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INTERVIEW

Japanese

VOLA & THE ORIENTAL MACHINE

2014年10月号掲載

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Member:アヒト・イナザワ (Vo/Gt)

Interviewer:天野 史彬

-今後しばらくは、アヒトさんは福岡で暮らしながら、VOLAとしての活動拠点は東京でっていう感じになるんですね。

そうですね。やっぱりね、ライヴをやるにあたっては地方じゃ弱いかなっていうのもあるんですよ。集客も少ないし。今の福岡の状況を見ると、音楽をやる人が減ったのかなって思ったりするんです。その代わりライヴハウスが多くなって、ちょっと寂しいかなって思いますね。だから、どうしてもライヴをやったりする活動の拠点は東京になってしまうっていう部分はありますね。やっぱ、地方じゃ人は入りづらいのでね......もちろん、有名な人らが来れば入るんですけど。そこに来る人がもうちょっと他のライヴハウスにも分散していけば、地元のバンドも盛り上がってくるんじゃないかなって思うんですけどね。でも、なかなかそうもいかない部分もあって。ただ、せっかく福岡に戻ったんだから、福岡で音楽をしっかり作れる環境を作りたいなっていう思いはありますね。東京だと地代が高いので家建てたりするのも難しいですけど、福岡だったらそれも可能かもっていうのもありますし。段々と、そういう目標もできてきてるんですよ。正味の話、普通に働いてたらお金を貸してくれる銀行さんも出てくるだろうし(笑)。設備ってどんどん自分で作れるから。そしたら福岡にスタジオ作って、自分で音楽を作れる環境を作っていきたい。やっぱりドラムも叩きたいしね。ゆくゆくはそこでVOLAでもレコーディングできたらいいなと思うし。地方にいたら、そういうこともできるんですよね。覚悟の果てがそういう、音楽を続けるところに向かえたのは、よかったなって思いますね。

-今って、インターネットですべての場所が繋がったぶん、"ローカル"であることは、音楽をやる上でのひとつのキーワードになると思うんですけど。アヒトさんご自身、福岡に戻られて落ち着いたなっていう感じもあるんですか?

う~ん......あんまり落ち着きたくないなっていうのもあるんです。福岡って、暮らしやすい場所なんですよ。ご飯も美味しいし、そこそこ都会だし、山も近いし、暮らしやすい。でも......僕にとっては竜宮城みたいな感じなんですよ(笑)。

-今回のTrack.2「DOMINO CASTLE」の歌詞には"竜宮城"という言葉が出てくるし、そもそも作品タイトルの"Regalecus russelii"って、深海魚の"リュウグウノツカイ"っていう意味なんですよね。

福岡で時を忘れて遊んでしまうと、東京に戻った時に浦島太郎みたいに歳をとってしまう危険性もありますよね。それは気をつけないとなって思います。もし、そこで落ち着いてしまうと、時の中の流れもわかんなくなるし、いざ曲を出しても、世の中のニーズがわかんなくなるから。だから、あんまりべったりいすぎても危険だなって思いますね。やっぱり、今まで築いてきたことって、周りの流れを見つつやってきたことだったから、その流れを止めてしまうのは嫌だなって思うんですよね。確かに、周りを見ずにマイペースにやっていく人もいるかもしれないけど、僕はもうちょっと周りを見たい。さっきも言ったように、邦楽系のDJイベントって今は各地で増えてるし、VOLAの音を受け入れてくれる人たちも増えてると思うから、そういう場所のDJたちと密に連絡を取りながらやっていけたらなって思ってるんですよね。

-なるほど。やはり、さっきも少し話しましたけど、今は日本において"VOLA以降"と呼べるようなサウンドを持ったバンドが増えている現状もあると思うんですけど、若い世代を見てみてどうですか?

