DISC REVIEW
タ
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怒髪天
D-N°18 LIVE MASTERPIECE
ライヴの定番曲をパッケージした2枚組アルバムをリリース。「ロクでナシ」や「労働CALLING」などこれぞ怒髪天! という曲が収録されている。なんといっても増子直純(Vo)の描く不器用な男の生き様を綴った歌詞が沁みる。年齢のことだったり、お金、仕事のことなどシビアでありながらリアルを歌い、それでも楽しく生きていくんだと、いつだって背中を押してくれている。こんなアツいおじさんがいる日本はまだまだ面白いと思う。文句なしのライヴ導入盤。まだライヴを観た事のない人はMCを含め体感必須です。さぁ、これを聴いてライヴ・ハウスに直行しましょう。
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怒髪天
ド真ん中節
2010年、いきなりのワンマン2デイズで派手に幕を開けた怒髪天のニュー・シングル。アルバムを3月に控え、充実の歌を聴かせてくれる。ミドル・テンポの骨太ロックに合わせて、増子が朗々と歌い上げるダイナミックなナンバー。「ド真ん中節」というタイトルどおり、これまで怒髪天が発し続けてきたポジティヴなメッセージを、よりシンプルかつ明確に示した歌詞。しかし、シンプルなだけではなく、ひねったブレイクなど怒髪天らしいアレンジもまた面白い楽曲だ。カップリングには、怒髪天との交流も盛んなCM 界で名を馳せる箭内道彦作詞、作曲の「YOU DON'T KNOW」を収録。朴訥とした味わい深いフォーク・ナンバーに仕上がっている。男女二人の心境を交互に描き出す歌詞世界が琴線に触れる。こちらも、さすがの出来。
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ドミコ
血を嫌い肉を好む
シーンに登場して以来、唯一無二と言われてきたドミコだが、その音作りは作品を重ねるごとに磨かれた技術を下地にした挑戦や遊び心に溢れ、誰も到達できないところへ到達した。2年8ヶ月ぶりのフル・アルバムだ。先日最新アレンジ版のMVが公開された「問題発生です」と、同曲から派生したであろう「問題は発生しない」。さらに、ライヴでも強烈なインパクトを放つおどろおどろしいナンバー「化けよ」の前にも、「ばける」という新曲が配され、表題でも音像でも連続性を感じさせるトラックたちが目耳を引く。過去作よりダークなアートワークやあくの強いタイトル通り、ドミコの濃厚な"コク"と言える部分をより突き詰めた印象の音の濁流は、もっと彼らのサウンドに浸らせてほしいと思っていたリスナーを、またしても唸らせるに違いない。
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ドミコ
VOO DOO?
予期せぬ曲展開、サイケな音色、ファンクやヒップホップをルーツに感じる腰の据わったグルーヴといった、ドミコたらしめるあらゆる要素をさらに推し進めた3rdアルバム『Nice Body?』から、約1年を経てリリースとなったニュー・ミニ・アルバム『VOO DOO?』は、これまでの魅力もふんだんに感じさせながら、聴こえてくる変化が最も大きい作品となった。ライヴ・アレンジが大きく変わることでも知られるドミコの、まさにそのライヴを想起させるような音の重なりが生むサウンドスケープは、タイトルさながら、呪術的でもあり幻想的でもあり、何より演奏者の楽しむ様が見えるよう。となるとこれがライヴではどうなるのか。次は音の鳴る現場で会いましょう。
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ドミコ
hey hey,my my?
"NEW FORCE 2017"選出、"FUJI ROCK FESTIVAL'17"出演など躍進中の2ピース・バンド。ギターとドラムの構成上そのシンプルな音をどう料理するかに重きを置く彼らの今作は、重ね録りを用いた重厚感のあるガレージ、変調を盛り込んだローファイなサイケ、リバーブと歯切れ良いラップを交ぜたサーフ・ミュージックなどが2~3分でテンポ良く切り替わり、すべての曲が新鮮でどれがメインなの?と思う多彩な1枚。ベースレスだからとギターをやたらジャカジャカとはせず、"だから何?"と笑うかの如く、枠にとらわれず聴きやすさや柔軟さに変えていて見事。さらに滲み出る奥田民生への敬愛、一聴すると英語に聞こえて実は言葉遊びに富む心地よい韻を踏む日本語詞、と楽しさが凝縮され、何度も聴きたくなる。
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ドミコ
深層快感ですか?
