Japanese
門脇更紗
2022年08月号掲載
-そして新しいファン層が増えたんじゃないかなと思われる、「私にして」という楽曲がありますね。wacciの橋口(洋平/Vo/Gt)さんが歌詞を書かれたことも話題になりました。
この曲はもともとメロディだけは19歳のときに作っていて、歌詞も自分で書いてたりしてて、クリスマス・ソングだったんです。でもそれを完成にするのはちょっと違うけどメロディがいいねとは自分でも思ってて、周りの方にも言ってもらったので、いいタイミングでこの楽曲を出そうよっていうのはみんなで話してたんです。今回アルバムがより羽ばたけるようにこの曲を最初に先行配信しようって作戦で、完成に至ったんですけど、いい曲にするために、今までは歌詞も自分で書いてきたけど、全部を誰かにお任せするという新しい試みもしてみようってことになって。で、そのときに切ない楽曲を書けるのは橋口さんっていうのが最初に頭に浮かんだんです。本当に書いてもらえるかわからない、実現できるかなぁって思いながらも直筆でお手紙を書かせていただいて。で、お渡しして"いいですよ"っていう言葉を貰ったので、今回ご一緒できることになりました。
-完全にお任せなんですか? 設定とかも?
そうですね。「劇」っていう楽曲がwacciさんにあって、報われないけど追いかけてしまうみたいな切ない恋愛ソングで。"そういうテーマで思いっきし切ない曲にしてください"ってざっくり言って、あとはお任せして作っていただきました。
-淡々として聴こえるところがいいですよね。
うんうん。そうですね。でもちゃんとドラマっぽい情景が浮かぶとかしていて、私は持ってない引き出しとか言葉を出していただいているので嬉しいです。
-これは橋口さんの歌詞ですけど、門脇さんが思い当たるようなところってありますか?
この主人公にですか? 意外とないんですよね(笑)。
-ないんだ(笑)。
ちょっと強がってるのとかは似てたりするのかなって思うんですけど。でもこんなにも人のことを追いかけたりとかしたことは人生でなくて。なので、同じような主人公ではないっていうか、すごいひと筋なんだなぁって思いながらこの曲を歌ってます。
-だからこそいいんでしょうね、人に歌詞を頼む良さ。
そうですね。自分だったらたぶん書けなかったのかなと思います。
-石崎 光さんのアレンジがいいですね。たくさん女性アーティストの作品を手掛けてらっしゃる方ですが。
これはピアノをたくさん使ってくださいっていうのを最初に言って。ピアノをベースに作っていただきました。
-門脇さんと橋口さんとアレンジャーさんの三位一体感、共同作業感があります。そしてアルバムの楽曲でさらに広がっていくところがあって、アルバムならではかなと思ったのが「scroll」とか「ねぇバディ」で。
そうですね。「scroll」は本当に何もないところから佐伯(youthK)さんと共作しようってやったんですけど。なのでガッツリ歌詞にも入ってくださいって言って。2/3ぐらいは佐伯さんに書いていただいてます。"たゆたう"とか自分では絶対書かないような言葉とか出てるので、そこはこの「scroll」の魅力なのかなって思いますね。
-トラックを作るときにも佐伯さんにイメージがあったんでしょうね。
うんうん。ギターのコードで作ったトラックみたいな、本当にラフなやつを貰って、私がメロディを作っていってという作業だったので、雰囲気はこんな感じにしようっていうのは、もともと佐伯さんにも私にもベースがたぶんあったのかなと思います。
-これは今の日常という感じがします。明らかな結論は見えないし、ある日のある時間みたいな。時間設定とかも新鮮じゃないですか?
あんまり正解とかなくて、言葉数もわざとすごく少なくしてて、がっちりしてないふわっとしたような感じ。アルバムの真ん中で聴いてもらってこそ、良さがよりわかる曲かなと思います。
-こういう楽曲の世界観ってサウンドだったり曲の尺だったりで決まる気がしますよね。
あと歌い方とかも"知らない 迷わない"っていう部分がめっちゃ難しくて。すごく簡単そうな曲なのにレコーディングで一番苦戦した曲な気がします(笑)。
-力を入れて歌う曲じゃないから?
うん。だからこそなのかなと思いますね。
-それは門脇さんの中で一番ぴったりくる感じを見つけていったんですか?
結構気だるい感じで歌おうってなって(笑)、それをベースに歌いました。
-対照的なのが「ねぇバディ」で。テーマ自体面白いですね。
これなんでできたかって言ったら、もしかしたらタイアップに選ばれるかもしれないっていうお話があったんです。その作品が警察モノで。でもそのお話はダメだったんですけど、せっかくいしわたりさんにも協力してもらって作ってたし、キャッチーな感じでできたからこのまま完成しちゃおうって言ってできたんです。なので、テーマがないとたぶんできなかった曲なのかなと思って。自分では絶対書かない歌詞を書けたから、いいきっかけだったなって感じます。
-テーマがあったからっていうのもありますけど、男女関係とかでもなくて、バディものとか、女性の同僚のストーリーとかもありますよね。韓ドラにもいっぱいあるし。
あります(笑)。
-そのテーマを外したとしても、親友とか同僚のイメージはありますか?
