Japanese
VOLA & THE ORIENTAL MACHINE
2014年10月号掲載
Member:アヒト・イナザワ (Vo/Gt)
Interviewer:天野 史彬
-ライヴ活動の中で、新曲の必要性が生まれてきたと。
そう。でも、今までの僕らの曲作りって、みんなでひとつの場所――といってもスタジオじゃない、今取材をやってるような、机と椅子が並んでる普通の場所なんですけど――に集って、コンピューターを立ち上げて、それぞれ竿(楽器)を持って、中畑(大樹/Dr)くんならドラムパッドを使って打ち込みでリズムを作ったりして、ひとつのネタからああでもないこうでもないって言いながら作っていくパターンだったんです。でも、僕が普段東京を離れている以上、そのパターンはもうさすがにできないと。1回試みたんですけど、他のメンバーから"もうちょっと作り込んでから呼んでくれないと、ただの時間の無駄になる"っていう苦情も来たので、自分でギリギリのところまで作り込まないとダメなんだなって思って。なので、自分でコンピューターを使って作れるような仕組みを取り入れるところからまず始めたんです。それで"Live 8"(音楽制作ソフト)とかを買って家で作り始めたんですけど、最初は全然使い勝手もわからないじゃないですか。それを習得するのに2年ぐらいかかってしまった感じなんですよね(笑)。やっぱり自分の中にある曲のイメージをある程度形にして、歌詞も書いて歌まできちんと乗っけたものをメンバーに聴かせるっていうところまでやらんと、こうやって遠距離で活動してる分には難しいんですよね。そこに辿り着くのに時間がかかりましたね。
-なるほど。じゃあこの沈黙期間は、東京と福岡でメンバーとの距離が離れた状態でも曲作りをしていく、その形を作り上げていくための沈黙期間でもあったんですね。アヒトさんの中では、VOLAはあくまでも続いていた。
それに、『PRINCIPLE』を出したとき、自分の中では結構いいものができた自信があったんです。でも出してみたら、評価的にあんまりよくなかった。それで自分たち......特に自分の中でなんですけど、あんまり通用しないのかなって思ってしまう部分もあって。でも、それから1年後とか2年後ぐらいに、うちらと同タイプのバンドがいっぱい出てきて、しかも盛り上がってきた。それに今、和モノのDJイベントって増えてるじゃないですか。邦楽をかけるような。ああいう場所でうちらの曲を使ってくれてて、それも盛り上がってきた。大阪なんかでは特に、そういうシーンがしっかり確立していて。うちらとシーンの、このタイム差加減って一体なんなんだろう?って、ちょっとわかんなくなったんですよね(笑)。なので、もしかしたら活動のペースを落とすのが早すぎたかもなって思ったりして。そういうところからも、また火がついたりしましたね。今盛り上がってるシーンを客観的に見ることで、VOLAとしてもまだまだやっていける余地があるのかなっていう思いも出てきて。それだったら、自分のいいと思える曲をもう1回しっかりと作っていこうって、また気力が湧き上がってきた部分もありますね。自分がやってきたことは間違いではなかったのかなって、勇気づけられたというか。
-確かに、VOLAがずっと鳴らし続けてきたポスト・パンク/ニュー・ウェーヴ的なサウンド志向を持ったバンドって、年を経る毎に日本にも増えてきた感じはありますよね。むしろ、VOLAがデビューした当初は、他にはあまりいなかった。
そうですね、2005~2006年辺りって、あんまりいなかったですよね。海外にはいっぱいいましたけど。日本にもいたにはいたけど、まだオルタナ色が強い時代でしたね。
-だから今振り返ると、VOLAは先駆者だったとも言えるわけで。
うん。でもやっぱり最初にやる人って、手当たり次第にやらないといけないんですよね。何もないところに道を作っていくわけじゃないですか。そうすると、間違いにも手を出すことはあるんですよ。だから、あまり受けがよろしくないと(笑)。でも、自分たちが作ってきた道のあとを行く人たちは楽だと思うんですよね。もう道筋はできてるので。なので、VOLA自体はあっちこっちうねうね迷いながら模索してきた部分はありますね(笑)。最初にやるっていうのは難しいんですよね、ヒントがないので。
-でも、僕はこの間『PRINCIPLE』を聴き返しましたけど、あれは決して間違いではない......というか、あれは凄まじいアルバムですよね。あの情報量、あの密度、それでいてあのポップさは凄いと改めて思いました。
ありがとうございます(笑)。自分の中でも、それまでやってきたことと、同期ものとかシンセもののミックス具合のバランスが1番取れてるアルバムだなって思ってます。曲のタイトルとか『PRINSIPLE』っていうアルバム・タイトルも音に凄くマッチしてるし。だから"してやったぞ"っていう感じはあったんですよね。ただ、あの時は反応があまりよろしくなかったというか(笑)。
-今回の『Regalecus russelii』の中に「Far Tokyo」というとても美しい曲がありますけど、この曲の歌いだしは"午前3時に 新着メールを確認して/つまるところ それは ライブの誘いだった/俺はビール片手に それを快諾したんだ~"というもので。この曲にはアヒトさんがライヴの中で見出した想いが赤裸々に描かれていると思うんです。実際、この4年間の中で、頻繁にできないからこそライヴの現場の中で感じたものも大きかったのでしょうか?
そうですね。やっぱり福岡に戻って別の仕事を始めて、今までミュージシャンとして暮らしてきた生活とはまったく違う生活になったので、複雑な気持ちっていっぱいあるんですよ。今回の曲や歌詞って、ほとんどそのことばっかりというか。近いようで遠い東京というか......今まではライヴって当たり前のようにやってたけど、今の僕の生活の中では、特殊なものなんですよね。改めて、しみじみとライヴができるよさを噛み締めることができたというか。だから、ライヴに関してはイメージがまったく変わったんですよね。「Far Tokyo」に関しても、自分が福岡から東京に行ってライヴをやってっていうのが......なんか、夢のような世界だなっていう感覚が今はあるんです。夢見心地になるというか。今の日常の生活が楽しいか楽しくないかといったら、全然楽しくないので。
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