チェンバー・ポップとゲーム・ミュージック風のシンセが融合したイントロからウキウキさせて、跳ねるビートとホーンがミュージカルを思わせるアレンジでさらに開放的な気持ちを誘う「For You」。透明で突き抜けるタカハシマイのヴォーカルのいいところも満載されている。が、よくよく聴くと"美しい日々は過去のもの"......と最後の最後で分かる歌詞の構造は、武井優心の作家性か。カップリングはかのSEX PISTOLSの「ANARCHY IN THE U.K.」をチェコらしいエッジの効いたシンセ・ポップに大幅アレンジ。八木もタカハシも相当、好き放題のシンセを乗せているのが痛快だ。原曲を知らない人は、この曲そのもののかっこよさを知るのにもいい機会かも。彼らのセンスが凝縮されたシングルに仕上がっている。
ファストなビートにキラキラしたメロディやコーラス、だけどパレードの中にいて虚無を感じてるようなオープニングの「Amazing Parade」からして、音楽的にもメッセージ的にも今のチェコはポップでエクストリーム。打ち込みの気だるいダンス・チューン「Clap Your Hands」はUSインディーと昨今のディスコ・ファンクを彼ら流に消化した印象だし、コラージュ的に配置されるタカハシマイの声も魅力的。また、THE STROKES meets MGMTなセンス溢れる「Hello, My Friend Sophie」、アルバム全体のテーマというか、武井優心の本音が窺える「Changing My Life」など、どこを切っても新しい音楽の海に勇敢に漕ぎ出すこのバンドの心意気が鳴っている。楽しさの中に彼らの切実な思いを見出した時、このアルバムは身近なものになる。
昨年10月にリリースされた1stフル・アルバムも好評なCzecho No Republicから早くも届いた2ndミニ・アルバム。The Mirrazのオープニング・アクトに抜擢されたことで注目を集めた彼らだが、遊び心たっぷりなポップなサウンドと同世代のUSインディとも共振するポジティヴなヴァイブに溢れた音楽性で人気を集めている。今作も勢いそのままにエネルギッシュでキュートな作品だ。シンセが印象的でパワフルなタイトル・トラック「ダイナソー」から楽曲も粒揃い。多彩なリズムの変化もさることながら、巧みなコーラス・ワーク、そしてソングライティングもさらに磨きがかかった印象。より多くの音楽ファンに聴いてもらいたい作品だ。