曲として完成しようってなってからは友達のことを考えて書いたりしたので、できあがったときに親友にデータを渡して聴いてもらったら、"今までで一番感動した"って言ってくれました。友達を思ってみんなも聴いてもらえたらいいなと思います。
-友達が疲れてたりするときに。
そうですね。悩んだりしてるところ、手を引っ張って連れ出すみたいな。
-シスターフッド的な曲になりましたね。
うんうん。なんかお手紙代わりに渡してもらえたら嬉しいなぁと思います。
-「ねぇバディ」は世代的にも東京に出てきたばっかりっていう頃とはちょっと違ってきて。「わたしが好き」とかも。
そうですね。チータラとか言っちゃってるんで(笑)。年齢もちょっともうあれなんだなと。
-レモンサワーとなんだろう? と思ったらチータラなんだという。
(笑)そうなんです。
-"泣いてください"みたいな曲はなくて、逆に本当に言ってほしいことはこういうことなのかなみたいな曲が多く感じます。門脇さんご本人として一番今回挑戦した曲はどれですか?
でもやっぱ「scroll」はすごく挑戦したかなと思います。レコーディングで一番難しかったっていうのが証拠なのかなと。
-じゃあ新しいことを書けたなっていう曲は?
新しいことを書けたなというか、一番好きなのは「真夏のサイダー」で、歌うのもすごく好きで、ずっとリリースしたいと強く思ってた曲なので、今回夏のタイミングでアルバムを出せて、この曲を入れられてとっても嬉しいなぁと思ってます。
-アコギを弾きながらという情景が見えます。"しゅあしゅわ"がいいですね。
しかも"しゅあしゅわ"なんですよね、"しゅわしゅわ"じゃなくて。そこもちょっと細かくこだわってます(笑)。
-"あ"と"わ"のほうが、泡感がある。たしかに"あわ"ですね。
たしかに! "あわ"ですね。でも歌詞で言うと「ねぇバディ」が挑戦した歌詞なのかなと思います。
-そして終盤は「東京は」の弾き語りが。これ一発録りなんですよね。
そうなんです。一発で絶対録ろう! って勝手に自分で思って(笑)。なのでライヴ感がたぶんすごく出てると思うし、緊張感とかも伝われば嬉しいなぁと。そういう覚悟とか。
-まぁ最近は東京じゃなくて地方でも仕事できるじゃんみたいな感じあるじゃないですか。でもあえて東京で仕事してる人の気持ちというか。
うんうん。
-門脇さんが作られたときと若干今の社会的なモードは違うかもしれないけど、そこで暮らして歌ってる人の実感が強くなったんだろうなと。この曲は性別とかもあんまり特定しない曲だと思いますが。
そうですね。男女ともに聴いてもらえたら嬉しいです。
-東京は"自分がアーティスト活動をしていく場所"っていう感じですか?
そうですね。ずっと通過点でありたいなぁっていうのは思ってたので、そこで今そうやってひとりで暮らししてやっていけてるのはすごく嬉しいなぁと素直に思います。
-でもそれってひとりではない気持ちがあるから歩いていけるという感覚ですか?
そうですね。他にも頑張ってる人が――もちろん他の地域もいるけど、東京がやっぱり最も多いのかなぁと。そういう芸能活動とか、他の仕事とかでも、そういう覚悟を持って仕事をしている人が他の地方よりもきっと多いので、ちょっと傷ついたことがあっても、他の人も頑張ってるしなって思えるような場所かなって思います。
-ところでアルバムのタイトルには門脇さんのバースデー・カラーが入りましたね。
あー!
-調べる人が多いんじゃないかと思って。調べてみてバッチリな色だったっていう感じですか?
そうなんです。もともと青色も好きだったっていうのもあったのと、意味を見て"えぇ? (色言葉に)音楽入ってる!"、"これや!"と思ってこのタイトルにしたんですけど。音楽の聴き方とかもみんな自由に聴いたり、「わたしが好き」って楽曲みたいに、自分自身の個性を大切にしてもらえるきっかけになったりしたらいいなと思って、この"ファウンテンブルーに染まって"というタイトルにしました。
-ファウンテンブルーには"踊り"っていう項目もありますよ?
うん。一応バレエを8年ぐらいやってましたね(笑)。でも2~3歳ぐらいから10歳ちょっとぐらいまでだったので、もうなまりすぎてわかんないんですけど。でもやめてそれをきっかけにギターを始めたので。
-やはりバースデー・カラーは当たってますね。そしてアルバムのリリース・ライヴ("ファウンテンブルーに染まって~レコ発ワンマンライブ~")も開催されます。
ガッツリ、アルバムに沿ったバンド編成でお届けするので、ぜひぜひアルバムが7月27日にみんなに届いたら、たっぷり浸って覚えてきてもらって、8月は楽しんでもらえたらなって思います。
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