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INTERVIEW

Japanese

瀧川ありさ

 

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自分もミニ・アルバムの内容の通り過渡期だなと思う。でも、その迷いさえも楽しみたい


-そして一転して「Tonight」は美しいエレクトロタッチの曲で、サウンド的にはこれまでの世界観を先に進めたような感触ですね。

そうですね。この曲は仕事をすごく頑張っている友達から、夜中に"疲れた......"みたいな感じのLINEがきて。もう疲れすぎて家に帰りたくないなって言うんですよ。それは私もすごくわかるんですよね。疲れているはずなのに、ひとりの家に帰るのが嫌だみたいなことって。そういう人たちもきっと多いと思っていて。今は家にいる時間も増えていますけど、家でひとりぼっちでいる人たちの夜が小さくならないでほしいというか。ひとりぼっちの夜も、自分の気持ちで無限に、いい時間にすることができると思うので、そういう時間に流してほしいなと考えて作った曲なんです。

-今年はコロナ禍でするステイホームする、これまで経験したことないような状況が続きました。あの頃、瀧川さん自身はどんなことを考えていましたか?

私自身はだいたいが引きこもりで、家にいられるタイプなので、さほど影響がなかったというか。みんなが自分と同じ状態になっているんだなって思ったくらいだったんですけど(笑)。でも周りは、やっぱりストレスが溜まっているんだなって感じていたので、自分が普段夜ひとりで考えている時間、楽しくなっている時間をちょっとおすそ分けするくらいの感じだったんです。

-そうなんですね。そのステイホーム期間にVlogを始めて、より外に発信していたというのもありましたね。その発信で、これまで以上に瀧川さんを身近に感じてくれた人も増えたのではと思うんです。いちリスナーとミュージシャンとして触れ合っていたものが、もう少し瀧川ありささんという人に近づけた、新しい距離感ができた時間ではと。

私が音楽以外のところで、自分に興味がないというか(笑)、自分を発信することに興味がない人間なんですけど、聴いてくれている人は普段の私や、こんな人なんだなってわかったほうがいいんじゃない? ってスタッフさんからのアドバイスもあって。最初は、じゃあやってみようかなという感じで始めたんです。それを、みなさんが楽しんでくれているので、なるほどなって思って。たしかに自分も、ミュージシャンのミュージシャンではない姿って見ていて楽しいよなって、今は続けているところですね。

-普段どんなものに興味があるのかを熱く語ってたりすると、グッと親近感が湧くと思いますしね。瀧川さん、鉄塔が好きなんだなとか(笑)。

自分を出しちゃうとああいう感じになっちゃうので、あれなんですけどね(笑)。コアなものほど喜んでもらえるので。

-そういう好きなものや感覚って、きっと曲の一部に織り込まれていたり、曲の何気ないシーンに溶け込んでいたりすることもあると思うんです。そういう発見ができたら、より音楽を聴く楽しさがあるなって。そういうことでリスナーと新しい距離感を掴んでいるなと思いました。そして、ミニ・アルバムを締めくくるのが切なく、ファンタスティックな「夢」という曲です。

あ、これこそ今お話ししてもらった、普段の私に通じるというか。ファンクラブのほうで週に1本ひとりで喋っている動画を上げているんですけど、そこで私、よく夢の話をしているんですよ。人の夢の話も自分の夢の話もすごく聞きたいし、話したいタイプで。もともとは、人の夢の話って一番興味ないよねというところからきているんですけどね。

-それは、たしかに(笑)。リアクションに困ることありますもんね。

人の夢の話には興味なんてないと思いつつ、私は結構興味があって。みなさんには、"人の夢の話なんて興味ないよねっていうテイ"で私の話を聞いてもらっているんです(笑)。私は夢を結構見るタイプなんですけど、それも小さい頃の夢や、学生時代の夢ばかりで。夢占いをすると、過去に引きずられていますよっていう感じで言われるんですけど(笑)。あと、夢で心に残ることを言われたんだけど、誰に言われたかわからないとかありますよね。すごく刺さることを言われちゃったなとか。でも、刺さることを言われているくせに、夢って自分が作り出したものじゃないですか。意味わかんないなと思って。でも、ユーミン(松任谷由実)理論で言えば、すべてに意味があるんですよ(「やさしさに包まれたなら」の歌詞"目にうつる全てのことは メッセージ"より)。すべてにメッセージ性があるんだって思って考えると、夢はこういうことを教えたいと思ったのかもなと考えたりということを、ずっと楽しんでやっていて。

