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INTERVIEW

Japanese

GOING UNDER GROUND

2012年11月号掲載

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Member:松本素生 (Vo/Gt)

Interviewer:吉羽 さおり


―なるほど。あと聞いておきたいのが、前作『稲川くん』では曲自体は存在しながらも完結せず収録されなかった“稲川くん”がこのアルバムに入っていることですね。

やっとできまして。簡単に言うと、なんで前回は入れなかったのかというと、結構悲しいっていう歌だったんですよね。単純に俺のプライベートの、悲しかったなっていう出来事をただ並べていった曲だったから、こんなの意味ないなっていうのがあって。でも、ほんとはそうじゃないものもあるんだっていうのに気付いているんだけど、そのときはそれがなんなのかわからなかったんですよね。今回は、語り部に徹する形で、歌詞も書き直したし。すごく前向きな歌になってよかったなと思って。

―まさかここで聴けると思いませんでしたけど。

いろんな人に意味わかんないって言われます(笑)。

―前作から1年7カ月ぶりのフリがここで落ちたっていう(笑)。

いや、落ちないでしょ(笑)。ただね、この曲を誰よりも最初にいいって言ってくれたのが、曽我部(恵一)さんで。俺、曽我部さん大好きだから、その言葉を信じて1年7カ月頑張ったんですよね、完成させようと。誰もいいって言ってくれないときに、曽我部さんだけは、あれめっちゃいいよって言ってくれて。一回、曽我部さんに録ってもらおうかとも思ったんですけど、でも、それはちがうなと思ったし。だから、この曲もそうだけど、なにかアルバムのために、アルバム用に書いた曲っていうのは1曲もないんですよね。

―今できるリアリティのあるものが、アルバムになったんですね。最近、ウェブマガジンが立ち上がりましたが、より発信する場所を自分たちで作って、面白い事をやっていこううという感じなんでしょうか。

段々そういうふうになってきますよね。2008、2009年かな、事務所を自分たちでやりはじめたところからいろいろわかってきたこともあるし。直で、自分たちのやりたいこととかを、自分たちがまず発信してだなみたいな。メディアをやるのはタダだし。俺はやりたいんだって中澤(寛規:Gt)さんがやりはじめたんですよね。あとはファンクラブとかも、10年前とは意味が変わってきたし。音楽的なこともそうだけど、リセットされたんですよね、いろいろ。で、今やりたいこと、必要なことをただやるっていうふうになった。ほんとは、寝転んで暮らしたいですけどね。置きたいときに起きて、ギター弾きたいときに弾くとか。

―それも夢ではありますけどね(笑)。でもこうしてやりたいことを自分たちで、バンドの手でやっていくっていうのは、音楽をやる楽しさでもありますからね。

うん、説得力のあるものがいいんですよ、音楽は。かっこ悪かろうが、この人たちこう思ってやってるんだって。逆に今はそれしか見てないかもしれない。

―演奏する側の思いがきちんと透けて見えるものっていうものですね。

うん。でもそれって見えるじゃないですか。インタビューしていてもそうですよね。何かこの人、こういうアルバム作ったのに結構薄っぺらいこと言ってるなとか、なんとなく心配になる瞬間だってあるだろうし。なんかひとつ信じたものがあって――たとえば音楽でいうと、音楽で救われたことがあるんだなこの人っていう音楽が、俺はやっぱり聴きたいし、そういうものを出していきたいし、そういうやつらに会いたいしっていうところですよね。意外と、CDも売れないっていうことになってるけど、じつはこんぐらいしか音楽がほんとに好きなやつっていなかったんじゃないかっていうのはありますよね。

―ああ、絶対数として。

そうそう。まずそういう人たちは相当敏感なリスナーだから、わかっちゃうじゃないですか。なんかこれ、なにかにのっかったなとか。そういうのじゃないものにしたかったんですよね、アルバムを。そういう思いで作っていったら、いちばんらしいアルバムになったし。バンドとしてこれがゴーイングの曲ですって思えたし、初めてほんとに肩の荷が下りましたよ。フロントマンとして曲も書いて、イニシアチブもとってってやってたけど、大丈夫だこの4人でいればって。丈さんもこれだけの曲を書いてくれているし。そこは個人的にありましたね、肩の荷が下りたっていうのが。

―それは大きいですよね、これまで10数年背負ってきた分ですから。

そうですね。そういう器じゃないので、俺(笑)。なんで、居心地がいいですよ。