Japanese
ドラマストア
Skream! マガジン 2020年12月号掲載
2020.11.18 @渋谷TSUTAYA O-EAST
Writer 蜂須賀 ちなみ Photo by 小杉歩
開演前、会場で受け取ったセットリストを見て面食らった。というか、あまりの曲数に思わず笑ったし、泣きそうにもなった。新旧様々な楽曲の名前が並ぶその紙を見るだけで伝わってきたのだ。溢れんばかりのエネルギーが。4人がいかにこの日を待ち望んでいたのかが。
4thミニ・アルバム『Invitations』のリリースに伴う、ドラマストア初の全国ワンマン・ツアー。このツアーは本来13公演の予定だったが、新型コロナウイルスによる感染症拡大の影響により、延期&規模縮小することに。大阪と東京の2公演に絞り、配信も併用しながら開催された。
結果的にこの日は(急遽行われたダブル・アンコール含め)26曲を演奏。"1曲でも多く届けたい"という意欲が読み取れるライヴ構成からも、走り出しから熱量の高かった演奏からも、募った想いが爆発する様が感じられた。長谷川 海(Vo/Gt)がピン・ヴォーカルで歌う「備忘録を綴る」、この日初解禁となった「knock you , knock me」と新曲も披露。さらに、大会場ならではの照明演出が演奏に臨場感をもたらした。ちなみにライヴの終盤では、長谷川がMCで噛んでしまったのに合わせて照明が落とされるシーンも。そういった些細な場面からも(スタッフ含めた)チームの空気感は伝わってくるものだ。
とにかくメンバーが楽しそうである。観客のほうを見る頻度が高く、明るい表情をしている髙橋悠真(Ba)然り、熱い気持ちを演奏に込めるがあまり、勢い余って立ち上がりそうになっている松本和也(Dr/Cho)然り、"やっとステージに立てる!"という喜びを感じていることだろう。一方、それ以前に、4人で鳴らすこと自体を楽しんでいるようにも見える。各々のプレイヤーとしての個性が突出するようになり、他3人がそれを面白がり、受け入れたり乗っかったりしているような温度感がある。特に、ギターを弾いているときの鳥山 昂(Gt/Key)が、以前にも増して積極的な演奏をするようになったことが大きい。ギター・キッズとしての彼のわんぱくさが、バンドにある種の刺激をもたらしているのでは? と感じられる場面が多かった。そういう意味で印象的だったのが「シティトークが終わらない」、「イミテーション・ミュージックショー」、「Messenger」など。過去の取材で"演奏を洗練させることも大事だが、遊び心を失ってはいけない"という話をよくしていたが、今の彼らは、自分たちに合った表現の取っ掛かりを掴み始めている気がする。
"これをやらなきゃ帰られへん"(長谷川)と、最後に鳴らされたのは「三月のマーチ」。ライヴで演奏したとき、手拍子するファンを見て自分たちの意識が変わった、曲の一部を預けたくなるほどファンのみんなが愛しく思えた――と、以前インタビューで語られた曲だ。『Invitations』は、初のワンマン・ツアーを心待ちにする気持ちで、"一緒に楽しむ"というテーマのもと、制作されたアルバム。感染症拡大防止の観点から観客が声を出せない=シンガロングやコール&レスポンスができないこの状況では、あのとき思い描いていた通りの光景を生み出すことはできなかったかもしれない。しかし、長谷川がMCで語った通り、それでもライヴを届ける意義、"君を主人公にする音楽"を鳴らす意義を、4人は改めて噛み締めているところだ。"この2時間を構成している一曲一曲、そのすべてはみんなに捧げた時間であり、みんなが生きてほしい時間です。その想いはこれからもずっと変わらへん。それだけは約束できる"(長谷川)。心から信じられるものを糧にして、ドラマストアは進んでいく。
[Setlist]
1. ラストダイアリー
2. 世界はまだ僕を知らない
3. 冒険譚
4. アンサイクル
5. シティトークが終わらない
6. 可愛い子にはトゲがある?
7. イミテーション・ミュージックショー
8. 紫陽花が咲く頃
9. Messenger
10. 秘密
11. ラブソングはいらない
12. ハロー彗星
13. 東京無理心中14. バースデー
15. 備忘録を綴る
16. グッバイ・ヒーロー
17. グッデイ、グッナイ
18. Dancing Dead
19. 三文芝居
20. スイミー
21. チョコレートボックス
En1. knock you , knock me
En2. Extra.
En3. 未来へのブーケトス
W En1. 至上の空論
W En2. 三月のマーチ
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