Japanese
ももすももす
Skream! マガジン 2024年01月号掲載
2023.12.19 @下北沢SHELTER
Writer : 山田 いつき Photographer:高野玲
ももすももすが、4年ぶりとなるワンマン・ライヴ"黒猫会議"を12月19日に下北沢SHELTERにて開催した。11月末に発売されたばかりの2ndアルバム『白猫浪漫』を引っ提げたこの公演では、奇想天外でカオティック、予測不能なももすももすワールド全開のステージが繰り広げられた。
人間生活の課程をすべて修めたももすが黒猫(の被り物をしたスーツ姿の人間)から卒業証書を授与される寸劇でライヴはスタート。角帽にアカデミック・ガウンという出で立ちのももすとスーツ姿の黒猫のツーショットはすでにカオスだ。人間じゃない生き物として生きられることに喜ぶのも束の間、黒猫の意味不明な言動に恐怖を覚え、ステージから逃げ出してしまうももす。かくして彼女が行き着いたのは、音楽を聴きながら何かについて真剣に語り合う猫たちが集う場所だった――。
オープニングSEが流れ、ももすと黒の猫耳カチューシャをつけたサポート・メンバーたちが登場。「アネクドット」で勢い良くスタートを切ると、続く「サーモクライン」、「桜の刺繍」で着実に場内の熱量を高めていく。本編のMCは一切なし。その代わりに事前録音されたももすのナレーションで各ブロックを繋いでいく構成だ。ここで黒猫たちが地球を脱出しようと会議をしていること、またその会議の名前が本公演のライヴ・タイトル"黒猫会議"であることが明かされる。そして、アルバム『白猫浪漫』のオープニングを飾る「十二単と猫と宇宙。」で演奏が再開。心地よいメロウなグルーヴで観客の身体を揺らし、続く「6を撫でる」ではアッパーなギター・ロックを響かせる。一転して「ねんねこねんね」ではサビに登場する"す"と"ゆ"の文字が書かれた団扇(猫の顔の形!)を振りながらかわいらしく歌唱するなど、楽曲ごとに表情を変えていくステージにこちらも翻弄されっぱなし。
次のインタールードでは、ももすが黒猫にさらわれてしまうというまさかの展開に。"仕方ないので、ここで黒猫に囚われながらメンバー紹介をさせていただきます"というナレーションと共にメンバー紹介が進行していく。その間に衣装チェンジを終えたももすがステージに再登場。自分をさらった黒猫に恋をしてしまったことを明かし、ミディアム・テンポのラヴ・ソング「宵待花」に繋げる。こういった黒猫への募る想いは「シャボン」でも歌われており、アルバム『白猫浪漫』のみならず、前作『彗星吟遊』の収録曲も"黒猫会議"にとって重要なファクターであることがわかる。一見すると奇抜なプロットだが、それすらも純文学の香りが漂う物語へと昇華させてしまうのが、彼女の音楽が持つ力なのだろう。
さて、ライヴはいよいよ終盤戦へ。地球を抜け出して月へと向かう支度を始めた黒猫たち。どうやらももすも黒猫たちについて行くことにしたようだ。昔の恋人のこと、もう連絡がつかなくなった友人のこと......後ろ髪を引かれる思いもありつつ、地球を離れる決心をした彼女。"黒猫はまっすぐ前を向いている。もうすぐ出発だ"という力強いナレーションから「怪傑ヒロイン☆」へ。ももすは虹色に発光するおもちゃの光線銃を片手に、オーディエンスのハンドクラップを誘う。泣きのギター・ソロが炸裂した「プルシアンブルー」でフロアを揺らし、本編ラストは"ごめんね好きだよ死ぬまで好きだよ"と叫ぶストレートなロック・チューン「隕石」を投下。演奏後、会場からは大きな拍手と歓声が沸き起こった。
鳴りやまない拍手に応えて始まったアンコール。MCなしで本編を駆け抜けたももすが、"ももすは電車に乗るのも怖いし、人と話すのも怖いし、すべて怖いんだけど、こんなにみんなが来てくれて、こんなところで歌えるなんて奇跡みたいだなと思ってます、ありがとう!"と感謝を述べた。そして、"黒猫会議"の追加公演に加え、2017年に解散したロック・バンド"メランコリック写楽"として3月に解散ライヴを行うことを発表。解散ライヴのタイトルは"やさしい火星移住"。地球を飛び出したももすの物語はまだまだ続きそうだ。
[Setlist]
1. アネクドット
2. サーモクライン
3. 桜の刺繍
4. 十二単と猫と宇宙。
5. 6を撫でる
6. シクラメン
7. ねんねこねんね
8. 宵待花
9. 曖昧模糊
10. ハネムーン
11. 植物戦争
12. シャボン
13. 火星よ、こんにちは
14. UKINE
15. 怪傑ヒロイン☆
16. プルシアンブルー
17. まともじゃないのがちょうどいいの
18. 隕石
En1. 猫とメリケンサック
En2. エソア
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