FINLANDSとしての活動10周年を2022年に迎え、その先の2023年にベスト・アルバムではなく、初期楽曲や前身バンド THE VITRIOLの楽曲も包摂して再録するのは塩入冬湖(Vo/Gt)にとって、初期衝動にとどまらない音楽の普遍性を自ら実感したからなのだと思う。サポート・メンバーの変遷はあれど、現在の研ぎ澄まされたアンサンブルにブラッシュアップできている彼らとのアレンジが音源で聴けるのは嬉しい限りだ。若さゆえの残酷さが大人な音像でむしろ際立つ「あそぶ」や、情景や温度が喚起される「April」など、原曲の色褪せなさが証明されるし、ライヴで演奏され続けてきた「ゴードン」がリアルタイムの演奏で聴ける嬉しさも。さらに新曲「SHUTTLE」は過去と現在を接続するようなテイストなのも聴きどころだ。
FINLANDSの新作は、数ヶ月に及ぶプリプロ期間で曲を練り、アルバム・タイトル"LOVE"に込められた思いをメンバー全員で共有することでよりバンドの結束力を強固にして、北海道札幌市にある芸森スタジオでの合宿で録音を行ったという力作。何より曲がいい。すでに昨年のワンマン・ライヴでも披露された「カルト」、ドラマチックでキャッチーな「フライデー」の他、メロウな「Back to girl」など、塩入冬湖(Vo/Gt)が書くメロディに寄り添いつつ主張も忘れない楽器陣の演奏も表現力豊か。特に今回、コシミズカヨのベース・プレイと粒立ちのいいサウンドは大きく作品に貢献している。「恋の前」、「サービスナンバー」といった歌詞の意味を読み取りながら聴くのも楽しい。現在の彼女たちの創作意欲が見事に結実した傑作。
2枚のミニ・アルバムを経て、The Whoopsが3年ぶり2枚目のフル・アルバムをリリース。自己紹介的な意味合いの強い作品だった1stアルバム『FILM!!!』(2016年)に対し、本作はより振れ幅の大きい内容。THE STROKESやSUPERCAR、Enjoy Music Clubといった彼らのルーツ、今興味のある音楽のエッセンスがジャンルを問わず色濃く反映されているようだ。3年の間に演奏も洗練され、特に「行方」のアンサンブルには大きなスケールを感じる。宮田と森のツイン・ヴォーカル曲「Soda」、全編打ち込みの「踊れない僕ら」といった新しい試みも。曲同士の繋がりを彷彿とさせる言葉選びにも工夫が詰まっていて、想像力を掻き立てられる。