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INTERVIEW

Japanese

ドラマストア

2022年08月号掲載

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Member:長谷川 海(Vo/Gt) 松本 和也(Dr/Cho) 鳥山 昂(Gt/Key) 髙橋 悠真(Ba)

Interviewer:蜂須賀 ちなみ

ドラマストアが2ndフル・アルバム『LAST DAY(S) LAST』を完成させた。今日をどうにか生き抜いた先に、明日は必ずやってくるし、そうして日々は続いていく。希望とも絶望とも取れるフレーズをタイトルに掲げた3年ぶり2枚目のフル・アルバムには、人生の苦楽を形にしたような全12曲を収録。そしてこの12曲からはドラマストアというバンドの歩みもリアルに伝わってくる。なお、このインタビューの数日後、ドラマストアは来年2023年1月末に解散することを発表した。8年の活動を締めくくるに相応しい自信作を作り上げた4人の言葉を、その音楽とともに受け取ってほしい。

-タイトルが"LAST DAY(S) LAST"ということで、いろいろな憶測が飛び交っていたみたいですが。

長谷川:そうみたいですね。僕、上京してからずっとフットサルをやっているんですけど、フットサル仲間のみんなが検索してくれたらしく、"ファンの人たち、こんなこと言ってるで"と教えてくれて。

松本:仲ええな(笑)。

長谷川:(笑)でも、そんなつもりで付けたタイトルではないんですよ。

-"last"という単語には"最後の"だけではなく"続く"という意味もありますからね。

長谷川:そうそう。タイトルの意味については以前発表した通りですし、そもそもアルバムを作っている時点では解散しようと決めていなかったですし。

松本:自信のあるアルバムができたので、今はとにかくたくさんの人に聴いてほしいです。

-わかりました。じゃあこの話はここまでにして、アルバムの話をしましょう。新曲の制作時期はいつごろでしたか?

松本:去年の5月くらいから作り始めました。海君がこれまで作ってきたデモは全部ストックしてあるんですけど、その中から特にいいものを形にしていこう、今までの手札全部使い切るような作品を作ろう、と。あとはいつも通りです。MVのことも考えつつ、"1回曲順通り並べてみようか"という作業を通して、"ここは役割被るな"とか"こういう曲がないから作らなあかんな"と考えていきました。作り終わったのは今年の4月ですかね。だから制作と制作の合間にフェスタ("DRAMA FESTA 2022")をやっていた感じだったし、今年の2~3月は毎日10時間くらいスタジオに入っていました。

-繰り返しになりますが、そこで"今までの手札を全部使い切ろう"と思ったのはこれが最後のアルバムだという前提があったからではないんですよね。

松本:そうですね。1枚目のフル・アルバム(2019年4月リリースの『DRAMA STORE』)がまあまあ人生変えてくれたんですよ。"第12回CDショップ大賞2020"の"関西ブロック賞"をいただいたし、"タワレコメン"にも選んでいただいて。あのアルバムを出したことで活動が加速したので、ここでまた勝負をかけたいなと思いました。前に『希望前線/knock you , knock me/回顧録を編む』(2021年リリースの3rdシングル)のインタビュー(※2021年4月号掲載)をしてもらったときに"なんで通常盤には「アポロ」が入っているんですか?"という質問をしてくださったじゃないですか。伏せてもらいましたけど、その質問に対して僕らは"インディーズは「アポロ」で始まって「アポロ」で終わるから"と、まるでメジャー・デビューするかのようなことを答えていて。

-そうでしたね。

松本:だけどメジャーに行けなくなって、インディーズで続投することになった。それならここでまた勝負せなということで、2枚目のフル・アルバムを出そうという流れでした。

-今は長谷川さんと松本さんは東京、鳥山さんと髙橋さんは大阪に住んでいるんですよね。制作は東京で?

鳥山:そうですね。僕らが東京に行って、1ヶ月間ずっと滞在しているみたいなことを2、3回やりました。

長谷川:東京と大阪だと時間もなかなか取れないんじゃないか、モチベーションに差が生まれるんじゃないか、と思われるかもしれないんですけど、それって結局全員大阪にいたとしても起こる可能性のあるトピックなんですよ。

鳥山:うん。だから何か起こったとしても4人で一緒に解決しようという気持ちでふたりは上京したし、僕らは残ったし。

長谷川:制作には苦労がつきものですけど、今回は思ったよりスムーズに進んだし、総じて楽しかったですね。

-曲を作ることって、"ここで使う音色はこれでいいんだろうか"とか"うちのバンドは4ピースでギターがふたりいるけど、どう重ねましょうか?"という判断を都度していくことじゃないですか。だから、傍から見れば地味な作業だけど、そういう判断をひとつひとつちゃんと丁寧に行うことができたんだろうな、そうやって作っていったアルバムなんだろうな、と聴いてまず思いました。