とんでもない天才が現れた。川越発の2ピース、"ドミコ"がとにかくすごいのだ。ポスト・パンク、サイケ、ガレージなど、様々なジャンルの枠を飛び越えた独自のトイ・ポップ・サウンドに、TOMOVSKYを彷彿とさせるような気だるくゆるい歌声がクセになる。これが初の全国流通盤だなんて、なんとも信じ難い。Track.1「地球外生命体みたいなのに乗って」の冒頭にあるように、"胸ぐらと耳掴まれてる"ような気分にさせられた。"2ピースでやれることなんて、この10年で出尽くした"と言われるこの世の中で、彼らは新しい風を巻き起こしてくれるのではないだろうか。似たり寄ったりの邦ロック・シーンに飽き飽きしているそこのあなた、ぐだぐだ文句を垂れる前に、まずは黙ってドミコの新譜をお聴きなさい。
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ドラマストア
LAST DAY(S) LAST
先のことを考えるのが苦手と言っていた長谷川 海(Vo/Gt)がこのタイトルを付けたことに成長を感じるし、思えばそれが様々なことを象徴している。例えば、バンド・サウンドを響かせてから疾走する冒頭2曲。鉄板の流れだが、前作と異なる印象に結びついているのは、音色、フレーズ、言葉、どれも選び抜かれたものだからだろう。引き算のアンサンブルの中でギターのみが細かく動く「ピクトグラム」、東出真緒(BIGMAMA/Vn/Key/Cho)を迎えたベース&ドラムレスの「夕立の唄」と聴き進めるほど新たな曲調が顔を出す構成が楽しく、人生の苦楽を捉えたリアルもユーモアもある歌詞はどこを取ってもオリジナル。総じて"未来しか見えない"と言いたくなるが、だからこそ心残りなく幕を引けるということか。
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ドラマストア
希望前線/knock you , knock me/回顧録を編む
デジタル・シングル「備忘録を綴る」を挟み、フィジカルとしては約1年ぶりのリリース。疾走感溢れるギター・ロック、ブラス入りピアノ・ポップ、ドラマチックなバラードと3曲の粒立ちはしっかりと。ひと捻りある展開、歌詞カードを見るとわかる言葉遊びなど、彼らならではの工夫、企みも効いている。全曲ひもとき甲斐があるが、初期衝動が前面に出た「希望前線」然り、高揚感に満ちた「knock you , knock me」然り、"同じメロディに別の歌詞を充てる"というトライをした「回顧録を編む」(「備忘録を綴る」と一緒に聴いてほしい)然り、演奏者も書き手も前のめりに制作に臨んでいることが一番に伝わってくる。"トリプルA面シングル"と派手に銘打つスペシャル感も嬉しい。
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ドラマストア
Invitations
遠くまで球を投げるにはいいフォームを体得する必要があり、肘の角度から目線に至るまで、初めはひとつひとつを気にしなければならない。しかし繰り返すうちに身体が覚え、いつしか意識せずともきれいに投げられるようになる。比喩表現になってしまったが、ドラマストアは今そういう意味で新たな段階に差し掛かりつつあるのでは。思考を重ねて積み上げてきたこれまでがあるからこそ、自分たちの感性を信じられるようになってきた。だから"ベタを疑う"という考えでやってきたにもかかわらず、あえてベタに踏み切った曲がある。今だからこその再録もある。幅広い曲調に挑んだ経験が、当初からの哲学を固くさせるものとして機能しているのも嬉しい。過去、現在、未来がここにひと繋ぎになっている。
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ドラマストア
ラブソングはいらない
表題曲は女性からのプロポーズがテーマで、アコースティック・ギターの音色を基調としたミドル・ナンバー。匿名の影に隠れる悪意を揶揄した「イリーガルハイ」は、ピアノのイントロからしてスリリングで、各メンバーのプレイにスポットが当たる場面も。そして「Work&Work」は、新米社会人を励ますような、カラッとしたテンション。以上3曲を収録した今回のシングルは、1stフル・アルバムから半年足らずのスパンでリリース。にもかかわらず、固定観念に疑問を呈し、新たな価値観を軽やかに提示する長谷川 海(Vo/Gt)の筆は相変わらず冴えているし、フル・アルバム制作時に強化された引き算のアンサンブルはさらに良くなっている。作品の洗練具合にバンドの調子の良さが表れているようだ。