-その感触が、切ないけれど、醒めてほしくないなというこの歌へとなっていく。

そうなんですよね。亡くなっているおばあちゃんが出てきて、話せたとか。それで嬉しくなるので。夢で会えた人って、すごく印象に残るし。あと私、夢に出てくるってファンの人に言われるんです。"森でみんなと歌を歌いながら遊びました"、とか(笑)。そんな感じで自分が人様の夢に出演することもあると考えると、夢ってめちゃめちゃ面白いし。でも、面白おかしいものばかりでなく、"私もしかしたらあの人を傷つけていたかも"とか、過去の人間関係に気づかされたりもする。そういうことに気づかされる朝って、映画を観たあとの、映画の世界観から出られない状態のようで......。だったらこの感覚をそのまま曲にしてやろうと思ったんです。

-アウトロをフェードアウトにしてるのもその感覚があるからですか?

そうです。夢の中っていつの間にか次のシーンにいっているとか、幻想的な感じで。急に目覚めることもありますけど、切れ間をそんなに覚えてないというか。ずっとこのまま夢を見ていたいという、後ろ髪を引かれている感じが現れてますね。

-最初のほうで"主人公感"がないんだという話もしましたが、今回ってすごく瀧川さんのリアリティが詰まっているし、今を体現しているからこその思いが溢れた作品だなと話をしていてより思いました。

そうですね。先ほどのステイホームでの話も、自分的には何も変わらないと言いつつ、変わった部分もあると思うんです。ステイホームのときに、ちょっと嬉しくなったんですよね、この一丸となる感じは最近なかったよなって。私は一丸となることがすごく好きで。テレビっ子だったのも、みんな一緒に観ているあの一丸となってる感が、小さい頃すごく好きだったんですよね。ステイホーム中は、今みんな同じ気持ちで肩を組んでる感じがあるぞっていう。自分的には普段のほうが、ひとりぼっち感があったから、ステイホーム中のみんなで頑張ろうよっていう感じが心地よくて。世界的にはすごく大変なことがあるけれど、そのなかでも人間は希望を見いだすんだなっていうところにも、思うことがあったというか。Vlogを始めたのもそうですけど、人と繋がることってお互いの支えになったり、こんな自分を垣間見てもらえるだけでも、みなさんが喜んでくれたり、息抜きになったりしてもらえるんだと思えたところは大きかったんですよね。

-30歳になろうとしているという現在ですが、20代から30代へというのに対して自分ではどういう思いでいますか?

30を超えると楽になるよと諸先輩方は言うんですよ。

-それはたしかにありますね。ちょっとした枷が外れる感覚があるというか。

そういう話は聞くんです。謎に焦っていたこととかがひとつ楽になるという話を聞いて、じゃあ早く30代になりたいというのはあって。たしかに周りの子たちも結婚やら仕事やらで何かを成し遂げなきゃというところから、でも、人生は続いていくわけで焦ってもしょうがないから、どっしり構えていこうとなっているのもそうだし。あとは、若い女性に求められている、変な呪縛みたいなとこも取れるらしいというのを聞いているので、楽しみにしているんです。

-無意識に背負っている、背負わされているその何か、その正体が自分でもわかってくるというのは大きいんだと思うんですよね。

そうですね。周りから勝手に背負わされてることもあるし、自分で勝手に背負っているものもあって、その荷が下ろせるんだなとは思いつつ、私のようなそういう狭間にいる人にこのミニ・アルバムを聴いてほしいです。

-これから先に瀧川さんがどんな作品を生み出していくのか、どんな歌を歌っていくのか、その話を聞くと楽しみです。

そうですね。コロナ禍の影響というのはみなさんあると思うんですけど、今年は自分の生き方をもう一度見つめ直す時間になっているんだなと感じます。自分も去年までの人生観とは変わっていて......具体的にそれを言語化できない部分で変わったと感じるので。ここから、自分がどういうものを出して、どういうものを表現していくか、人との繋がりを含めて自分がどうなりたいと考えるんだろうって、自分もミニ・アルバムの内容の通り過渡期だなと思っています。でも、楽しみたいなと思いますね、その迷いさえも。