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LIVE REPORT

Japanese

THE BACK HORN

2011.07.23 @日比谷野音

Writer 山田 美央

やはりTHE BACK HORNこそ、本当に音と向き合えるアーティストなのだ。第2回夕焼け目撃者に足を運んでみて、そう実感した。

7年ぶりに日比谷野音でのスペシャル・ワンマンライヴを行ったTHE BACK HORN。「7年も歳月が経っていたのか」という感慨と、「7年も前に野音でワンマンを行ったのか」という驚嘆の入り混じった感情が沸き起こる中、メンバーの登場を見守った。都会に位置する夏の野音特有のもったりとした生ぬるい空気が漂う中、定刻通りにSEが鳴り響く。ざわざわとしていた会場は、瞬く間に怒号にも近い歓喜の声に飲み込まれていった。怒号にも近い歓声に迎えられ、4人はいつものように飄々とステージに姿を現した。いつもよりも昂りを見せるオーディエンス。気候もよく、音が溶け込んでいく野音に、すでにこの時から酔わされていたのかもしれない。

この日のステージは、激情的に暴れる楽曲と穏やかに染みいる楽曲が入り乱れ、神経を高ぶらせるような時間が続いた。叩きつけるように重厚なサウンドが迫る「レクイエム」で始まり、菅波栄純(Gt.)の緊張感あるギターが、ぐいぐいと引き込んでいく。勢いがあるメロディと山田将司(Vo.)の澄んだ歌声が溶け合う「蛍」へと続き、一気に体中が支配されていった。そのまま山田のシャウトを合図に、「涙がこぼれたら」になだれ込み、「アポトーシス」、「セレナーデ」、「羽衣」と次々と息つく間もなく繰り出される楽曲に、野音の解放感溢れる空気が爆音に染められていく。マニアックヘヴン並みのセットリストに、ため息がこぼれた人も多いはずだ。実に、ずるい。

妖艶な物語を紡ぐ「舞姫」、純粋すぎる狂気がにじみ出た「ジョーカー」。山田のヴォーカリストとしての振れ幅の広さに、いつものことながら驚かされる。「墓石フィーバー」では、真っ赤に燃えるライトの中、ぶっ飛んだ歌詞が炸裂。気がふれたようにステージを駆けずり回る山田は、「えーじゃないか、えーじゃないか」とステージ後方の巨大な幕を指差す。菅波がひたすらにギターを掻き毟り音とぶつかり合えば、岡峰光舟(Ba.)は音に酔いながら同化する。そして、松田晋二(Dr.)は一心不乱にドラムをたたき続けるのだ。(この時、山田が指差した横断幕は、栄純が絵を描いた。第1回夕焼け目撃者では妖怪を描いており、今回はねぶた祭りからインスピレーションを得て、水害を収めたとされるスサノオをテーマに作ったという。)

ギラギラとした空気の後の「何もない世界」は、すっと空気が薄れていくよう。中性的なヴォーカルと幻想的なサウンドが落ち着きを見せる「水芭蕉」では、山田もギターを手に取り、これまでの狂暴的な姿から一転、繊細な美しさで包み込む。続く「夢の花」でも、山田はアコースティック・ギターを手に、菅波とコーラスを奏でる。蜃気楼のように、しかし確実に聴く者に爪跡を残してゆく。

MCで松田が語った「音楽の力で一緒に歩んでいきたい」という言葉。実直な彼らだからこそ、恥ずかしげもなく口にできるのだろう。拍手と歓声とともにオーディエンスと思いが共有荒れていく様子が、とても心地良いのだ。THE BACK HORNの4人はいつだって真っ向勝負なのだ。小道具や演出なしの体一つで演じきる、究極のエンタメだと思う。キャリアを持ちながら、いつだって変わることのないアーティストとしてのスタンスが、音楽と言う枠を越えて表現者としての地位を確立している。だからこそ、これほどまでに世代をこえ、ステージとファンとの間に親密な空気が流れているのだ。愛されているのだ。

終盤も「覚醒」に始まって、「真夜中のライオン」、「コバルトブルー」、「戦う君よ」と勢いを落とすことなく感情を爆発させる。「明日はもっといい日になるようにお互い頑張ろうな」という言葉には、彼らの思いが全て込められているようで、ラストの「世界中に花束を」の旋律が日比谷の夜空に響き渡った。鳴りやまないアンコールでは、「無限の荒野」で燃え尽き、4人は会場をしっかりと見据えてからステージを後にした。聴くたびに色を変え、二度と同じ曲を見せることはないTHE BACK HORN。彼らが貪欲に突き進み、変化を追い求める姿を逃すまいとして、私たちもライヴに行く。これが今この場にいる理由なのだと思う。

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