Japanese
神はサイコロを振らない / climbgrow
Skream! マガジン 2018年08月号掲載
2018.06.22 @下北沢LIVEHOLIC
Writer 沖 さやこ
滋賀と福岡の若手4ピースが激突。先攻、滋賀のclimbgrowはまず杉野泰誠(Vo/Gt)が"やろうぜ下北沢! 俺がやりてぇのはしょうもねぇライヴなんかじゃねぇんだよ。ヤベぇ東京一の、日本一のライヴしに来ました!"と景気づけし、「極彩色の夜へ」でステージの幕を開けた。「RAIN」では杉野がハンドマイクでフロアに飛び込み、その状態のまま歌い出す。彼のパフォーマンスはひたすらに前のめりの絶唱。楽器隊の的確で手堅い演奏は飛び道具のような杉野のヴォーカルの発射台のようだ。「風夜更け」で杉野は絶叫しながら言葉をまくし立て、「ROCK'N'ROLL IS NOT DEAD」ではコール&レスポンスを交えて、荒々しく堂々とライヴを展開していく。
"3周年、呼んでくれて本当にありがとうございます。バチバチにアツいライヴやりに来たんだよ!"と杉野が叫び、「mold Hi」、「Landscape」と畳み掛ける。落ち着いた様子ながらも1音1音に熱を迸らせ、ドラマチックに展開するサウンドスケープ。特に「ラスガノ」で蠢く焦燥感の鮮やかさは格別だった。
「SCARLET」、「FENCE」と硬派なロックンロール・ナンバーを奏で、「KLAXON」ではバンドの持つセンチメンタリズムを音へと昇華していく。杉野が"俺らなりの愛をぶち込みに来た"と言い「街へ」を披露。孤独を感じさせる静寂で幕を開けるスロー・ナンバーは、少しずつスケール感と力強さを増していった。杉野が"あんたがどう思おうと、あんたがどう生きようと、俺は知ったこっちゃねぇ。でも俺らのライヴに来て手ぶらでは帰らせねぇ。全部俺に預けてくれ"と言い「POODLE」のサビを弾き語りで歌い始めると、フロアからは拳が上がる。青い感傷が熱を持って駆け出し、その空気を保ったまま最後に「叫んだ歌」を届け、華やかにステージを締めくくった。
後攻、福岡の神はサイコロを振らないはセッティングを終えると荘厳な音色で会場を染め、「白に融ける」でライヴをスタートさせた。柳田周作(Vo)が"あなたたちの心臓を刺しに来ました"と告げると「極彩」へ。そのあとの「映幻日」では激しく音をかき鳴らす。神はサイコロを振らないもLIVEHOLICと同じく6月9日に3周年を迎えたと話す柳田。下北沢にまつわる話題に花を咲かせたあとは、彼のMCにバンドの音が重なり「凪」へ繋いでいく。曲間の繋ぎから音色といった細やかなところまで意志が通った、ストーリーに色をつけていくようなライヴ。柳田の声遣いや一挙手一投足も含め、透明感のある演劇を観ているようだ。
彼らの紡ぐストーリーはさらにディープに。「煌々と輝く」、「甘い水」、「blood」と楽曲ごとにシーンを鮮やかに変えていき、プログラミング音とバンド演奏をバランス良く取り入れたミディアム・ナンバー「フラクタル」へと繋ぐ。観客も彼らが描く耽美なストーリーに身を委ね、想いを寄せていた。
夏の自主企画ツアー"神はサイコロを振らない presents.「鹹水と淡水」"の告知をしたあと、柳田がギターを鳴らしながらこれまでのバンド人生を振り返る。"俺を暗闇のどん底から引きずり上げてくれるのはいつだって音楽でした。あなたにとってヒーローであるバンドのように、俺もあなたの一部になりたい"と呼び掛けると、最後に"俺たちはこの場所で音楽を、魂を叫び続ける。悲しみも苦しみも怒りも絶望も全部ここに置いていけ"と叫び、バンドの代表曲のひとつ「秋明菊」へとなだれ込む。"最後に僕らの心臓を渡して帰ります"と言い残し、ラストは壮大なバラード「flower」。映画のエンドロールのような感動のフィナーレだった。
- 1