以前に比べたら、面白いことやってるなっていう人たちは増えましたよね。でも、若い人たちを見るとニュータイプだなって思いますね。自分たちはオールドタイプで一生懸命頑張ってやってるっていうか(笑)。たぶん今の若い子たちは、オリジナル世代のポスト・パンクとかは聴いてないんだろうなって思うんですよ。ポスト・パンクをやってる邦楽バンドを聴いて音楽を始めたっていう感じだと思うので、すごくニュータイプ感を感じるんですよね。"俺はそこには手を出し切らんな"って思ったりすることもあるので、そこは羨ましく思ったりするところもあるんですけど、自分らがやっても似合わないだろうなって思うし。そこまで節操なくしてしまったら、自分の中で嫌だなって思うし。やっぱり、僕が音楽を作る上でのヒントになるのは邦楽よりも洋楽のほうが多いので。でも、今の若い子たちのジャンルレスな感じっていうのは、ある意味でニュー・ウェーヴとかノー・ウェーヴの感じがあっていいなっていうのも思いますね。

-ニュー・ウェーヴやノー・ウェーヴという言葉が本来的に持つ実験性や越境性ですよね。あと、"踊る"っていうことに関していうと、VOLAがデビューした頃は、ロックで踊るっていうことが、そこまで定着していなかったと思うんですよ。でも、今はロックで踊ることに対してすごくフラットな目線を持っている若者たちが多いようにも感じるんですけど、どう思いますか?

うん、そうですよね。特にDJの人たちとバンドが絡むイベントが増えてきて、ステージにいるバンドをフロアにいるお客さんが観るっていうよりも、バンドもフロアにいて、お客さんもフロアにいて、それで交差するっていう流れができてると思うんです。以前は、ステージから発して、それに対してお客さんが盛り上がるっていう感じだったけど、今はフラットになって、バンドとお客さんが同じ場所で混じってる。バンドとお客さんがダンスし合うというか。さらにそこにDJも混ざっていって......それは凄くいいと思いますね。自分の中の理想というか。VOLAも段々と変わってきたところがあるんですけど、いつの時点からか、お客さんと自分たちがごった煮になるようなライヴをやりたいなって思うようになってきたんですよね。今はそういう自分たちのやりたいことと、お客さんや環境がすごくマッチングしてるんで、そこで活動したいなってずっと思ってたんです。だからこそ、早くやりたい、早く曲作んなきゃって思ってましたからね。

-わかりました。最後にもうひとつ伺いたいのが、今年、ナンバーガールのメジャー時代のアルバムがリイシューされましたが、聴かれましたか?

あんまり聴いてないんですよね。ちょろっと通して聴いたぐらいで。

-ナンバーガールは解散してからもう10年以上経ちますが、今でも若いバンドのフェイバリットの筆頭に名前が挙がるバンドなんですよね。それだけ日本のロック・シーンに大きな足跡を残したバンドだと思うのですが、あの時代、ドラマーとしてあのバンドにいたことに関して、今のアヒトさんから振り返ってみて、思うところはありますか?

そうですね......今になって客観的に当時の音を聴けるようになったんですけど。今回の再発に関しては、Dave Fridmannに頼んでリマスターされたりしてて、音圧は上がってよくなったなって思ったりもするんですけど......あの時のギリギリ感というか、ともすれば恨み骨髄にでもなるんじゃないかっていうような心境でやってた(苦笑)、あの頃の感覚っていうのは、当時出したオリジナル盤のほうが出てるんじゃないかなって思うんですよね。昨日のBAYCAMPで向井(秀徳)くんが自分たちの後に出てたんです。それで、楽屋でしばらく音源の話とかもいろいろしたんですけど、"そりゃ曲はできるかもしれないけど、今、あの頃のメンバーで集ってやっても、あの感じは出ないよね"っていう話もしたんですよ。よく簡単に"再結成すればいい"って言ってくる人もいるけど、あの感じは出せないですよ。そんな無責任なこと言わんといてくれって思う(笑)。......まぁ、今思えば、あの終わりかたは美しかったんじゃないかなって思います。スパッとあそこで終わったバンドだったから、今でも好きでいてくれる人がいっぱいいるんじゃないかなって思うし。あの後、ピークが過ぎてもジリ貧で続けていってたらそうはなってなかったと思うんですよね。メンバーがイライラとギラギラとワクワクが混在した中でやってた、あそこで終わったのは、美しかったんじゃないかと思いますね。