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ドラマストア
DRAMA STORE
凛とした空気で幕を開け、華やかなフレーズの数々で踊らせるかと思えば、エッジの効いた表現でチクリと刺す。そしてストレートなバンド・サウンドを堂々と鳴らしたあと、思いっきりダッシュしてドタバタとフィニッシュ――関西発のポップ・バンド、ドラマストア初のフル・アルバム『DRAMA STORE』は、彼らの思うポップスを突き詰めた色彩豊か且つ起承転結が鮮やかな作品となった。テーマは"挑戦と回顧"。いつになく頼もしく、しかしやっぱりどこか放っておけない感じのあるバンドの姿が、生き生きとしたサウンドから透けて見えるようで、なんだかグッときてしまった。いよいよ、4つのピースが揃ったということだろう。ここから彼らのさらなる快進"劇"が始まることを期待したい。
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ドラマストア
swallowtail
イントロからいきなり聴き手の意表をついてくる「三文芝居」が象徴するように、バンドの果敢な挑戦がたくさん詰まったドラマストアのニュー・ミニ・アルバム。メンバーの加入&脱退もあった昨年はこのバンドにとって変化の年となったが、激流のなかで歩みを止めなかった経験がこのタイミングになって花開いた様子だ。3rdミニ・アルバム『白紙台本』で手に入れた新たな武器=ピアノ・ロック・サウンドにさらなる磨きをかけ、変拍子や転調を華麗に取り入れたシングル『ラストダイアリー』での作曲法を踏襲&進化させた本作は、ホップ・ステップ・ジャンプで言うところの"ジャンプ"にあたる、まさに飛躍の作品と言えるだろう。バンド内にいい風が吹いていることが至るところから伝わってくる。
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ドラマストア
ラストダイアリー
前作から約半年でニュー・シングルをリリース。表題曲「ラストダイアリー」は一聴するとこのバンドの王道を貫くようなポップ・ソングだが、ストリングスを取り入れていたり、転調や変拍子を用いたトリッキーな展開が用意されていたりと、新たな試みも多い。歌謡テイストの「あさきゆめみし」、アコースティック調の音色が優しいミディアム・チューン「ハロー彗星」と、収録曲はそれぞれ異なる色を持っており、シングルながら、このバンドの多様性が表れた意欲作だ。そんな3曲に共通しているのは、作詞作曲を担当する長谷川海(Vo/Gt)の人間性が今までよりも濃く、歌詞に投影されていること。ファンはもちろん、これからこのバンドを知っていく人にとっても打ってつけの1枚なのでは。
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ドラマストア
白紙台本
3rdミニ・アルバムにして2枚目となる全国流通盤。全国デビューや初ワンマン、メンバーの脱退など、バンドを取り巻く環境は一気に変化。それを反映するかのようにピアノを取り入れたTrack.1「至上の空論」を始め、全体的にサウンドは多彩に。とはいえ、それもすべて"何気ない日常にドラマを"という結成当初からのテーマを貫いた結果であることがこの6曲から伝わってくる。架空の主人公が設定された曲が並ぶなか、バンドのこれからを語るTrack.6「バースデー」のノンフィクションっぷりには胸を打たれた。変わらないために変わっていくこと、ネガもポジも音楽に昇華させながら一歩ずつ進んでいくことを選択したこのバンドの物語は、多くの人に勇気を灯してくれるはずだ。
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ドラマストア
Daylight
