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INTERVIEW

Japanese

THE BACK HORN

2018年03月号掲載

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Member:山田 将司(Vo) 菅波 栄純(Gt) 岡峰 光舟(Ba) 松田 晋二(Dr)

Interviewer:石角 友香

ここ1年、宇多田ヒカルとの共同プロデュース楽曲『あなたが待ってる』など、バラードで新生面を聴かせ、またベスト・アルバムに収録した新曲「グローリア」では素直な言葉でファンを鼓舞するパンクを届け、新曲ごとに驚きをもたらしたTHE BACK HORN。結成20周年となる2018年の第1弾作品は、濃厚な彼らの世界観がひとつのテーマのもとに自然と束ねられ"情景泥棒"と名付けられたミニ・アルバムに結実した。これからのライヴで武器になりそうな楽曲群というだけでなく、彼らならではの音楽的文法で異次元のサウンドを作り上げ、いったいどこまでこのバンドは新鮮なんだ? と、驚きと喜びを禁じ得ない。その背景にあったものとは?

-今回、アルバムを待たずにミニ・アルバムで、しかもコンセプチュアルな印象がありました。結成20周年の第1弾作品にこの作品を据えた意図はありますか?

松田:このタイミングだから出せたミニ・アルバムだと思うんです。まず1曲1曲ライヴ感のあるTHE BACK HORNのエネルギッシュな部分を、少ない曲数だからこそまとめられるミニ・アルバムという形で作りたいなというのが、最初にあって。20周年はライヴも含めてみんなと盛り上がる1年にしたかったので、そうなるとフル・アルバムはわりと先になるなって予感もしてたんです。とはいえ、振り返るだけの20周年ではなく、今のTHE BACK HORNと直結するようなものにしたいという気持ちもあったので、ミニ・アルバムだったらライヴでもやって、がっつり表現できる曲数でもあると思って。今年だからこそ出せたらいいなっていう考えのもとにみんなで制作に入った感じですね。

-"情景泥棒"っていうテーマは松田さんの中では前からあったんですか? イメージとしてはSNSなどで知らず知らずのうちに時間が盗まれる感覚に陥ったり、リアルが薄まっていたりする現状とリンクする言葉だなと感じたんですが。

松田:そうですね。『運命開花』(2015年リリースの11thアルバム)のころに思いついたタイトルなんですけど、まさにおっしゃったような、人間の心の中だったり、人間が生きていくうえでものすごく大切にしている部分だったりを改めてもっと大事にしたいなと個人的に思っていたところがあって。それが音楽とすごく結びついてるというか、音楽でそういう部分を感じられることもあるから。ライヴも、小さなスマホの画面で見るのとは違う現場のあの体感っていうのは唯一無二のものだっていうのも、音楽のすごさでもありますし役割でもあるってことをタイトルで表せないかな? と思っていたときに、"情景"と"泥棒"という言葉が思い浮かんで。最初は分割されていたふたつの単語が合体したときに、ちょっと雷が走りました。言葉のパンチと意味と日本語感とTHE BACK HORN感と、あとTHE BACK HORNが大事にしている歌詞の情景感みたいなところも含められた言葉だなと思って。いつかこれがアルバム・タイトルまではいかなくても楽曲タイトルになればというイメージはしていたんですけど、それがこのタイミングでミニ・アルバムのタイトルやテーマになったっていうのは、いろいろな流れのなかで培われたってことですね。

菅波:絶妙な落としどころが出てきたなと思って。マツ(松田)は"情景泥棒"って言葉に込めている気持ちがいろいろあったと思うんですけど、歌詞に変換してワンコーラスぐらい持ってきてもらったやつを見たときに、いい意味でエンタメな歌詞になっていて、なんかSF映画みたいな感じで書いてきたんで、"あ、すげぇ面白ぇな"って思いましたね。「情景泥棒」はワンコーラスぐらいのデモが去年の頭ぐらいには実はあって。それは他の曲もある中の1曲としてあったんですけど、ミニ・アルバムをどうやってパッケージしていくか? って話になった段階で、この"情景泥棒"って言葉も浮き上がってきたというか、存在感を増してきたんです。だんだん"こんなキャッチーな言葉ねぇなぁ"っていう話になって、そしたらこの言葉が急激に頭角を現してきたので、これをもっと広げてアルバムの核に据えようと思って。それで「情景泥棒」と繋がる「情景泥棒~時空オデッセイ~」を作って、大長編みたいな感じに仕上げたんですね。

松田:たぶんこれがフル・アルバムだったらもっとしっとりするバラードとか、そういうのもありながら全曲でグラデーションになってく感じで、そんなアルバムも今まで結構ありましたけど、そこまでいかずにディープな世界観っていうものにどういうふうにいけるかを探し始めて、それでこの7曲に辿り着いたってことですね。

-ライヴで活躍しそうとか感動的とか、それだけじゃない濃厚な7曲が集まっていて、しかもコンセプチュアルだという。こんなことやってるバンドいないんじゃないですかね。

菅波:感覚としてはそこまでいきますよね、聴き終わったときに(笑)。

-「情景泥棒~時空オデッセイ~」は未来から今を見ているみたいな作りで、「情景泥棒」と連作になっていますが、これをリアルに感じるのも、時代的にもリンクするものが多かったせいかもしれないです。

松田:これまでもTHE BACK HORN自体が歌っているものが人間の感情であり、ある種、ほんとに想いだけを歌ってきたバンドだなってことを考えると、このミニ・アルバムの全体像は、その2曲だけというよりも、周りの5曲も"情景泥棒ってこういうことなんだよな"って、ひとつのストーリーの中で言ってる曲になってるというか。この2曲がすごく深いって感じがあるんですけど、でも他の5曲たちを含めて全体でテーマについて歌ってる感じが個人的にはしてるんです。

菅波:たしかに「情景泥棒」はちょっとSF的な設定だけど、その設定を使って、今の世の中ってどうなんだ? って訴えてるような曲なんで、結果的には今を生きてることを全曲で歌ってる気もします。

-「情景泥棒」も「情景泥棒~時空オデッセイ~」も最高に楽しめました。「情景泥棒~時空オデッセイ~」はエレクトロな部分もありますね。

菅波:ありますね、場面的に。突如出てくるというか、あんま脈絡なく入ってくるっていうのをちょっとやってみたくて(笑)。

-そこがSFっぽくて。真面目な曲だけど笑ってもいいと思える。

菅波:うん。それがいいなと思いましたね。

-菅波さんのギターの音も、例えばSF映画でも深遠で宇宙の中の孤独を感じる"ゼロ・グラビティ"のサントラで鳴っているような空気感をギターで表現しているようでもあり。

菅波:その映画は観てないですけど、まぁ、そうですね。ベース・パートもシンセベースかな? と思われそうなところは実は全部生べ(生ベース)なんですよ。そういう融合具合は全部こだわった部分なんで、あんま"ここは打ち込みで、ここは打ち込みじゃなくて"みたいな、そこに意識がいってほしくなくて。急に宇宙っぽくなった、とか映像的な方に意識がいってほしいので、すごいいろいろやりましたね。

松田:サウンド面はそうですね。意外とライヴ感のある熱い曲をガッと収めようと思ったとこが始まりでも、中身のサウンド面しかり、ものすごく緻密な、勢いで"スタジオで1発でガーンと収めた"っていうのとは違うライヴ感というか、色彩のつけ方というか。各楽器のアレンジや音色みたいなものは、今までやってきた録音、レコーディング作業のひとつの実績や積み重ねがここに収まった感じはありますね。