Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

Skream! 公式X Skream! 公式YouTube Skream! 公式アプリ

INTERVIEW

Japanese

Rain Drops

2020年12月号掲載

いいね!

Member:緑仙 三枝明那 童田明治 鈴木勝 える ジョー・力一

Interviewer:秦 理絵

メジャー・デビューを果たした前作『シナスタジア』が、"オリコン週間合算アルバムランキング"を含む11部門で1位を獲得するという快挙を成し遂げたVTuberユニット Rain Dropsが、早くも2ndミニ・アルバム『オントロジー』をリリースする。Rain Dropsとは、人気バーチャルライバーが多数所属する"にじさんじ"が発信する音楽ユニット。緑仙、三枝明那、童田明治、鈴木勝、える、ジョー・力一の6人で構成され、気鋭のクリエイター陣が生み出すハイクオリティな楽曲を個性豊かな歌声で乗りこなす、本格的ヴォーカル集団だ。その存在はバーチャルでありながら、Rain Dropsが届ける歌には、どこまでも人間らしい体温と感情が宿っている。一過性のムーヴメントではなく、あらゆるジャンルのリスナーを巻き込み、今新たなカルチャーの中心に立つRain Dropsとはなんなのか。6人に訊いた。

-前作『シナスタジア』(2020年5月リリースの1stミニ・アルバム)が、メジャー・デビュー作にして、"オリコン週間合算アルバムランキング"を含む11部門で1位を獲得しましたけども。自分たちではどんなふうに受け止めていますか?

三枝:『シナスタジア』のころは、まだ自分たちがメジャー・デビューをするっていう実感がなくて。勢いで発売したら、こういう結果が残っちゃったので、ふわふわしてますね。

童田:"わー、すごーい!"って、他人事みたいな感じだよね。

三枝:うん。この結果は、自分たちが頑張って出たものと言うより、"にじさんじ"という母体そのものが持ってる強さがそのまま反映された結果じゃないかな、と思ってるんです。だから、その次の作品である『オントロジー』は、ちょっとだけ数字的なプレッシャーを感じてるんですよ。

える:わかるなぁ。

ジョー・力一:三枝君が言った"(記録が)出ちゃった"っていうのがね、本当にそのとおりだと思いますね。僕ら6人が初めて集まって、わりとアップアップでレコーディングをやってる間に、"にじさんじ"っていう集団やVTuberっていうものの知名度が広がっていったから、その流れで記録が"出ちゃった"感はある。だから、僕ら6人の中で誰ひとり天狗になってるやつがいないんですよ。

える:初っ端で、こんなにいい結果を残させたことは当たり前じゃないですよね。える的には、頑張って徐々に1位を目指していくユニットになると思ってたけど、初めてのミニ・アルバムなのに、めちゃくちゃ期待してもらえてるんだなぁと感じました。ファンの熱量が高くて。

鈴木:今まで活動してきた場はYouTubeっていうオンラインがメインだったので、"オリコン"みたいな一般的な音楽シーンも含めて11冠もいただけたのは、嬉しいけど、逆に怖い気持ちもありましたね。

-たしかに、新しいカルチャーが巻き起こる中心地に自分たちがいるという怖さはわかる気がします。今後、音楽シーンの中で、どういう存在になりたいと考えていますか?

える:VTuberを"アニメが好きな人のためのものだ"って思ってほしくないんですよね。

三枝:あぁ、そうだね。

童田:VTuberを知らない人も、Rain Dropsを通じて、こういう新しい音楽のかたちがあるんだってことを知ってもらえたら嬉しいですね。

える:VTuberを知らない人には、"え? 何それ"っていう反応をよくされるんです。でも、自分たちはちゃんと人間として見てほしいし、人間の文化のひとつとして捉えてほしいんですよね。オタクだけのものじゃなくて、アーティストとして見てもらえてるかな? そういった存在になれてるか考えます。

ジョー・力一:もともとアニメの主題歌やキャラクター・ソングっていうものは、純粋なCDの売り上げだけで話したら、むしろ根強いカルチャーだと考えているんですよ。ただ、俯瞰して見たときに、僕たちって、"またアニメの違うのが出てきたな"って思われてる節もあると思うんですよね。

-疎い人からしたら、アニソン、キャラソンもVTuberもひとくくりにされがちというか。

三枝:うん。デカい口を叩きたい気持ちもあるけど、まだブームの域を越えてない感じはあるんです。文化として世間に浸透していくにはまだまだ時間が必要で。だから、この2枚目から、どういうふうに変異していくかっていうのが本当の勝負なんです。

-この『オントロジー』でこそ、Rain Dropsの真価が問われる作品であると。

三枝:"僕たちは、もっとこういうことができるんだよ"とか、"こういうふうな集団なんだよ"っていうのを、表明できるようなものになってると思いますね。

-話を聞いてると、みなさんはかなり自分たちのことを冷静に分析されてますね。

三枝:単純に悲観的なだけだよね。セルフ・ネガキャンです(笑)。

鈴木:いや、楽観的になっちゃダメだよ。

-個人的に『オントロジー』は、アニメとかインターネット界隈以外のリスナーも巻き込める作品だと思いますけど。自分たちでは率直にどんな手応えを感じていますか?