"何気ない日常にドラマを"そして"あなたの日々に転がるたくさんのドラマに、最高のBGMを"をコンセプトに活動する大阪発正統派ギター・ロック・バンドがTOWER RECORDS新レーベル"myh records"第1弾アーティストとしてリリースする1stミニ・アルバム。空間系のギターに奥行きのあるドラムが重なるリード曲のTrack.1、四つ打ちとクラップが爽快なファスト・ナンバーTrack.2、キャッチーでセンチメンタルなメロディが突き抜けるTrack.3、ドラマチックに展開するポスト・ロック風のドラムが刻む3拍子とアルペジオの相性が良いTrack.4、8ビートで駆け抜けるTrack.5と、歌を重んじたアンサンブルで構成された5曲が揃った。上モノの裏でテクニカルなリズム隊のアプローチがアクセントになっている。
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ドラマチックアラスカ
悪者
"100%の正義なんて存在しない"。そうヒジカタナオト(Vo/Gt)が語る通り、それぞれの正義と正義がぶつかり合うなか、各々が大切なものを守り抜いてきたこの2年半。音楽は不要不急と言われ、ライヴハウスに行く人が"悪者"とされていたようなときでもステージに立とうとし続けたバンドマンは、我々ロック・ファンにとっては"ヒーロー"だった。そんな誰かの"悪者"になってでも大切なものを守りたいという強さや覚悟を歌った本作。音楽を続ける苦悩や葛藤を描きながらも、ロック・スターとして生きていく決意表明がここに刻まれている。そして痛快なギター・ロック・サウンドとキャッチーなメロディに乗せた、正しさも間違いも肯定する包容力溢れる歌詞は、正しく生きようと戦っているすべての人の心をスッと軽くしてくれるはず。
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ドラマチックアラスカ
愛や優
ドラマチックアラスカの8曲入りの8thミニ・アルバム。今作に関してヒジカタナオト(Vo/Gt)は、"完成するまでにまじでもう歌詞が書けない状態になりました"というコメントを寄せているが、そういったスランプに至ったのも無理はないと思えるほど、粒揃いの仕上がりになっているし、突き抜けたストーリーがそのまま映し出されたような痛快感もある。つくづく正直なバンドだと思うし、彼らが信じられ、愛されている理由がわかる。"愛や優"というちょっぴり意外なタイトルも、聴けば頷けるはず。中でも、元メンバー(Ba)であるマルオカケンジが作曲し、ガガガSPの山本 聡(Gt)がプロデュースした「ジュブナイル」は、今作と今の彼らを象徴する1曲になっていくと思う。
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ドラマチックアラスカ
最後のフロンティア
ヒジカタナオト(Vo/Gt)が"ドラマチックアラスカの節目となるようなアルバムをリリースするときに使おうと思って、かなり昔から取っておいた"と語るタイトルを冠した記念すべき1stフル・アルバム。全14曲の中には、心を温めてくれる言葉が並ぶ「おつかれさま」や、弾き語りから始まるエモーショナルな「25」といった新曲はもちろん、現代特有の"SNSの闇"に迫る「ランニングデッド」など、彼ら主催の企画"アラスカナイズロックフェス"で配布されたナンバー、さらにはデビュー曲「リダイヤル」やライヴの定番曲「人間ロック」といった再録の5曲も収められ、今の"ドアラの哲学と音"、そして紆余曲折もあったバンドの歴史を同時に感じることができる。古参もビギナーも"ドアラファン必携"と言える1枚だ。
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ドラマチックアラスカ
ロックンロールドリーマーズ
タイトルの"ロックンロールドリーマーズ"がすべてを物語っている。憧れのロック・スターになりたくてギターをかき鳴らした少年がメンバーとの出会いや別れを経験しながら、相も変わらずロックに夢を抱き続けてる。今作はそんな今のドラマチックアラスカだから完成した初期衝動の詰まった1枚だ。"夢はまだ死なない/きっと僕にしか歌えない詩が/ここにだけあるから"、そんなふうに歌う「キミトフライト」の開放的なムードは作品全体の通奏低音にもなっている。中華風のリフに遊び心が爆発した「チャイニーズパッション」、天邪鬼な自分を冷静な視点で綴った「オッドアイ」、孤独な夜をセンチメンタルに描いたミディアム・テンポの「この夜は」など、充実の全7曲がバンドとリスナーの絆を強くする。
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ドラマチックアラスカ
