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LIVE REPORT

Japanese

チリヌルヲワカ

Skream! マガジン 2018年09月号掲載

2018.07.22 @代官山UNIT

Writer 岡本 貴之

"私は、音楽でたくさんの人が少しでも楽しくなれたらって願っています"。ド迫力の演奏とは対照的なアンコールでユウ(Gt/Vo)が送った、心温まるメッセージ。悲しいニュースが多い日常で、ロックがそこにある理由を教えてくれたひと言だった。

9枚目のアルバム『ノンフィクション』を携えてのツアー"チリヌルヲワカLiveTour2018 -ノンフィクション-"のファイナル公演は、ちょうど1年前のツアー・ファイナルと同じ7月22日に、今年は代官山UNITで行われた。

土着的なSEが流れるなか、イワイエイキチ(Ba)がリフを弾き、阿部耕作(Dr)がリズムを刻むと、シンプルな白いTシャツ姿のユウがトレードマークのブルーのテレキャスターをかき鳴らして、『ノンフィクション』収録曲からの「エレメント」でライヴが始まった。重たいリズム隊の演奏と、ユウが奏でる鋭いギター、サビのファルセットが好対照な「陰日向」、ユウが間奏で不協和音をエモーショナルに鳴らした「ヒトダカラ」と、激情に任せて突っ走る爽快なオープニングだ。

"ツアー・ファイナルです! みんな悔いのないように、最後までお付き合いお願いします!"ユウの短い挨拶を挟んで、「松の木藤の花」からさらにパワフルな演奏が続く。リズムが目まぐるしく変わるこの曲では、ユウがお立ち台に上がりギター・ソロを弾くと、観客は右腕を振り上げて後押し。続く「作りかけの歌」でも、サビで阿部が叩く重たいバスドラの四つ打ちが興奮を煽る。いわゆるダンス・ロックではない、ヘヴィなサウンドのなかでの四つ打ちだ。

サイケな「逆光」に続いて披露されたのは、ニュー・アルバムからの「極楽浄土」。阿部のドラムからイワイのベース、ユウのエフェクターをかけたギターが続く、セッション風な始まりから、ユウがファンキーなイントロへ。これまでのチリヌルヲワカのイメージを一変させる楽曲だけに、先ほどまでの拳を振り上げるファンたちの反応もそれまでと違う。じっとステージを見つめながら身体を揺らしていた。そのあとの「姫事」、「みずいろの恋」では飛び跳ねて踊る者続出。セカンド・ラインのリズムでギュッと引き締まったサウンドを聴かせた「馴レ初メ」など、楽曲の幅広さを感じさせるセクションだった。

メンバー紹介でそれぞれがプレイを披露したあと、阿部とイワイはともに"ツアー・ファイナルを無事に迎えられて良かった"とコメント。ユウは、イワイが所属するバンド THE PRIMALSにゲスト・ヴォーカルとして参加していたため、そちらのライヴがツアーと重なった期間があり、怒濤のツアーだったと振り返った。そんなユウのヴォーカルで、この日最も印象的だったのが、アルバムの真髄とも言える「ある人生」。"これはすべて実話に基づいた物語/とある女の人生にまつわる話"と、切々と自らを語るように歌い上げる姿に、自分を重ね合わせて聴いていた人もいたのではないだろうか。

ド迫力のアンサンブルを聴かせた「ホワイトホール」でいったんステージを降りた3人は、お揃いのTシャツでアンコールに登場。

"今回のツアーでは、いろんな地方に行きましたけど、その間にいろんなところで災害があったり、悲しいニュースもありました。私は、音楽でたくさんの人が少しでも楽しくなれたらって願っています"。

そんなユウのメッセージから歌われたのは、「念じる」。続く「ヨスガ」では、間奏でブレイクしてそれぞれがソロで魅せ、終盤では阿部が椅子から立ち上がってプレイするほどヒート・アップした演奏となった。バンドがステージを去り、会場にはBGMが流れ出したものの、鳴り止まぬ拍手に応えてダブル・アンコールへ。「天邪鬼」で爆音を叩きつけてツアー・ファイナルはエンディングを迎えた。

アルバムごとにリリース・ツアーを行い、研ぎ澄まされ、一体感を増した演奏を聴かせているチリヌルヲワカ。特に後半で披露された「it」、「空想都市」、「シーホース」あたりは、一進一退の白熱したスリリングさが際立っており、ライヴ・バンドの面目躍如だった。そのサウンドは、円熟とは真逆な印象で、どんどんバンドは若返っているような気がした。

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