Overseas
MUTEMATH|SUMMER SONIC 2011
2011.08.13 @QVCマリンフィールド&幕張メッセ
Writer 島根 希実
何の前触れも、予兆もなく始まったようだった。まるで、あっという間にステージは完成してしまったとでもいうように。
各パートごとに、不意に鳴らし始めた音が、気がつけば幾重にも折り重なっていた。そして、Paul(Vo)が先導しフロアに手拍子を起こすと、瞬く間にそのクラップも彼らの演奏の一端を担うリズムの一部として取り込まれていく。初めからもう、MUTEMATHの強固なリズム・セクションは会場を席巻してしまった。一度打ち鳴らされたならば、もう止まらないという気すらしてくる、押しよせてくる音とリズムの嵐。強く、しかしその音の厚みが尋常ではない。彼らのステージは、一見すると、その風貌のように紳士的でありながら、一度演奏が始まると“強靭な肉体”を身に纏ったかの如く、全ての音が幾重にも重なり攻め入ってくる。
1曲目は「Prytania」。真っ青なステージ・ライトに照らされ、夏を忘れるほどのスリルをはらんだ演奏はムーディかつグルーヴィー。そのままPaulが身を捩ってセクシーに歌う「Heads Up」で会場はさらにアーバンに。「Reset」のイントロが鳴った途端、子供のように無邪気な歓声が上がる。
そして、フロアに魔法のように作用する、確かな演奏力によってさらに深く空間が演出されていく。華やかに、より危険な臭いを香らせる「Odd Soul」。10月発売のニュー・アルバムのタイトル・トラックだ。更にここからもう2曲、「Allies」、「One More」と3曲立て続けに披露すると、フロアはもう、そのセクシーな息遣いにのぼせそうだ。
しかしながら、この情熱の嵐と怒涛のアンサンブルは終わらない。疼くようなセクシャルな熱気を蔓延させた「Typical」。熱気の中で、ますます密度と熱気、全ての圧が高まっていく。「Spotlight」なんて、もう過呼吸寸前だ。皆じっとりと汗をかいている。しかし、ひたすらに踊る。この熱帯夜は、そのままラスト「Quarantine」まで全てのエネルギーを上げ続けた。これぞ圧巻。MUTEMATH、ライヴ・バンドの異名に偽りなしだ。オーディエンスの賛辞を捧げるような大喝采もそれを物語っていた。
- 1
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
ASP
Skream! 2024年09月号