アラスカ・ベリーズ
変化の兆しを覗かせた4thミニ・アルバム『アンカレッジ・シティー・ポップ』より1年経たずしてリリースされる次なるミニ・アルバム。和情緒と遊び心に満ちたTrack.1「ニホンノカブキ」を聴いて、"あ、開けたな"と思った。まず自分たちが純粋に音楽を楽しみ、心身ともに聴き手を躍らせること。それから、バンドが抱く決意や感情を音楽に落とし込むこと。そのどちらか一方に寄りすぎることなく、両者のバランスが絶妙。このバランス感覚はこのバンドのアイデンティティなのでは、と思う。現在マルオカ ケンジ(Ba)療養中につきオリジナル・メンバーふたりのみという状況でツアーを回っているとのことだが、何度も立ち上がってきた彼らならきっと大丈夫。そう感じさせられる作品。
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ドラマチックアラスカ
人間ロック
ドラマ"よろず屋ジョニー"の書き下ろし主題歌を表題に据えたニュー・シングル。正統派のヴィンテージ・ロックンロールのテイストと"ロック"という言葉を様々な意味で用いたキャッチーな歌詞が絡み合うTrack.1は快活ながらに気だるい雰囲気もあり、マイナー・キーの不安定さが少々やさぐれながらも自分の意志を貫く若者の姿と重なる。ヒジカタ ナオトのヴォーカルも楽曲の展開に合わせて熱を垣間見せ、そのさりげないドラマ性もバンドの新機軸だ。効果的な変拍子と美しいコーラスも感傷的なTrack.2、爽やかに切なく駆け抜ける雪解けの季節の恋を歌ったTrack.3と、全曲からバンドのメンタリティが素直に滲んでいる。ナチュラルで健全な美しい進化の結晶。2016年の活躍が期待できそうだ。
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ドラマチックアラスカ
アンカレッジ・シティー・ポップ
ドラマチックアラスカの4thミニ・アルバムは、今年初めに無期限活動休止を発表したギターのトバナオヤが参加した5曲と、現在仮メンバー/ギタリストとして活動中の爆弾ジョニーのロマンチック☆安田が参加した2曲の計7曲を収録。ゆえにトータル感があるアルバムというよりは、前作『ビヨンド・ザ・ベーリング』から1年間での"第1章の終わり"と"第2章のスタート"が混在した、終わりと始まりの渦中でうごめいているバンドの姿がそのまま投影された作品になった。アーティストとしてはある種特異な作品ともいえるが、彼らはもともと"点"ではなく"線"で魅せるバンド。今作ではこの先ドラマチックアラスカの作るストーリーがいい意味で読めず、その未知数ぶりに次作への期待が煽られる。
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ドラマチックアラスカ
無理無理無理
ドラマチックアラスカを"イマドキ"という人もいるだろうし"歌がいい"という人もいるだろう。はたまた"歌詞が文学的""衝動的""UKの匂いがする""ギターがブルージー"と思う人もいるだろう。それは彼らが純粋にいいと思うことだけをやっていることが理由だ。表題曲「無理無理無理」はそれをしっかりと守り、広げていくという決意表明である。書きなぐるように感情をぶつけた言葉もヒジカタナオトの遊び心の効いた言い回しでユーモアに昇華され、その歌を全力で押し出すバンドの一体感は衝動的でありながらも、しっかりと未来を見据えている。衝動で突き進んだ1作目、テクニックを磨いた2、3作目を経て完成したシングル。彼らは知名度を上げると同時に、着実に表現者としての腕も上げている。
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ドレスコーズ
式日散花
前作『戀愛大全』が架空の夏の若いおバカな恋を描出していたことと対になるように、この『式日散花』はそのあとに遭遇する様々な別れを1曲ごとに封じ込めている。しかも、1曲ごとにかなりJ-POPやJ-ROCKのある時代の象徴的なサウンドを伴って。モータウン調のリズムを持った「少年セゾン」で振り返る刹那の恋、ネオアコの煌めきに閉じ込めた逃避的な恋の終わりを歌う「若葉のころ」、悲劇的な結末を迎えそうな共犯関係を思わせる「襲撃」はREBECCAなどの90年代バンド・サウンドを想起させるし、「最低なともだち」は"きみとぼくだけに なるような"無敵感を抱ける誰かを失う不安をフレンチ・ポップ歌謡っぽいメロディとサウンドで。誰かを失って気づくことという意味で、2023年に必然的に生まれた作品でもある。
