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LIVE REPORT

Japanese

チリヌルヲワカ

Skream! マガジン 2016年09月号掲載

2016.07.26 @渋谷CLUB QUATTRO

Writer 岡本 貴之

毎年恒例となっているチリヌルヲワカの渋谷CLUB QUATTROでのワンマン・ライヴ。今回は5月13日に発売された通算7枚目のアルバム『ShowTime』のリリース・ワンマン・ツアー"チリヌルヲワカLiveTour2016 -ShowTime-"のファイナル公演として行われた。
10都市を巡る今回のツアーでは、各会場ごとにオリジナルSEが用意されており、この日フロアで鳴っていたスペーシーなSEは"月面着陸"というタイトルであることをライヴ中盤にユウ(Gt/Vo)が発表していた。同ツアーで使用したSEは、バンドのメルマガを登録することにより全曲ダウンロードができること、中にはユウが作った曲だけでなく、イワイエイキチ(Ba)と阿部耕作(Dr)が作ったSEもあることが告げられた。(※後日配信されたメルマガによると「林森林(はやしもりはやし)」、「イワイエイキチSE」といったユニークなタイトルが並んでいた)ライヴ会場に足を運ぶファンへ向けた遊び心あるサービス精神からバンドの充実ぶりが窺える。

フィードバック・ノイズから豪快に掻き鳴らされるユウのギターが一気に不穏な空気を生み出すインスト曲「ブラックホール」でライヴはスタート。この日は"コスモ推し"といった様相で、ユウの衣装は宇宙空間がデザインされているようだ。コーラスと土着的なリズムが不思議な空間を生み出し「ホワイトホール」へ。右手を上げて声を上げる観客の盛り上がりは、まるでバンドの演奏を追い越してしまいそうなほどの勢いだ。青いエスクワイヤーからソロを繰り出しながら、フロアを見渡すユウ。「苔の生したこんな代は」では、イワイのベースとユウのフレーズが交互に繰り出され、阿部のドラム・ソロに大歓声が起こった。

"ツアー・ファイナル、ド平日にたくさん来てくれてありがとうございます!"とユウが言ったように、月末の平日にもかかわらずギッシリ満員だ。「咲かぬなら」では、ユウが中盤で聴かせた短いながらもオリエンタルなフレーズがカオティックな曲をさらに加速させた。パンキッシュな「作りかけの歌」、強靭さを感じさせた「ヒトダカラ」へと続く。ギターを掲げるユウの姿は貫禄すら漂っており、3人編成となって初のツアーで得た自信を覗かせた。新作からの「=0」では一節ごとに登りつめるような歌メロと呼応するダンサブルなリズム、呪文のようなサビのリフレインが印象的。オリエンタルなリフが曲を引っ張る「秘密の部屋」はサビの歌詞がきれいに耳に入ってくる歌心ある演奏。終盤でスカ調にリズムが変化すると、観客はすぐさま反応するノリのよさ。そして、「アヲアヲ」へ。力強くきれいなメロディと誰もが自分に置き換えることのできる歌詞を、じっと噛みしめるように聴き入る観客の姿も多く、改めていい曲だと感じた。

MCでは時節柄"Pokémon GO"の話題にも触れて笑いを誘いつつ、"3人になって初めてのツアー、みなさんに感謝したいです"とユウの言葉に大きな拍手が起こり、ライヴは後半へ。ニュー・アルバムの表題曲「ショウタイム」ではピック弾きでダウンビートを強調したイワイのベースが曲を引っ張る。新作の中でも演奏とメロディ、歌詞の面白さが楽しめる「ヤミとクモ」も演奏され、間奏ではユウの不協和音的なフレーズが絶妙な不気味さを表していた。エキサイトする観客たちを前に、センターでお立ち台に上がり赤い照明の中、ギターを構え不敵な表情で仁王立ちするユウ。スポットライトを浴びて鳴らしたイントロは、「天邪鬼」。最高にカッコいいシーンだった。儚さを感じさせる特徴的な旋律が際立つ本編ラストの「みずいろの恋」を終える。

アンコールではお揃いの新作Tシャツに着替えて登場。『ShowTime』限定盤の購入者抽選を行い、ユウがドラム・ロールを披露する場面も。"ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン"第9話のエンディング・テーマとして書き下ろされた新曲「怒りの筆先」を披露し、焦らしまくってからの機関銃のような強烈なギター・リフを弾きだす「シーホース」が始まると、会場はリフに合わせて拳を突き上げ爆発的に盛り上がった。さらにダブル・アンコールではイワイとユウが向かい合いイントロを奏でて2ndアルバム『白穴』より「姫事」を披露。飛び跳ねて一緒に歌う観客たちと一体になり、ツアー・ファイナルに相応しい多幸感に満ちたムードの中でエンディングを迎えた。

百戦錬磨のプレイヤーが揃っているからこそ、というのはもちろんだが、迫力と軽やかさ、緊張と緩和を人力でコントロールしながらライヴを進めて行く様子を感じていると、今回のツアーを経てさらにバンドの息が合ってきていることがハッキリとわかった。つくづく、バンドとは生き物なのだなということを感じさせられると共に、早くもチリヌルヲワカの次なる展開が楽しみになった。

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