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INTERVIEW

Japanese

popoq

2021年07月号掲載

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Member:上條 渉(Vo/Gt) オグラユウキ(Ba/Cho) 右京(Dr/Cho)

Interviewer:吉羽 さおり

今回作った曲を見直していったら、全体的にノスタルジーから生まれたものが多いなって気づいた


-「helix」は、インダストリアルなサウンドに対して歌のニュアンスが軽やかさを生んでいく曲ですね。

右京:サウンド的には効果音的なものがいっぱい入った、未来感を意識したんですけど。その未来感も、サイバーパンクのような退廃したイメージで曲を書いていて。決まり切った、規定された流れに乗っていくんじゃなくて、自分の思考力、想像力を現実にしていこうよっていう、自分の思いを歌詞にした曲ですね。この曲は、歌以外にも、声で加工して入れていったりしているんです。もともとpopoqの作品でエンジニアをやってくれていて、昨年からライヴでサポート・ギターとしても参加してもらっている中村(涼真)君がレコーディングにも参加してくれたんですけど。彼は直感的なギターとか声の加工のノイズを入れたりもできるし、美しいフレーズを構築することもできる人だから。その突飛なアイディアとかも詰め込んで、自分も声を入れてという感じで楽しみながら作った曲だったんです。彼はエンジニアとしていていろんなアーティストを見ている側面もあるから、総体的に見て動いてくれて、でも自分の本能的な部分も出してくれるんですよね。

上條:ギタリストとしても、エンジニアとしてもという考え方ができるから。自分たちにはない考え方を持っていて、幅が広がった感じがありますね。

-いいタッグを組んでいますね。中村さんもそうだし、popoqのレコーディングにずっと携わっているIvy to Fraudulent Gameの福島由也(Dr)さんもそうだし、全員で音に向き合ってやっている感じがある。

右京:僕はそういうものが作りたいし、そのなかで楽しみを共有できたらもっといいものができるなって今回の制作で見えてきた気がしますね。

オグラ:レコーディングでもディレクションをしてくれる福島君がアドバイスをくれたりもしますね。今回はベースに関してはラインで録ったんですけど、音もかなりこだわった感じで。福島君や、もちろん右京君とも話し合いながら、一曲一曲、細かく調整していったレコーディングでしたね。

-音の中に溶け合っているベースと、逆に浮いてくるようなベースの感じもありと、曲によってそれぞれ立ち位置が変わる。サウンドへのこだわりというのを感じます。

オグラ:そこは右京君とふたりでよく話していた部分でしたね。あとは、ベースをつける段階でも、長年一緒にいることで曲への理解度はどんどん上がってくるので。この曲ではベースはこの立ち位置だなとか、ここは勝負に出るフレーズだなというのも自分で考えながら今回は構築していますね。レコーディングでも相談しながら、チーム全体でいい音を作ろうっていうのがあって。

右京:もともとデモを作るときからそういうのは想定しながらやってはいるんですけど、いざレコーディングをしたら音はもちろん変わるし、特に「planet」とかはデモで作っていたものよりも、ギターと歌とベースがちゃんと入った状態では、生感の良さがより出たなって。

上條:デモ段階も良かったけど、さらに化けたなというイメージがありましたね。

右京:奥行きも生まれたし、聴きやすくもなったしね。

-歌についても、創意工夫をするなど、意識的にやったことはありますか。

右京:今回は豊かになっているなって思います。僕からの歌に対する注文というのもあるんですけど、本人も歌について考えているのがわかって。

上條:頭で考えて歌うだけじゃなくなったというか。レコーディングで、表情を変えてみるとか、手振りをつけて歌ったりもしていて。手でリズムをとるとか、身体を揺らすとか、顔の表情を変えるというアクションで歌の表情というのも、変わったりもしたので。そういうところの意識というのは、右京とか福島さんとかもディレクションをしながら一緒にやっていって。キャラクター的に立っている曲がたくさんあったので。それぞれのキャラクターを変えるためにという結果、そういうレコーディングになった感じでした。

-ドラムでは、キラキラとした「eve」のサウンドの中での、乾いたドラムの音というのが、突き抜けて聞こえてきますね。

右京:「eve」を作ったときは爽やかでかっこいい曲を作ろうって思って、バンド・サウンドの曲を作っていたんですけど。作り終わって全体を見たときに、切ないけど前向きになれるような曲になりましたね。この曲では結構、おもちゃのマレットを使うとか、エレクトロな要素もバンド・サウンドに混ぜて合わせてできた曲だったので、楽しかったですね。このドラムは、あれが一番かっこ良く録れたんです。スネアのカン! っていう音がすごく響きが良くて。今までもそういう音を目指していたんですけど、「eve」でそれが一番鳴っていたなって。ドラムも何パターンも録りましたね。一部だけ聞いているとこれがいいと思うけど、全体を通すとこれじゃないな、みたいなことをずっとやっていましたね(笑)。

