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INTERVIEW

Japanese

ビッケブランカ

 

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いい歴史をたどっている気がする。何よりいいのは、この中に苦悩がないこと


-例えば、このベスト・アルバムに収録されている中で、子供の頃のアイディアというのがもととなっているもの、子供の頃にこんな音楽をやりたいって思ったものが具現化した曲というと?

この中でいうと、「THUNDERBOLT」かな。

-エモーショナルな思いを、スケール感のあるダイナミックなサウンドで描いていく曲ですよね。

こういうふうにわーっとスケール感のある大きなものを、ゆっくりとしたテンポでやりたいみたいな感じだったんですよね。例えば小学校時代だと、"元気が出るものは?"となったときに、みんな元気いっぱいな明るいものを思い描くし、"力強いものは?"と言えばみんなが笑顔の絵を描くような時代に、僕は"一番力強いのは、涙だろ"って思っていたわけですよ(笑)。

-やはり当時から着眼点が違っていたわけですね(笑)。

そういう変わっていたところがあるから、派手な絵を書いてください、これに派手な服を着せてくださいといって、みんながカラフルな色にするところを僕は紫一色で塗りつぶすみたいな。音楽でも元気になる歌を歌いましょう、ハッピー、ハッピーと歌うなかで"いや、そこはもっと奮い立つものが必要だろう"というアイディアが、「THUNDERBOLT」だった気がするんです。そういったひとつひとつのアイディアが、音楽に変わっていっている感じでしたね。

-子供の頃からのアイディアや原点的なもの、こうじゃないかなと思った種が、それぞれに花開いていったと。

そうですね、子供の頃に好きだった曲とかもそうですね。「幸せのアーチ」は、ユーミン(松任谷由実/荒井由実)が好きで、ユーミンみたいな曲を作りたいというところから作っているんですよね。それが今の自分になるとこんな曲になるという。過去に理由がある、できあがる理由がすべて過去にあるのが、"Before「Ca Va?」"で。

-そして未来に理由があるのが、「Ca Va?」以降、"After「Ca Va?」"。

すごくいい歴史をたどっている気がします。何よりいいのは、この中に苦悩がないことかな。自分が振り返ったときに、苦しんでいるものがないからいいなって思うんです。今、コロナ禍でできないことがあったり、コロナ禍だけじゃないいろんな理由で大変な思いをして音楽をやっていたり、生み出すことにすごく苦しんでいる人たちを見ると、幸せ者だなと感じるんですよ。例えば、いろんな人にこんな曲作っちゃダメとか、もっとこういうふうにしてとか、この時期はもっとこういう曲を書いたほうがいいとか言われたり。僕と同年代、30代前半で人生でも躍動できる時期にそうした制限を受けているということを、いろんなコミュニケーションの場で聞くと、そんなことをする必要はないのになって思って。それで自分を振り返ると、恵まれているなと思う。

-そして新曲「アイライキュー」についてもお聞きします。この曲は時間を感じさせる曲で、さらに心情の変化というものがじっくりと描かれた1曲ですね。

時計も出てきますしね。この曲は、時間をかけて"Like"が"Love"に変わるというだけを描くという、ショート・ムービー的な曲になってます。

-"I Like You"だった気持ちが"I Love You"になっていく、自分の心に気づいていくこの変化が、サウンドでも表現されている。シンプルなピアノやビートを基調とした曲が、自分の心の気づきとともに、音色やボリューム感を増していく音の物語性もある曲です。

このスタイルももともとあったんです。「Bad Boy Love」(2014年リリースの1stミニ・アルバム『ツベルクリン』収録)という古い曲があって、曲の展開もすべてストーリーに沿っているという曲で、そこでやりきった感はあったんですけど。その手法をもう1回やってみたという感じですね。一瞬のわかりやすいときめきを自分で感じたいということで、"はい、Loveおめでとう!"っていう(笑)。"I Like You"が"I Love You"に変わる瞬間に命をかけてるみたいな。その喜びを消さないようにサウンドがあって、言葉があるという感じでした。

-なかなか"Love"が言えないもどかしいパートなどもありますが、最後は祝福するような鐘の音も鳴ってますしね(笑)。物語を動かしていくうえでサウンド的な遊びや音がありますが、より意識したのはどういったところですか。

転調する直前にリタルダンドするんですよね、そのタイミングはめっちゃこだわりましたね。あまりリタルダンドしすぎてもいかんし、しなくてもうまく気持ちが表現できないし、そういうところはこだわりました。でもアイディアが生まれた時点で、どんな曲になるかがわかっていた感じでしたね。

-「アイライキュー」を作っていた時期というのは、結構いろいろな制作をしていたり、新たな試みをしようみたいな感じはあったんですか。

そうですね。でもこの頃は、一曲入魂系の作り方をしていた頃ですね。何回も何回も同じ曲をやるという、多作の時期ではなかった感じで。

-それは何か成したいものがあったから?

ちょうど別のタイアップの曲があって、それが難易度の結構高いものだったんです。それに時間を割いていた感じでしたね。それを作り終えて、同じくらいの頭の柔らかさとか、アイディアを受け入れられる器のままで「アイライキュー」はいけたので良かったです。最近はタイアップをたくさん貰えるのがありがたくて。それがあると、よりエンジンがかかって、そこに集中できるという感じですかね。

-ここからの曲も楽しみです。先ほどの"Before「Ca Va?」"、"After「Ca Va?」"もそうですが、ベスト・アルバムとしてこれまでの作品を一度まとめる作業があることで、ひとつの区切りにもなって次に進んでいく期待感があります。

区切る、というのはいいですね。次の曲、次に出される曲がとても映えますから。Taylor Swiftがしていた、Instagramの投稿を一気に全部消して、ちょっとの間放っておいて次の投稿を目立たせるというのを曲でやっている感じで。1回ベスト・アルバムに入れて、"ここまでの5周年の曲でした──はい、次の新曲1曲目はこれ"っていう。よりフォーカスされるのかなと思うし、気持ちいいですよね。

-もともとビッケブランカさん自身、"ベスト・アルバム"というものへの想いというか、印象はどんな感じだったんでしょう?

正直ベスト・アルバムは終わりの合図だと思っていたから、あまり出したくなかったですね。だから、始めはベスト・アルバムと言わずに、勝手に"ベター・アルバム"って名前にして、あたかも最初からそういうものが世に存在しているようにしよう、みたいなことも考えていたんですよ。この先ベスト・アルバムは出るけど、とりあえず今のことをまとめました、"ベター・アルバム"ですっていう。みんなも使えるし、ちょうどいい表現だよねって定着したらいいなと思ったんですけど、ちょっと仕込みが間に合わずというのはありました(笑)。

-8月からは全国ホール・ツアーがスタートしますが、このツアーというのもベスト・アルバムのスペシャルなライヴになる感じですか?

今までと違う感じにはなると思うんですけど、実際ツアーが始まるのが8月からで、その間にもきっと新曲もまたたくさん出ると思うので、ベスト・アルバムのツアーというよりは、ビッケブランカの5周年のツアーになるんじゃないかと思ってます。