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INTERVIEW

Japanese

浮遊スル猫

2015年05月号掲載

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Member:さはら (Vo/Gt) やがわいちる (Ba/Vo) おみ (Dr)

Interviewer:沖 さやこ

浮遊スル猫、2ndミニ・アルバムにして大躍進だ。前作『フカシンリョウイキ』から1年4ヶ月、ストイックにライヴ活動を行っていた彼女たちは、新たな環境を手に入れることで、ものすごい勢いで進化してきた。日比谷野外大音楽堂でのステージでの経験を機に、より強くなったステップ・アップへの想いが、新作『梦を解く』にははちきれんばかりに表れている。自身の世界観をより拡張させたサウンド・メイクに、ソングライティング。解き放たれた願いは、それを実現させるパワーへと変貌を遂げた。

-前作『フカシンリョウイキ』から約1年4ヶ月、待望の2ndミニ・アルバムなのですが、この1年4ヶ月でかなり変貌を遂げましたね。このパワー・アップの背景にはどんなことがあったのでしょう?

やがわ:1番大きかったのは"NAONのYAON 2014"(※2014年4月29日に日比谷野外大音楽堂で開催。SHOW-YAがプロデュースする、幅広い女性ミュージシャンが一堂に会するイベント)に出たことで。そこからライヴを観てくれる人や裏方で動いてくれる人もちょっとずつ増えてきて、出られるライヴがちょっとずつ変わってきたんです。周りからライヴに関する意見もいろいろもらえるようになって、どうやったらお客さんに楽しんでもらえるかを考えるようになって。

-以前、お客さんを楽しませるというよりは"聴け!"という気持ちでライヴをしているとおっしゃっていましたね。

やがわ:お客さんもそこにスッと入り込んで聴いてくれてたので、それでいいと思ってたんです。でももっと聴いてくれる人を増やすためには楽しませないといけない。意見をもらったうえで"浮遊スル猫として大事な部分は残しつつ自分たちはどうしていきたいか"を考えて、"プロのアーティスト"という部分をより意識していったんです。いずれ自分たちが支えてくれる人たちを引っ張っていかなければならない。それで少しずつライヴや楽曲を進化させることができて。この期間はバッと走ってきた感じです。

さはら:この1年でロックな感じのバンドさんと対バンすることが増えてきて。セプテンバーミーや感覚ピエロ、THE NAMPA BOYSのツアーに参加したんですけど、みんな盛り上げるのが上手でライヴが楽しいんですよね。そういうのを観て、私たちなりにそういう要素を取り入れていったほうがお客さんも自分も楽しいのかなという刺激はありましたね。最近はやがわさんがプロレス並みにお客さんを引っ張るライヴをしていて。......例えば、フロアにテープを貼って"この線より後ろに行くな!"ってお客さんを無理矢理前に来させたり(笑)。すごく盛り上がりましたね。なのでライヴはアグレッシヴな感じに変化しています。『フカシンリョウイキ』は自分たちの中で完結していた、自分たちの好きなものだけをやっていたものだったけど、今作『梦を解く』は周りの人が何を求めているかを意識しつつ、一緒に楽しめるものにしていったら、こういうアルバムができたという感じですね。

-『梦を解く』はライヴ活動の中で生まれてきた心境の変化などが反映されたアルバムなんですね。

やがわ:『フカシンリョウイキ』以降はライヴを主にやっていたので、レコーディングから一旦離れたんです。

さはら:去年の10月にライヴ会場限定でリリースしたEPに入っている2曲を9月くらいに録って、そのあとにアルバムの話をしてたんですけど、実際にレコーディングに入ったのは2月だったんです。今回のアルバムには1年くらい前からある「虚栄心パラドックス」(Track.1)や結成前くらいからあった「mana」(Track.5)みたいにライヴでずっとやってる曲もあれば、「感性せよ」(Track.6)はレコーディングに入る直前、ぎりぎりに作った曲も入っていたりするんです。

やがわ:自分たちでずっとやっていた曲も、そこにさらにエンジニアさんがいろいろ加えて、最終的にこの形になった、みたいな。だから(今できることを)詰めるだけ詰めた!って感じです。前作は名刺代わりの作品だったので硬い感じだったんですけど、今回は詰めるだけ詰めたから大爆発してて(笑)、お客さんをノせるアルバムに勝手になっていきました。

-音のスケールが格段に増しているので、浮遊スル猫のことをちゃんと理解して、いい部分を引き出してより広げようとしている人の存在を感じたんですね。だから今回はプロデューサーさんがいるのかと思ったんですけど――。

さはら:前作と同じエンジニアさんが、今回エンジニア兼プロデューサーという感じなんです。アレンジャーもやっていた方なので、アレンジに関しても結構いろいろ意見交換をして。例えば「Lemuel」(Track.8)は、約1年前にやがわがデモを作ってきて、3人でスタジオで何度かアレンジを考えたんですけど、なんかしっくりこなくてそのままにしてた曲だったんです。

やがわ:「Lemuel」は、ほんっとに形にならなくて何度投げたことか(笑)。今までこういう曲は作ったことがなかったんで、どうしても形にはしたかったんですよね。

さはら:そしたらそのデモを聴いたエンジニアさんが、ピアノやヴァイオリンを入れたオーケストラ的なアレンジにしてくれて。私たちはギター、ドラム、ベースの3つしかできないので、別の角度から意見を頂けたことで曲のクオリティがぐんと上がりました。自分たちにちゃんと合うアレンジにしてくれるので、安心して任せられますね。

やがわ:他の曲でもシンセを入れてもらったり、色づけをしてもらって、それによってギターやベースのフレーズが変わったりして、自分たちだけでは暴れまくってたものをきれいにしてもらったり。"行き詰まったらこっちに持ってきていいからね"と言ってくれるくらい、力になってくれてるんです。

さはら:「感性せよ」はぎりぎりでレコーディングして、結構ノリのいい曲だったんですけど、録り終えたあとに"もうちょっとこうしたいな......"と思ってお願いをして(笑)。最後までみんなで足掻いた曲ですね。きれいめなものに若干ノリのいい要素が入った曲にすることができました。

やがわ:エンジニアさんに"すみませんもうちょっと......"って頼んで何回ベースを録り直したことかね(笑)! 大変でした、本当に大変だった。イメージ的にはサカナクションみたいな感じで......サビだと思ってたものがサビじゃなくて、なかなか大サビに行かなくて最後の最後でやっとバーン!と大サビが来る、みたいな。今までやったことがない感じになりました。