-レコーディングはその繰り返しになりそうですね(笑)。追求し出したら果てしない。晴れやかなグッド・メロディが冴える「delight」は、トロピカルな香りもするサウンドで、まばゆい曲ですね。

右京:今までにないような曲ですね。これはメロができたとき、外には出られないけど、口ずさむことで前向きなれるような、背中を押してもらえるような曲だなって思ったから。MVもこの曲で作っているんです。

上條:この曲は、メッセージ性を強めに入れた感覚でしたね。この状況下だからこそできた歌詞でもあって。でもこの状況下じゃなくても、表せる歌詞ではあると思うんですけど。自分が経験してきたことだからこそ、伝えたいなって思ったことが込められたなと思います。

-今回は、作品を重ねてきて、だんだんと言葉が前を向いてきたなと感じることも多いです。

右京:そうですね。今まではなんでも自由な環境にいたのが、こういう世の中になって。やっぱり明るいところにいると暗いところが目に入って、暗いところにいると明るいところが目に入るようなイメージですね。今回の制作で最初にできた曲が「geometry」だったんですけど、まさにその暗いところの真っただ中にいるので、シリアスさが前面に出ている感じですね。

-「geometry」は、次の作品としてどうするかというなかで、実験的にいろんなことを試している感じもありますね。この曲は右京さんが作詞をしていますが、これまでの右京さんの書く歌詞はもっとイメージ的、抽象的な感覚あったんです。今回は全体を通して、胸に刺さる歌詞、まっすぐ心に飛び込んでくる歌詞が多いなって思います。

右京:特にこうしようというのはなかったんですけど。でもこの1年、今回は自分も歌詞をたくさん書いていて、今まではファンタジーに対しこう考えているとか、こうなんじゃないかっていうのが多かったんですけど。今回は、毎日のように現実を見る、突きつけられてきた時間だったじゃないですか。"今を生きてる"っていうことを毎日実感させられたんです。それは、曲の中にメッセージとしてありますね。現実的に見て思うことっていうか。

上條:それがうまく出せたっていうことなのかもしれないですね。もともとからそういうふうに考えていたけど、そのアウトプットの仕方が変わって。より受け取り手に伝わる感じになったというか。

-たしかに、これまではリスナーが右京さんの頭の中に飛び込む感じがあったかもしれない。そして続く曲がメロウな「sequence」。

右京:「geometry」が最初に書いた曲で、最後に書いたのが「sequence」だったんです。

-それでゼロというテーマが回収されていくんですね。

右京:そうですね。アルバムの曲順的にはもともと「sequence」を最後にしようと思っていたんですけど、希望があるものにしたいなというので「magic」になったんです。「sequence」を作ったとき、今回作った曲を見直しつつ、全体的に共通点があるなと気づいたんですよね。今回は何か、ノスタルジーから生まれたものだなって思って。自分のノスタルジーってなんだろうっていうのを改めて考え直して。自分の記憶を辿って作っていきました。音選びもノスタルジックな雰囲気で作っていきましたね。

-そしてタイトル通りマジカルで、ぐんぐんと気持ちが上昇していくような「magic」がラストにきます。

右京:メロができたときから、あったかい曲だなというのがあって、アレンジも楽しくできた曲でしたね。みんなどんな反応するんだろうって。

上條:この曲めっちゃ好き。

オグラ:冒頭からグルーヴィな感じもあって。

右京:効果音として宇宙人みたいな声を入れたりもして。あとはラストにかけて"magic"というコーラスを入れたのも、あれでアルバムを締めくくって、もう1回聴きたくなるようなものを残したかったから。曲順的にも「magic」が最後だなっていうのはありましたね。あの声をいっぱい重ねるのってすごい楽しいなって思いました。

-こういう曲こそ新鮮だなと思いましたよ。

上條:右京は、さっきの00年代の話もそうですけど、J-POPを結構聴いていましたね。右京は日本の音楽も海外のいろんな音楽も聴きますけど、ルーツとしてあるのは、例えばソロの女性アーティストだったりとか、日本のバンドだったりがあって。そういうところを聴き返すじゃないですけど、最近のフェーズとしてJ-POPだったり、今まで聴いてきた音楽を聴く機会が多くなっていたんですよね。そこもメロディや歌のアプローチにも繋がっていたなって思う。「magic」も、ちょうど宇多田ヒカルの「One Last Kiss」のコーラスの重ねとかを聴いているときに、重ねてみたらどうかなってふと思ったのもあったんですよね。やってみたらすごく良くて。

-いろんな制約がありながらも、こうしてとてもポジティヴな形あるものができた充実感が高そうですが、あとはライヴですね。

右京:前作を出してツアーを回れなかったのが、僕らはダメージが大きくて。バンドで音を鳴らして、それを全身で浴びてというのが、エネルギーがあるものだなっていうのも、昨年末にライヴをやって再認識できたので。8月にアルバム・ツアーがあるので、すごく楽しみですね。