのでしょうか。具体的には、どういったことが曲の元になりましたか。

日本の文化については、それまでもいろいろと話に聞いていたことが自分の中で共鳴していたんだ。ひとつ、今まで話してきたレコーディングに通じるものがあるとすれば、日本人の音楽の作り方だね。音楽業界の人だけじゃなくて、日本人はどんな職種の人たちも仕事に誇りを持っている。それから、ものづくりに対する誇りや献身ぶりも素晴らしいと思うんだ。僕は世界中のどこの食べ物も好きだけど、特に日本は蕎麦でも寿司でも、作る人が全身全霊を込めて作っているしね。集中力も時間もとてもかけて、美味しいものを作ろうとしているんだ。そういうのを見て、すぐに共感することができたよ。それこそが僕のミュージシャンとしての目標だからね。努力を惜しまずに、いいものを作るために人生をかけるような人になりたいんだ。僕たちが特に大きな影響を受けたのはそういうところだね。

-ものづくりに対する姿勢が、曲作りに対する姿勢に繋がっているんですね。

そう、曲作りに対する姿勢にね。日本で、Galileo Galilei(以下:GG)や(木村)カエラと一緒にスタジオにいたときもそれを強く感じたんだ。みんな仕事に対して真面目で献身的で。アメリカだとスタジオに行ったら自分が1番乗りだった、みたいなことが結構あるんだ(笑)。あとからみんなばらばらと入ってきて、結局スタートが1時間遅れるとかさ。それで、最初にやることが"さぁ、ランチ行こうぜ"なんだから(笑)。1日の最初の半分は仕事に着手すらしていないんだ。そういうのが不満だったんだけど、日本ではそんなことはない。みんなもっと真剣だからね。ひとつひとつの曲の元については、アルバム全曲分延々と語れるよ。例えば、Track.1「Please, Don't Forget Me」をGGとプレイしたのが最初だったんだ。

-そうらしいですね。

そう、ショーでね。彼らがショーに招待してくれたんだ。"Ouchi Daisuki Club"というイベントでね。出演バンドが4つぐらいの小ぢんまりしたイベントで、僕たちはGGのメンバー全員と「Please, Don't Forget Me」をやったんだ。その曲のレコーディングが完了する前の話なんだけどね。そのライヴでやったときの大きなドラムのサウンドとか、そのとき感じた気持ちとかに心をかき立てられて、スタジオで曲を作り直したよ。リズム・トラックの大半に手を加えて、あのときの感触を再現しようとしたんだ。

-そもそも、完成もしていなかった「Please, Don't Forget Me」をライヴでやろうと思ったのはなぜだったのでしょうか。

スタジオにいたときにGGにデモ音源を聴かせたら、みんな速攻で気に入ってくれたんだ。それで、イベントのために再会したときに、"何か一緒にやろうよ"という話になって、最初に挙がったのがこの曲だった。

-それで試しにやってみたらそれがすごくいい感じだったと。

その通りだよ。

-その日のオーディエンスが世界で初めてこの曲を聴いたんですね。

そうなんだよ! たしかステージでそんなことを言った憶えがあるよ。"世界初演奏!"って(笑)。まぁ、そこから手を加えたから今あるのとは違うけど。

-Track.10「I'm Only Dreaming」は渋谷のアパートで書いたそうですね。

そう、あれは日本にしばらく住んでいたころに書いた曲なんだ。弟(Jonathan Chu/Gt)がトラックを送ってくれてね。今のバージョンを簡略化したようなやつだったんだけど......そのころはたしか、GGかカエラの曲を作っていたときだったと思う。頭をすっきりさせるために少し休憩して、弟の送ってくれた曲を聴いてみたら、すぐにそれに合わせて歌が口をついて出てきた。30分くらいで丸1曲分歌詞が出てきたんだ。スイッチが入ったような感じにね。それで、初めて曲全体を通して歌ってみたら、何だかすごくスペシャルなものができたような気がしたんだ。