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LIVE REPORT

Japanese

SpecialThanks

Skream! マガジン 2015年12月号掲載

2015.11.01 @下北沢GARDEN

Writer 蜂須賀 ちなみ

全国11ヶ所を巡る全国ツアーのセミ・ファイナル、"SpecialThanks『missa』release tour -ONEMAN LIVE-"。開演予定時刻を少し過ぎたころ、ステージを隠す幕を堂々と突き抜けながら、Misaki(Vo/Gt)の歌声がフロアに届けられる。幕が開くと堰を切ったかのように活き活きと溢れ出すバンドのサウンド。"Welcome to the special day"と繰り返される1曲目「SpecialDay」がこの夜の充実を約束してくれた。
 
威勢よく挨拶を挟みながら、元気印アッパー・チューンを連投していく4人。「Straight Edge」、「Hey!you!」と冒頭3曲は2ndフル・アルバム『missa』の曲順通りだったが、「YOU=MUSIC I LOVE」(1stフル・アルバム『SEVEN LOVERS』収録)、「ONE WEEK」(2ndミニ・アルバム『SEVEN SHOWERS』収録)など、他作品からの楽曲も惜しみなく披露された。時にはステージ前方に走り込みながら心底楽しそうな表情で演奏するHiromu(Ba/Cho)。MCでのおっとりとした喋り口調とは裏腹に、パワフルなビートでバンドとオーディエンスを引っ張るのはJunpei(Dr/Cho)。クラウドサーフやモッシュでぐちゃぐちゃ状態のフロアを笑顔で眺めるHeisuke(Gt/Cho)は、熱量溢れるソロ・プレイで歓声を集めていく。そして目を見張るべきはやはりMisakiの歌声。ツアーの鍛錬の成果と、メンバーを変えながらもここまで続いてきた"SpecialThanks"というバンドを守ってきた彼女の凛々しさと。その両方がエネルギーとなり、歌声は会場の空気をビリビリと震わせる。もちろんSpecialThanksのライヴは"楽しい"のだが、それだけではなく、各メンバーのキャラクターがバンドの音の中にぎっしり詰まっている。いや、むしろ溢れ出しまくっていることも魅力のひとつ。だからこそ、オーディエンスひとりひとりのハートにダイレクトに響くし、フロアからは男女問わず雄叫びや歓声があがっていた。こうしてあっという間に蒸し暑くなった会場。2時間半で計31曲(アンコール、ダブル・アンコールを含む)を演奏する爆裂ライヴだったのだが、セットリストの3分の1にも達していない時点で、この日ニットを着てきた筆者は、心の底から後悔。
 
ハンドマイクを手にステージ上を歩きまわりながら、フロアに浮かぶ顔ひとつひとつを見つめるMisakiの姿が印象的だったのは、"ひとりじゃないんだよ"というメッセージを込めた曲だという「feel your life」。続けて、『missa』にも収録されていたPERSONZのカバー「7COLORS」。"SpecialThanksの曲って元気出るよねー!"というMisakiの無邪気な言葉や、メンバー同士が顔を見合わせ笑いあいながら演奏する場面が多かったことなどから、今のバンドの風通しの良さが感じられた前半戦は、この2曲で締めくくられた。そして後半戦ではゲストが続々と登場! 「Marguerite」ではサルーン a.k.a. 真田太洋(NUDGE'EM ALL / big the grape)と古閑裕(KOGA RECORDS / ROCKET K)、「ロックンロールダンス」では今年3月にスプリット・アルバムをリリースした仲であるMIX MARKETから YUTTy(Vo)とDAISUKE UDAGAWA(Gt)、KOTA(Gt)がステージに呼び込まれる。さらに「I don't know」、「Mr. DONUT」ではKEYTALKの小野武正(Gt/MC/Cho)とHeisukeのツイン・ギターがオーディエンスの心を昂らせた。上昇を続ける会場のテンションを目の前に、"本当に疲れてないですか? ......スゲー!"とJunpeiが驚くのも無理もない。Heisukeは"本番3分前に鼻血ブーしました"と開演前から自身も興奮状態にあったことを暴露しながらも、"幕が開いたらこんな景色が待っていて、感動で泣きそうになりました"と語っていた。そして本編を締め括ったのは「Love begets love」。SpecialThanksには珍しい日本語詞で、"生(せい)"を全身で肯定するこの曲は、"昔とは違って、自分の楽しいのためだけにやるのはやめたんです"と語る今の彼女にとって、いや、このバンドにとって等身大の歌なのであろう。"愛が愛を生む"という言葉は、この曲が目の前のオーディエンスに届けられたこの日にもピッタリだなと、音のぬくもりに包まれながら感じたのだった。

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