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LIVE REPORT

Japanese

This is LAST

Skream! マガジン 2022年04月号掲載

2022.03.13 @EX THEATER ROPPONGI

Writer 秦 理絵 Photo by Masanori Fujikawa

"自分よりも大切にしたいものはありますか? 俺はあります。This is LASTは俺の人生です。俺の人生はりう(りうせい/Ba)とてる(鹿又輝直/Dr)にあげました"。この日のステージで、菊池陽報(Vo/Gt)が放った言葉のひとつひとつには揺るぎない覚悟が込められていた。あなたの涙に寄り添うヒーローのようなバンドでありたい。それは軽々しく口にしたものではなかったはずだ。バンド結成から約4年。今だからこそ言える決意表明だったのだろう。
This is LASTが今年2月にリリースした2ndシングル『いつか君が大人になった時に』を引っ提げて開催した東名阪ツアー"恋愛ってたいていサドンデス方式ツアー"のファイナルとなったEX THEATER ROPPONGIだ。

ステージ前面に張られた紗幕の奥にメンバーが登場した。1曲目の「愛憎」は陽報のギターと歌声で始まった。バサッと幕が落とされ、一気に会場に響き渡る爆音のバンド・サウンド。天井から伸びる3本のピンスポットが、陽報、りうせい、鹿又輝直の3人を煌々と照らす。"始まったぜ、東京! 努力や悲しみ、あなたのすべてが報われるようにしようぜ!"。陽報の開会宣言を合図に突入した「プルメリア」では、りうせいが重心を低く落として小刻みにベースをかき鳴らし、「囘想列車」では輝直が軽快なツービートを叩き出した。"忘れたくない大切な思い出を歌います"と、祝祭感のあるアンサンブルに、"君"への切ない想いを綴った「ベイビー」へ。デビュー以来、陽報の作る楽曲は失恋の未練や2番目の男の悲哀など、決して幸せになれないラヴ・ソングが大半だが、その痛みは音楽になることで美しく浄化されていく。

MCでは、今回のツアーの大阪公演でたこ焼きを食べたことから、新しいたこやきの中身を考えたいと切り出したりうせい。輝直が"生クリームとジャムでデザート風に"と提案すると、陽報も"バス・グッズみたいにおもちゃを入れたら楽しいんじゃない?"と悪戯っぽく乗っかる。さらに、りうせいは"バーミヤンのラーメンを入れたい"と妄想を膨らませ、会場の笑いを誘った。たわいないトークで会場を和ませると、陽報が"あなたが流してきた涙が無駄じゃなかったことを証明してみせよう"と言い放ち、ネット上に蔓延るネガティヴな感情を吹っ飛ばす「ルーマーをぶっ壊せ」になだれ込んだ。真っ赤なライティングがスリリングな楽曲の世界観を煽ったマイナー調のロック・ナンバー「黒く踊る」、瑞々しいギターのアルペジオに楽器がひとつずつ重なっていく「ひどい癖」、救いようのない混沌とした感情を代弁するようにりうせいのベース・ラインが唸りをあげた「艶麗」。中盤は3ピースのバンド・サウンドにこだわり、そのベーシックな編成で豊かなバンド・アンサンブルを構築するThis is LASTの幅広い手腕が浮き彫りになった。

終盤、陽報がギターをかき鳴らしながら語り掛けた。"俺もめっちゃしんどいことがあります。きっとあなたもそういう日々の中で生きてるんでしょ? 笑っているやつだって、絶対に裏では泣いてるし、悔しい想いをしてる。あなたの心に触れたいです。あなたが負けそうなとき、あなたがどうしようもなく涙が出るとき、あなたのそばで鳴らすことをやめません"。時折、感極まったように声を震わせながら伝えると、最後に"はっきり言います。俺はあなたにとってのロック・スターだし、あなたにとってのヒーローみたいな存在だと思っています"と覚悟を込めて言い切った。気がつくと、りうせいも、輝直も、何度も涙を拭っていた。言葉と歌とで集まったお客さんにまっすぐな想いをぶつけたライヴのクライマックス。満天の星空の下で届けたバラード曲「いつか君が大人になった時に」では、"この音楽があなたの幸せに寄り添えますように"と言い添えると、最後は「殺文句」で終演。疾走するバンド・サウンドの中で、陽報が"アーッ!"と言葉にならない叫び声を上げた。それはThis is LASTの始まりの曲であり、これまで何度もライヴで聴いてきた曲だったが、バンド史上最大キャパの会場で鳴らしたこの日はこれまでで一番かっこいい「殺文句」だった。

アンコールは、輝直が繰り出すビートに合わせて男女に別れたハンド・クラップで遊んだ「勘弁してくれ」と、息の合った合いの手が決まった「オムライス」という、This is LASTの楽曲の中でも、とりわけ陽気で朗らかな2曲を、お客さんと一緒に鳴らして幕を閉じた。一度退場したメンバーだったが、"写真撮影を忘れた!"とすぐにステージに戻ってきた。そして、"これじゃあ締まらないから、もう1曲やっていいですか?"(陽報)と問い掛けると、急遽メンバー同士で話し合い、ネガティヴな気分をポジティヴに転換するような「病んでるくらいがちょうどいいね」で、今度こそ本当にライヴを締めくくった。その晴れやかな終演を目の当たりにして、『いつか君が大人になった時に』のインタビュー(※2022年2月号掲載)で、メンバーが何度も"ロック・バンドでありたい"と言っていたことを思い出した。ロック・バンドとは何か。その解釈は人によっていろいろあるだろうが、私は生きる力をくれるバンドのことだと思っている。悲しみに寄り添い、現実に立ち向かう勇気をくれるバンド。This is LASTは今間違いなくそういう道を歩み始めている。

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