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LIVE REPORT

Japanese

Ivy to Fraudulent Game

Skream! マガジン 2017年08月号掲載

2017.07.09 @LIQUIDROOM ebisu

Writer 蜂須賀 ちなみ

[喉を枯らしても叫んでいくんだよ/あの日と変わらぬ絶望の"望"を]

この日ラストに演奏されたのは「青二才」。彼ら自身は今回のような展開を望んでいなかったと思うが、本調子ではないにもかかわらず最後まで全身全霊で歌声を奮わせた寺口宣明(Gt/Vo)を始め、バンドがずっと歌い続けてきたことをそのまま体現する4人の姿はあまりにも美しかった。メンバーはもちろん悔しさも感じているだろうが、"23歳、現在! 誇りを持って真ん中に立ってます。ここに来たときだけ、俺たちの目の前にいるときだけ、今だけは大丈夫だよって言ってあげる。だから、必ず幸せになろう、俺もお前も"と寺口も語っていたように、バンドの中に残ったのは苦い記憶だけではなかったはずだ。だからこそ、来るリベンジの日のために、あの日の出来事をここにしっかり記しておきたいと思う。

2ndミニ・アルバム『継ぐ』のリリースを記念した全国ツアー。東京でのワンマン・ライヴに関して言うと、吉祥寺WARP→渋谷TSUTAYA O-Crest→渋谷TSUTAYA O-WEST→渋谷CLUB QUATTROと着々とキャパシティを大きくさせていたところだったが、この日の会場は恵比寿LIQUIDROOM。バンドが上り調子であることを示すように、さらに大きなステージがツアー・ファイナルに際して用意されていた。約800人が待ちわびるなか、ステージに現れた4人がまず鳴らしたのは、「!」、そして「夢想家」という『継ぐ』の後半に収録されていた2曲。同期やコーラス、そしてバンド・サウンドによるハーモニーを丁寧に見せることによって、音楽の森の奥深くへ、オーディエンスの手を取り、導いていくような展開だ。しかしここで一転、これまでの空気を切り裂くような寺口のカッティングを機に、4人の音が堰を切ったように溢れ出す。静寂と激情を行き来するようなサウンドを前に、オーディエンスも一気に白熱していったのだった。

スペシャアプリで生配信されていることもお構いなしにギリギリアウトの発言を連発するMCと、目を離す隙すら与えないようなバンドの演奏のコントラストといい、前半戦に関してはいつもの調子だった。というかむしろ、4人の演奏はこのツアーでの成長を存分に伝えてくれるものだった、と言う方が正しいだろう。特に中盤で披露された「E.G.B.A.」はIvy to Fraudulent Game流のスタジアム・ロックと呼べるほど、ドッシリとした存在感のある仕上がりになっていて、オーディエンスが力強く拳を掲げる光景が、もっと大きくなっていく未来を想像せずにはいられなかったのだ。

変化が表れたのは11曲目「error」のときだった。ほぼアカペラ状態である同曲冒頭、ファルセットが上手く出なかった寺口が"ごめんな、ちょっと力貸してください"と語り掛け、それに応えるようにしてオーディエンスが歌い始めたのだ。"情けないけど、俺は幸せ者だ!"と感謝を伝えたあと、"音楽は勝負! 今だって勝負! 声が出なくたって勝負! 負ける気がしねぇ"と自らを鼓舞するように寺口は叫ぶ。言ってしまえばバンドにとっては窮地と言える状況だが、しかし彼らは、ここで折れなかった。

ステージの真ん中に立つ彼のことを誰よりも信頼しているからだろう。福島由也(Dr)、カワイリョウタロウ(Ba)、大島知起(Gt)はその手を緩めることなど一切せず、バンドのサウンドは熱量を増していくばかり。また、絶叫を繰り返しながら歌い進めていく寺口も凄まじい気迫を纏っていった。「アイドル」にて、先ほどまで出なかった高音域を寺口が完璧に出し切った場面は彼が自分自身に打ち克ったことを明確に証明していたし、そうしてまたひとつ強くなっていくフロントマンの姿を見逃さぬよう、大島やカワイがステージの内側を向きながら、彼の呼吸を読み取るように演奏していたのも印象に残っている。この日発表されたように、今冬メジャー・デビューするIvy to Fraudulent Game。新たな出発点に立ったこのタイミングで、10代のころから共に歩んできた4人の絆を確かめるようなライヴができたことは、バンドにとってのかけがえのない財産となっていくことだろう。

"ステージの真ん中で偉そうに歌ってるけど、誇れるものなんてなかった。音楽があるから、バンドがあるからって、すべてから逃げてきました"とも話していた寺口。しかし今の彼にとって音楽が逃げ道などではないのだということは、彼自身が身をもって実感しているはずだ。泥臭く生きる人間の生き様を、何よりも美しく轟かせながら、Ivy to Fraudulent Gameは進んでいく。己を飛び越え、打ち克つために。光に照らされ4人の姿が深紅に染まるなか、"We are Rock'n'roll Band!!"という寺口の叫びが高らかに響きわたったのだった。

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