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INTERVIEW

Japanese

SHE'S

2021年02月号掲載

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Member:井上 竜馬(Key/Vo) 服部 栞汰(Gt) 広瀬 臣吾(Ba) 木村 雅人(Dr)

Interviewer:秦 理絵

"音楽を作るのを楽しみたい"っていうのを意固地なくらい譲らなかった。 そのおかげで変化を恐れずに音楽を作るのを楽しんでこられたんです


-そんなSHE'Sも今年結成10周年を迎えます。ずっと音楽に対するフレッシュさを失わないまま10年目を迎えた印象ですけど。どうですか? メンバーとしては。

広瀬:音楽に対してはそうですね。前のアルバムよりもいいものを作ろうっていう気持ちだけで毎回やってきたなと思うので。

服部:毎回サウンド面には新しいこととか、今までなかったSHE'Sの音楽をどんどん出してきたので。それが言っていただいたフレッシュさに繋がるんだと思いますね。

木村:SHE'Sらしい10年の積み重ね方ですよね。周りを見てたら、ポンッと売れたりするバンドもいるけど、SHE'SはSHE'Sらしく、しっかりワンステップずつ積み重ねてきてこの10年があるなっていうのは感じてます。

-竜馬さんは?

井上:個人的には生半可な10年ではなかったんですよね。自分の中でめちゃめちゃ戦いがあったというか。やらなあかんこと、やりたいこと、それが入り交じってるメジャー・デビューしてからの5年間は、めちゃめちゃ早かったような気がします。そんななかでも、"音楽を作るのを楽しみたい"っていうのが意固地なくらいあったんですよ、俺の中で。仕事として割り切っちゃったら、俺は潰れちゃうなと思ってたから。そこだけはすごく大事にしてたし、自分でも"ワガママなんかな?"って思いながら、スタッフとぶつかったりもしてたから、そこを譲らなかったのは良かったというか。そのおかげで、変化を恐れずにフレッシュな気持ちで音楽を作るのを楽しんでこられたんです。

-逆に言えば、"音楽を楽しみたい"ということを守るがゆえに、苦しいこともあったということですか?

井上:そういう部分がなかったとも言い切れないですね。

-"メジャー・デビューしてからの5年間は早かった"って言ってましたけど。節目という意味では、今年はメジャー・デビューから数えると5周年でもあって。インディーズ時代の前半5年間と、メジャー・デビューしてからの5年間はかなり違いましたか?

井上:メジャー・デビューをしてからは責任感が増しましたね。(インディーズの頃も)なかったわけじゃないですけど。考えることがもっと少なかったような気がするし。

服部:インディーズの頃は完全に僕らだけだったけど、メジャー・デビューしてからは関わる人数が増えて、チームになったんですよね。それで責任感も増したんです。

-客観的に見て、その責任感とかプレッシャーと戦ってるように見えたのが、メジャー1stアルバム『プルーストと花束』を出した前後ぐらいの時期かなと思いますが。

井上:2017年ですね。『プルーストと花束』(1月リリース)と『Wandering』(12月リリース)っていう2枚のアルバムを作ってたときで。その間にミニ・アルバム『Awakening』(6月リリース)も出したんですけど、俺自身、迷いながら曲を作ってたんです。『プルーストと花束』で"いい作品を作れた"と思ったけど、セールス的にはうまいこといかんくて。メジャー・デビューして1年~2年で、すぐに(バンドが)広まらなかったことにも焦ってたし、ソングライターとしての自信もなくなってた時期やったんです。もっとキャッチーに突き抜けたほうがいいのか? とか、いろいろ考えてて。だから、その頃に作った曲は明るかったんです。

-例えば?

井上:「Over You」と「Beautiful Day」(共に『Wandering』収録曲)とか。で、『Now & Then』あたりから吹っ切れたんですよね。"下手に考えるのはやめるか"って、好きに曲を書き始めたのが『Now & Then』だったんですけど、それでちょっとだけバンドが広まるスピードが上がったんですよ。「Dance With Me」(『Now & Then』収録曲)を専門職大学のCMで使ってもらったり、"テレビで聴いた"って言ってくれたりする人も増えてきて。"意外と何も考えんとええか"ってなりましたね。

-その時期の迷いはひとりで背負ってたんですか?

井上:メンバーともそのへんから話す頻度が増えた気がするんです。やっぱり勝手に背負うじゃないですか、俺が始めたバンドやったし。なかなか売れへんくて、ウワー! ってなってるときに、メンバーが、"いや、俺らが選んでバンドをやってるから"って言ってくれて。今まで俺はメンバーに寄りかかるというか、もたれかかることができなかったなと思ったんです。メンバーも楽しんで音楽をやってくれてるってもっと信じていいのかなと考えるようになってからは、自分がだいぶ変わったんですね。

-メンバーから見ても、竜馬さんの接し方が変わったのは感じましたか?

広瀬:メジャー・デビューした当時は、竜馬だけじゃなくて、僕らも、音楽的にも考え方にしても、自由がなかったんですよね。でも、『Now & Then』で明らかに自由になれた。それは、竜馬の考え方が変わったのが大きかったと思いますね。

木村:今は竜馬が自由に好きな曲を書いてきて、俺らもそれに乗っかってブラッシュアップしていく感じなんですけど、メジャー・デビュー当時は、竜馬も僕らに"どんなことを書いたほうがいいかな?"って聞いてきてたから、迷ってたんだと思いますね。今は竜馬が好きなことをやって、みんなで"いいね"って言い合ってるので。バンドの関係が良くなってる感じがします。

