DISC REVIEW
サ
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それでも世界が続くなら
最低の昨日はきっと死なない
今年の6月、突然メジャー・シーンからのリタイアを発表した彼らのインディーズ復帰第1弾となる今作は、多重録音やクリックを一切使わず、廃カラオケ・ボックスの一室で一発録音されたという。どんなものかと再生した1曲目から、ザラついたノイズの中の悲痛な歌声と、体温や息遣いすら感じる生々しさに圧倒され、思わず息を呑んだ。そのリアルさから、聴き進めることを少しためらってしまった。それでも最後まで聴き終えて、彼らがなぜ誰もが隠したがる自己の弱さや醜さ、そして耐えきれず願う"死にたい"という気持ちを曝け出し、ここまでリアルなサウンドを追求したのかがわかった気がした。もしあなたが自分も他人も信じられなくなったら、この1枚を聴いて欲しい。光すらぼやける淀んだ世界でも、きっとあなたを見つけてくれるから。
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それでも世界が続くなら
もう君はいい人じゃなくていい
私が初めて聴いた彼らの曲はインディーズ2ndアルバム『この世界を僕は許さない』収録曲「スローダウン」だった。"来年の誕生日には死なせて"という歌詞があまりにも痛烈で、頭からかぶったような絶望を忘れられずにいる。あれから彼らはメジャー・デビューを果たし、矢継ぎ早にリリースを重ね、デビューから僅か10ヶ月で4作目となる2ndフル・アルバムをリリースする。"うまくいくからやるんだったら さっさとやめちまえよ"と歌う「優先席」の歌詞に表れているように、実直な彼らの音楽はその辺に転がっている生半可な優しさを振り払って、夢や希望で生きていけなかった人へ嘘偽りのない手で救いを与えてくれる。彼らは彼らにしか鳴らせない音楽で、今日もあなたに手を伸ばす。
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それでも世界が続くなら
この世界を僕は許さない
あまりにインパクトがあり、またそのバンドのイメージが固まってしまいそうなバンド名に真っ向から挑んだ彼ら。傷の舐めあいや奇麗事だけでは救いきれない思いを、何のオブラートもかまさずに歌い、演奏する。前作『彼女の歌はきっと死なない』がほぼノン・プロモーション、タワレコ限定にもかかわらず、オリコンのチャートにランク・インするなど、局地的というには凄まじい勢いで広がっていった彼らの2ndアルバム。音自体はシンプルかつポップさを兼ね備えたギター・サウンドだが、彼らの世界観というのは間違いなく万人受けするものではない。だからこそ万人に聴いて欲しい音だ。人によっては嫌悪感を抱くかもしれないが、“何か”は間違いなく感じ取れるはず。見てみぬふりに慣れてしまった社会に突き刺さる、象徴的な作品。
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それでも尚、未来に媚びる
セミヌード
大阪発ロック・バンド"それでも尚、未来に媚びる"が、TOWER RECORDSと会場限定で2ndシングルをリリース。井地良太(Ba)を迎え、新体制初となる今作は、全曲リード曲と言えるほどに3曲それぞれの色が濃い。「ジパング」の哀愁漂うメロディと言葉を噛みしめるような歌声は、心の痛みを見せつつも、寄り添ってくれるような優しさが滲んでいる。「ディストラクション」では、鬱憤を爆発させるような攻撃的な歌詞と、歪みの効いたアグレッシヴなサウンドが闘争心をかき立てる。「まれびと」は、バンドらしい泥臭さを前面に出したロック・ナンバー。郷愁も感じさせるラストのシンガロング・パートでは、胸に熱いものが込み上げてくる。彼らの激情が詰め込まれた1枚。
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