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ドレスコーズ
戀愛大全
暑すぎてめまいが起きるような夏の光、それを映像的に見ているような感覚、ディストピアそのものの現実と別の位相で起きている様々なラヴ・ストーリーが、儚くも強く息づく全10曲。1曲目の「ナイトクロールライダー」では、アルバムのテーマを貫通するような、"この夏をどう生きるのか"が提示されている印象はあるが、MVも素晴らしい「聖者」はTHE SMITHSを思わせる美しいアルペジオとリバーブが、世界なんてどうでもいい、この恋だけが本当なのだという気持ちの鮮度を上げる。ドレスコーズ流シティ・ポップ再解釈と言えそうな「夏の調べ」も新鮮だし、ドリーム・ポップにトロピカルなビートが混ざり込んだ「ラストナイト」もとびきりスイートだ。架空の物語を創造するためのシンセ・サウンドも効果的すぎるほど幻惑する。
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ドレスコーズ
ドレスコーズの音楽劇《海王星》
寺山修司が演劇実験室"天井棧敷"を結成する以前の1963年に執筆し、未上演だった"海王星"の音楽を、おそらく現在の表現者で最も影響を受けているであろう志磨遼平が担当したことは、必然以外の何物でもない。舞台の時代設定は明確ではないが、様々な事情を抱え、船の底のホテルに閉じ込められた人々の人間模様を彩るのには、やはり60年代当時のポップスに影響された歌謡曲的な音楽が似合う。ドレスコーズの前々作オリジナル・アルバム『ジャズ』に漂うロマ音楽や昭和歌謡に散見されるラテンの要素、ブルース、時に毛皮のマリーズを彷彿させるロックンロールが寺山の歌詞に違和感なくハマっている。そもそもは俳優が歌うためのデモ音源を改めて録音したという本作。舞台のための音楽だがドレスコーズの在り方がよく理解できる作品でもある。
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ドレスコーズ
バイエル(変奏)
コロナ禍のひとりの時間から生まれたメロディと言葉が、枝葉を伸ばしていく試行そのものが『バイエル』という作品の唯一無二の性質だとすれば、この"変奏"のために初めましてのメンバーが組み上げていったツアーは最も純度が高いものだったのではないだろうか。客席からステージに向かうメンバーの緊張した背中に始まり、おのおのが楽曲に向かう表情や演奏、この変奏のためのアンサンブルが主役の映像作品である。ピュアネスだけで志磨遼平が今回の"バイエル"一連の作品を創作したとは思わない。だが、この未曾有の時代を自分がどう生きたか? をどう遺すのか。その表現方法はアーティストの真髄を映す。今も続く不安な日々の中で絶対譲れないものは何か。あなたにとってのそれを確認できる演奏や瞬間がきっとある。
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ドレスコーズ
ID10+ TOUR
やりたい音楽が毎回変化するからどれもドレスコーズ――言うは易し行うは難しな努力を、おくびにも出さずにやってのけた志磨遼平のアートが凝縮された。越川和磨(Gt)、菅 大智(Dr)、有島コレスケ(Ba)らいわゆる基本メンバーも含めTHE BAWDIES、おとぎ話らバンドごとまるっとドレスコーズに"なってしまう、してしまう"志磨の引きの強さと、愛される楽曲とパーソナリティが証明されるライヴでもある。お祭り騒ぎに見えて志磨の周到な計画であることはラスト、ひとりっきりの「ピーター・アイヴァース」に明らか。同時に最高なR&Rミュージシャンが大挙する映像でもある。DISC2の陰鬱なまでに世界の終わりを感じさせる選曲と編成の1部と、爆音とそれを鳴らす人間そのものがアートな2部の落差も凄まじい。
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ドレスコーズ
バイエル
