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INTERVIEW

Japanese

VOLA & THE ORIENTAL MACHINE

2014年10月号掲載

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Member:アヒト・イナザワ (Vo/Gt)

Interviewer:天野 史彬

-なるほど......音楽が日常でなくなったことによって、音楽をやる喜びを再確認していった部分もあるんですね。やはり音楽活動をしている時間と、別の仕事をしている時間とではギャップを感じることは多いですか?

うん......でもやっぱり生きていくためには働かないといけないので。音楽だけでやっていくのは難しいですからね、このご時勢。何かしら経済的に成り立たせていけるようにしないといけないので、別の仕事もしないといけない。その辺の葛藤はやっぱりありますよね。本当はもっとがっつり音楽をやりたいけど、そうも言っていられない。

-今って、音楽に携わる多くの人がその問題に直面していると思うんですよ。音楽活動と経済的な面をどうやって両立させていくのか。その中で、今のアヒトさんと同じ道を選ぶ人たちもどんどん増えていますよね。別で仕事を持ちながら音楽をやっていくっていう。

うん、そうですよね。昔みたいに、(音楽をやることが)堅気の世界を捨てるものではなくなってきてるんだと思います。昔って、ピークが過ぎると"あの人たちどうやって生活してるんだろう?"っていう感じになる人が結構いたじゃないですか(笑)。でも、それって健全じゃないと思うんですよ。本人がそれで納得してるなら全然いいんですけど、やっぱりある程度経済的な基盤がありつつ活動をしていかないと、いいものもできてこないんじゃないかなって思ったりもするんです。気持ち的に余裕がないと考えも思い浮かばないし。なので、ある程度しっかり切り替えて、別の仕事をするときは別の仕事をする、音楽をやるときは音楽をやるで、きちんと両立させていくのが今後は当たり前になるんじゃないかなって思いますけどね。それに今って、リリースの仕方もいろんなやり方があるじゃないですか。ちょっと前だったら、インディーズでリリースして、人気が出たらメジャーに行ってっていう経路があったけど、今はそんなの関係ない。個人でいくらでも発信できる。だから、あんまりそこらへんにこだわらなくてもいいのかなって思いますね。普通に働きながら音楽やるのも全然いいと思う。昔の考えだと、音楽は趣味で仕事は別でっていう感じだったけど、そういうのは考えなくてもいいでしょうっていう。やれる時に両立してどんどんやっていって、生活を成り立たせていけばいいんじゃないかなって思いますね。だから......覚悟の問題ですよね。

-音楽を続ける覚悟ですよね。そのためには、音楽以外の様々なことも自分で考えていかないといけない。......そんなアヒトさんの今のモードが反映されているからか、今作には、すごく生々しいアグレッシヴさがありますよね。音楽的にも、エレクトロな音色を多様していた『PRINCIPLE』と比べるとギター回帰といっていいサウンドで、根本にあるアヒトさんのソングライティングが際立って聴こえてくる。

そうですね。同期ものやシンセものをやるのに飽きてきた部分もあって、生の音の音圧でガツンとやりたい気持ちもあったし。割合としては、『PRINCIPLE』は生音と同期が半々ぐらいだったけど、今回は生音と同期が7:3とか8:2ぐらいの感じになってるんです。それにシンセや同期の使いかたも、全体的にブワーッとまぶすんじゃなくて、1箇所だけにシンセをガッツリ混ぜるとか、1箇所だけに同期した音をガーっと混ぜるとか、そういう感じに意図的に変えた部分はありますね。やっぱライヴでやると、生音でガツンとやったほうがリアルな感じがあるなって、客観的に同期もののバンドを観て思ったりもして。

-『PRINCIPLE』までのVOLAは作品を経る毎に音楽的な情報量が増えていったと思うんですね。で、その情報量の多さが表現してきたものに、"東京"っていうモチーフが1個あったのかなって思うんですよ。都会的な猥雑さや冷たさを、サウンドの情報量の多さと煌びやかさで表してきたというか。でも、アヒトさんが物理的に東京から離れたことで、そういう都会的なモチーフより、もっとアヒトさん個人の人間味のようなものが音楽にも反映された部分があるのかなって思うんですが、どうですかね?

なるほど......でも確かに、今回は歌詞に気持ちが入ってるんですよ。本当に、今の自分の心境を吐露している感じになっているので、そういうのにマッチングする音楽に自ずとなっていった部分はあると思いますね。

-本当に、今回の歌詞は人の営みの細部に切り込んでいく歌詞ですよね。

なんだろう......ほんと、個人的なことばっかり歌ってると思うんですよ。今回の歌詞は本当に、"営み"ですよね(笑)。今までの歌詞は、頭で考えていることではあっても、実体験ではなかったんですよね。ひとつの思想というか。思想って、体験するわけではないじゃないですか。"自分はこう思ってる"っていう気持ちがあるだけで。でも今回は、自分が体験したことをそのまま書いてるから(笑)。だから今までと全然ニュアンスは違いますよね。......普通に仕事してると、ひとりの時間が多いんです。そうすると、いろんなことを考えちゃって、わー!って発狂しそうになる時があって。たとえば5曲目の「妄想Rader」は、その気持ちをそのまま書いちゃった感じですね。自分の中に妄想が広がってきて、素の気持ちをどんどん攻撃してくる、みたいな......そういうイメージに苛まれてた時期があったりしたので。ほんと、体験しないと書けない歌詞ではありますね。生々しい以外はありえないとうか(笑)。