髙橋:今年に入ってから、チームとしてかかわってくれる人の数が格段に増えたんですよ。それは、ただ名前を知っているだけの人が増えたんじゃなくて、"このチームをより良くしていこう"と会話できる人が増えたということなんですけど、そういうふうに環境が変わったことは大きかったかもしれないです。レコーディング中に相談できたこともあったし、"それは違うんじゃない?"と言ってもらえることもあったし。全体的に意思疎通が増えたことが、より細かく作り込めた理由のひとつなんじゃないかなと思っています。だから僕ら自身いい感じに力が抜けて、気張ってない感じが最後まで続いたんですよ。

鳥山:前まではもっと閉鎖的やったから、"ギター、この音はどう?"みたいなことを相談できる人がいるだけでこんなに違うんやなと感じましたね。1stのころよりすごく力が抜けたし、その結果、クオリティを1段上げられたんじゃないかなとも思います。

-だから確実に"DRAMA STORE 2"ではないですよね。1stの二番煎じではないし、ちゃんと先に行っている感じがある。

鳥山:そうですね。あと、さっき言ってもらったような地味な判断というのは、もちろん今までもしてきたつもりなんですけど、このアルバムを作る少し前の時期からバンドのスタンダードとしてそれができるようになった感じがあったんですよ。そこから時間が経って、ちょっと安定してきたというのもあるかもしれないです。

-長谷川さん、松本さんはこのアルバムに対してどんなことを感じていますか?

長谷川:僕はシンプルに"あぁ、培ってきたものを出せたな"と思っています。"書かなければならない"より"書きたい"に寄った作品になったし、"これが俺やなぁ"という書き方が今までより多くできましたね。それはもちろんメロディもそうだけど、特に言葉を紡いでいるときには"あぁ、自分ってこんなことを書けるようになったんや"、"やっぱり書くのって楽しいな"と感じました。

松本:1stよりも縛りなく、且つ、曲をもっと大事にするようになった印象ですね。ホンマに、培ってきたものを全部出せました。ドラマストアの歴史を辿ると、最初は"カッコいいことやりたい"から始まっているんですよ。フレーズやアレンジは複雑なほどカッコいいと思ったけど、ポップスに変わってからは、フレーズどうこうよりも曲全体を押し出すようになって。そんななかで、各々にやりたいこともあれば、"こういうルールがあるからこれはできません"というこだわりも僕らの中にはあって......。そういう歴史を経て、今、ここに着地したんですよね。4人が全力を出したものが、ここにきてできたという。

-あえてこういう言い方をしますけど、そう考えると、非常に面倒くさいバンドですよね。

長谷川:あはは! ホンマにそうやと思います。

-一本道を進んできたバンドではないけど、試行錯誤してきたぶんの経験値があるし、これまでの道のりがあったからこそ今がある。

松本:そうですね。おっしゃっていたように、一個一個の判断を丁寧にできるようになったのも、経験を積んできたからこそだと思います。あと、今回めちゃくちゃプリプロしたんですよ。今までだったらドラムを録り直しましょうとなっても"え~? 俺、またノーミスでフル叩かなあかんの?"という気持ちがどこかにあったんですけど、今回は全然そんなことなく、"よっしゃ、やろうやろう!"みたいな感じで、何回もやって。

-どうしてそういう気持ちになれたんですか?

松本:え、どうしてだろう?

長谷川:大人になったからじゃない?

松本:かもしらんなぁ。

長谷川:いや、真面目に頑張ってきたからやって。赤井(英和)さんじゃないけど、俺ら真面目に頑張ってきたよな。

松本:うん。それに、さっきも言った通り、自分たちの未来を明るくするためにフルを出す選択をしたので、ここで手を抜く理由がなかったというか。だから全力になれたのかもしれないです。

-先ほど鳥山さんが"アルバムを作る少し前の時期から変化があった"と言っていましたが、私が"お?"と思ったタイミングは「花風」を聴いたときで。

長谷川:「備忘録を綴る」(2020年リリースの1stデジタル・シングル)を作ったときに"勇気を持って音を減らさなければならない"ということを覚えたんですよ。そのときはまだ"しなければならない"という感覚だったけど、自分たちの頭で判断して、作曲の技法として"減らすべきだ"という選択ができるようになったんでしょうね。それを経ての「花風」だったので、バンド・サウンドにとらわれない、ポップスとしての正解に近いアレンジにできた手応えはあります。それに、そういうアレンジを望んでいるようなメロディを書けた自負もありますね。だから僕らもあの曲は契機やったなと思う。だからこそ、「花風」は当初このアルバムに入らない予定やったんですけど、全員で改めて話したときに"やっぱりいい曲やんな"ってなって、繰り上げ当選したんです。