童田:今回のアルバムすごく好きなんですよ。

三枝:(童田は)じんさんファンだもんね。

-"カゲロウデイズ"の作者でもあるアーティストのじんさんが、「雨言葉」と「オントロジー」に楽曲提供されてますね。

童田:そう、じんさんの曲が最初と最後にきてるのがいいんです。最近は家にいるときも、出かけるときも、常に聴いてます。すごく大好きです。

三枝:わかるなぁ。

緑仙:童田さん、長期で外出しなきゃいけないっていうときに、音源を持ってなかったらしくて。僕に"データを送ってほしい"って、パシってきたんですよ(笑)。

童田:違う違う! 外で聴けなかったから、"音源を送って"ってお願いしたんです。

緑仙:仕方ないから送りましたけど。

鈴木:優しい(笑)。

える:でも、気持ちはわかりますけどね。

緑仙:いい作品ができたからこそ、自分はただ歌ってるだけで、プロデューサーでもなんでもないのに、"これ、どうやったら聴いてもらえるかな"って、ずっと宣伝のことを考えてるんです。

える:まずは聴いてもらえないとね。

緑仙:そう。さっき三枝が言ったけど、『シナスタジア』が"オリコン"で1位をとるぐらいVTuberっていう土台があって、たくさんの人が聴いてくれる環境下にあるとはいえ、自分たちの実際の実力は数字では見えないので。これを、どうやって聴いてもらうか? っていうのは、なんか知らないけど、めちゃめちゃ本気で考えてしまう。それぐらいすごくいい出来だと思います。

鈴木:『シナスタジア』がすごくなりすぎちゃったから、"2枚目は越えられるかな"っていうプレッシャーはあったけど、絶対に越えたし、後悔させないっていう自信はあるよね。

-力一さんはどうですか?

ジョー・力一:コンセプトとして、『シナスタジア』は、"僕たちこういう者です"ってアルバム全体で紹介するような、ひとつの流れがあったのかなと思うんですけど。それに比べてみると、『オントロジー』のほうは多面的というか。一個一個の曲が別の面を持ってるんです。曲数で言うと、七面体ですよね。シャッフル再生しても面白いんじゃないかっていうのものになってると思います。

童田:たしかに。

ジョー・力一:それは別にまとまりがないっていう意味ではなくて、ちゃんと1本の筋が通るように、作家陣には作ってもらったので。『シナスタジア』とは、別の面白さが出てるんです。

-『シナスタジア』を経て、レコーディングに変化はありましたか? 当時は正解がわからなくて、探り探りだったそうですけど。今作ではもう少し余裕が出てきたとか。

緑仙:他人に口を出せるくらいの余裕はあったよね?

三枝:うん。前回は自分のことでいっぱいいっぱいだったから(笑)。

緑仙:自分のパートをどれだけ上手く歌うかっていう感じでしたからね。

童田:他の人のことを考える余裕がなかった。

緑仙:でも今回は自分の収録が終わってから、他の人が収録しているところを見て、意見を言い合ったりすることも多かったかなと思いますね。他の人の歌を聴いて帰るとか、早めに来て先に録ってるのを聴くとか。

童田:そういうのが多くなったよね。

緑仙:収録自体も楽しかったんですよ。順番的に、三枝→僕→力一で録ったときに、三枝と僕が終わったあとも残って、力一の収録を仲良く聴いてました。ウキウキしながら(笑)。

三枝:"マジでいいじゃーん!"とか言いながらね。

緑仙:けど、別に仲良くもないから、飯も一緒に食わずに帰りましたけど。

える:食えっ(笑)!

一同:あははははは!

ジョー・力一:お互いの出来高を聴いたら、解散するっていう。

緑仙:"いやー、良かったね、おつかれっ!"って。

-(笑)お互いの歌を聴くようになると、そこから受ける刺激もありましたか?

三枝:そうですね。他の人がこういうふうに歌ってるなら、僕も寄り添ってみようとか。そういう意味で、より洗練されていってるんじゃないかなと思います。あと、この楽曲の完成度を上げるためには、どうアプローチしていくかとか、そういうことを考えられるようになって。

童田:うんうん。今回、童田はわりと先に収録することが多かったんですけど、"この人はこうやって歌うから、あんまり自分は前に出すぎない"とか、"次のパートがこの曲の見せ場だから"とか、そのあとに収録する人のことを考えようっていうふうになりましたね。

-ユニットとしての一体感が増したような感覚はありますか?

童田:うん、絶対あると思います。

える:なんか"グループ"って感じだよね。

三枝:よりグループとしての意識は強くなったと思います。