ピアノ・インストの『バイエルⅠ.』~歌とピアノ伴奏の『バイエル(Ⅱ.)』~エレクトリック・ギターやドラムが加わった『バイエル(Ⅲ.)』と、次にこの子たち(もともとの練習曲)はどう成長していくのだろうか? と、リスナー各々が想像していたいったんの完成は意外にもバンド・サウンドとも異なる最低限の楽器やSEが加わり素直なミックスで仕上げられ、手法は斬新だが音も世界観も実は核心のようなフォーキーさが心に優しく響く。コロナ禍を逆手にとると愛する人には会えないし、遠くで無事を祈るしかない――という歌詞の構造になるのだが、それもまた沁みる。なお初回盤"全訳バイエル"にはもうサブスクリプションで聴けない"Ⅰ."、そして他のプロセスで成長した5つ目のバイエルと言える子どもの合唱による音源が付帯する。
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志磨遼平
ID10+
毛皮のマリーズ時代を含め、メジャー・デビューから10周年となるドレスコーズ志磨遼平の、両バンド(現在ドレスコーズは志磨のひとりプロジェクト)のキャリアを跨いだベスト盤。千両役者かペテン師かカメレオンか、その多彩な音楽性やコンセプチュアルなセンスと豊かな表現力から、彼へのイメージはその時々で変わる。とはいえ、単に身のこなしの軽い奇天烈な才人かとなると、そうは割り切れない。色とりどりなパフォーマンスの真ん中を一筋貫く圧倒的シンボルとしての強さは、私とあなたを繋ぎ、まったく新しい世界へと導いてくれるポップの道そのもの。これは単なるベストではない。2020年4月現在、ここで多くは語らないが、今最も聴かれるべき作品だ。
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ドレスコーズ
ジャズ
前作『平凡』から約2年。ドレスコーズが平成の終わりに"ジプシー(ロマ)"ミュージックを基調としたアルバム『ジャズ』を完成させた。新元号への改元の日にリリースされる本作には、『平凡』とはまた違う悲壮感と希望、そして新時代へ向かう人類に対する愛や祈りが込められた12曲を収録している。壮大なテーマに華やかさを加える梅津和時のブラス・アレンジが志磨遼平の世界観や妖艶な歌声をより引き立たせ、"志磨は新たな時代の幕開けをこう感じるのか"と彼の独特な感性に改めて圧倒される。"人類が滅ぶ時は一瞬ではなく、穏やかなものなのかもしれない"という、制作のきっかけとなった志磨の気づきに共感したくて何度も再生してしまう中毒性に、ドレスコーズらしさを感じる。
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ドレスコーズ
1
9月24日、"ぼくらドレスコーズは4人での活動を終了します。"という衝撃の発表から3ヶ月弱。志磨遼平(Vo)ひとりで作り上げた3rdアルバム『1』がついに解禁される。そもそも、4人で作り上げた最後の作品となった前作『Hippies E.P.』では"ダンス・ミュージックの開放"を標榜し、今までにないドレスコーズを見せてくれたことも印象的だっただけに今作ではどんな変異を見せてくれるのか大きな期待を抱いているかたも多いだろう。そんな様々な期待が込められた今作は伸びやかで、今まで以上に歌を聴かせてくれる作品だった。それはどんな期待にも左右されない確固たる音楽への愛が志磨の中にあるからだろう。その特徴的な声を持って自由に歌うその姿はどこまでも不敵だ。
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ドレスコーズ
the dresscodes
今年7月11日に1stシングル『Trash』でデビューしたばかりのドレスコーズが早くも1stアルバム『the dresscodes』をリリース。再生ボタンを押した瞬間、毛皮のマリーズというバンドを知る人ならばフロントマンは志磨遼平だとわかるだろう。そして、特筆すべきは丸山康太(Gt)、菅大智(Dr)、山中治雄(Ba)、それぞれの演奏力の高さである。ソリッドな弦楽器隊と爆発力のあるドラム。紙資料の"新人バンド"という文字が白々しく見える。新たな頼もしいメンバーと共に新しく歩き始めた志磨。独特な気だるい彼のヴォーカルは健在どころか更に艶を増し伸びやかに響き渡る。バンドは始まったばかり。まだまだ化学変化の途中だ。これからの更なる飛躍が期待される作品である。
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