服部:竜馬が持ってくる曲に対して、絶対的な信頼もありますし、そこに対して僕らがやれることは、僕らじゃないと思いつかないアレンジを加えていくことなんですね。『Now & Then』をきっかけに、SHE'Sとしてのサウンドも変わり始めたことで、僕らも自分たちらしさをより出していかないといけなくなったし。今はお互いに手を取りながら一緒に上がってこれてるのを感じてますね。

-今のメンバーの関係性も10年間の積み重ねである、と。

広瀬:これが自然やなと思いますよね。最初からずっとそういうふうにできてるバンドはおらんと思うし。いろいろなことがあって、今の状態になったんやなと感じます。

-一見、SHE'Sって順風満帆に見られることも多いと思うけど。その10年間には当たり前だけど、浮き沈みがあって、葛藤があったことを改めて感じます。

広瀬:僕らって、ずっといい感じに見られがちですけどね(笑)。

井上:さっきキム(木村)も"ワンステップずつ進んでこれた"って言ってたし、そのとおりでもあるんだけど、ゆるやかな上昇って本人が一番不安なんですよ。

広瀬:俺らって、ほんまゆるやかな上昇をし続けたバンドやからな。

井上:だから、ほんまにずっと怖かった。

-それでもSHE'Sを音楽と繋ぎとめていたものはなんだと思いますか?

広瀬:そこは間違いなくお客さんですね。

-なるほど。では、ここからはシングル『追い風』の話を聞かせてください。ドラマ"青のSP(スクールポリス)-学校内警察・嶋田隆平-"主題歌の書き下ろしですね。

井上:そうです。

-書き下ろしで曲を作るのと、0から作る違いは感じますか?

井上:違いますね。サウンド面も歌詞も、ドラマの台本があったうえでの構築なので。僕、タイアップで書くのは結構好きなんですよ。大変なところもあるけど、結局はSHE'Sが出す作品やから、僕が思ってることじゃないと嫌なんです。僕らは完全なフィクションで曲を出すバンドではないので。僕らの曲として、ドラマを観てない人にも伝わる作品でありつつ、僕らも嘘をつかない。それは簡単ではない作業ですけどね。

-そこがソングライターとして燃えるんでしょうね。

井上:うん。今までの曲でも、映画を観て自分が主題歌を書くつもりでできた曲もあったから。それを正式にオファーしてもらえた感覚です。

-ドラマのテーマとしては、社会問題を扱ってる部分もあるので、重いようにも感じましたが、バンドとの接点を探る難しさはありませんでしたか?

井上:いや、SHE'Sと合ってるなと思いました。お話をいただいて、ドラマで扱っている問題自体というよりは、その問題と向き合って、どう生きていくかってことが描かれたドラマだと感じたんです。今までもSHE'Sは、"こういうふうに生きていく"とか、そういう心の部分を歌ってきたバンドやから、親和性があると思いましたね。"立ち上がっていく"っていうキーワードをいただいてたので、そこから掘り下げていきました。

-サウンドはかなり華やかですね。

井上:あの華やかさは音楽プロデューサーの百田(留衣)さんのおかげですね。イントロからAメロあたりは孤独感を表現したくて。こもる感じというか。そこからサビに向けて、一気にガっと盛り上がっていく華やかさは意識して作ってます。

-楽器隊は、どんなふうに楽曲に向き合いましたか?

広瀬:ベースで言うと、上モノがすごく華やかな曲なので、そのぶん低音もちゃんと支えないとなっていう気持ちではありましたね。

木村:疾走感もありつつ、どっしりした感じもある曲なので、軽くならないように意識して叩きました。今までやってきたものが出せたなっていうのはありますね。

服部:サウンド面には、今まで積み重ねてきたものを全面に出したいなと思ってたんです。そのうえでメッセージ性が強いので、歌を立たせるような感じでアレンジしました。ギター・ソロは、僕が竜馬からデモを貰ったときに、去年Eddie Van Halen(VAN HALEN/Gt)が亡くなったので、その追悼の意を込めてEddieっぽく弾きたいと思ってたところを、竜馬も、"自分もそれは入れたほうがいいと思ってた"って言ってくれて。全力でEddieへの追悼の気持ちを出しました。

-若手のバンドで、こんなプレイを挟み込んでくるのは栞汰さんぐらいだな、と(笑)。

服部:そこはプロデューサーの百田さんも面白がってくれてて。エンジニアさんもちょっとEddieに寄せるためにリバーブの感じを調整してくれたんです。そういう意味ではEddieっぽいフレーズですけど、それをやるのが自分っぽさかなと思いますね。

-歌詞の"生きていく者だけに吹く 追い風"というのが、この曲の肝だと思いますけど。この追い風というキーワードはどんなふうに思いついたんですか?

井上:最初は"追い風"じゃなくて、"憧れ"やったんですよ。うまくいかない自分たちがいて、それでも憧れる自分がいたりして。そこに向かっていくっていう歌詞やったんですけど。なんかイマイチやなって。"憧れ"よりも、もっと背中を押していく、いい方向に向かっていくことを表現できる言葉を探して、"追い風"っていう言葉が出てきました。追い風って、どういうときに吹くんやろう? と考えたときに、その"生きていく者だけに吹く"ってサビの最後の1行が出てきたんです。

-それこそ、"なりたい自分への憧れ"と言うと、さっき話していたSHE'Sの10年間にあった葛藤とも重なるような気がしますが、そういう意識はありましたか?

井上:いや、それは考えてないですね。というよりも、"ミスって終わりじゃない"って言いたかったんです。今の世の中はネットの普及もあって、1回ミスったら追放される世界になってると思うんですね。誰かが叩かれて、誰かがいなくなっていく。自殺も多いし。そうじゃなくて、生きて立ち上がってもう1回、一日一日を過ごしていくことでしか、その人に次はないし、追い風も吹かへんなって思って書いた曲やったんです。