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INTERVIEW

Japanese

PEDRO

2020年09月号掲載

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BiSHのアユニ・Dの作品というよりPEDROというバンドの作品として受け取ってほしい


-ここまでシングルとしてリリースされた2曲について聞いていきましたけど、アルバムに収録される新曲では「浪漫」と「へなちょこ」で作詞だけでなく作曲もしていますね。どんなふうに制作していったんですか?

メロディとベースを自分で考えて、打ち込みですけどギターとドラムも。あとはDTMのソフトにあるものを貼りつけて10曲以上作って、その中から選んだのが「浪漫」と「へなちょこ」なんです。

-え! メロディを作ったから作曲のクレジットなだけじゃなく、コード進行だったり、ドラムのリズム・パターンだったり、そういうところまで踏み込んでいたんですか?

そうですね。全曲入れられたわけではなかったんですけど、そこからSCRAMBLESさんに編曲してもらったり、ひさ子(田渕ひさ子/NUMBER GIRL/toddle)さんにギターを起こしてほしいとお願いしたりしていました。

-おぉ......作品を出すたびにどんどんステップアップしていきますね。

いやいや。でもこれを作ったときは2月とかだったので、まだコード進行とかも全然理解できていなかったから、直していただいたりしたんですけどね。このアルバムに入れるかどうかはまったく意識せず、とりあえず作って、いつか出せたらいいなという気持ちで作ってました。

-自身で作曲した曲は、デモから選んだ曲と比べてより具体的なイメージがありましたか? 例えば「浪漫」だったらどんな曲にしようと考えていたのでしょうか?

曲のイメージはハッキリしてなくて、最終的にこういう曲ができた感じなんです。実際、田渕ひさ子さんのギターが入ると本当に印象が変わるんですよ。自分の想像を超えたものができるというか、自分の想像内で収まらない、カッコ良くて素晴らしいものができるのが楽しみで。ただ、自分的には温度のある楽曲を作りたかったっていうのはすごくあります。この曲は、アルバムのタイトルと同じ"浪漫"っていう名前なんですけど、この曲に関してはアルバムの"浪漫"とは全然意味合いが違くて。"ロマンチック"っていう言葉を聞くと、たいていの人は恋とか愛とかを想像すると思うんですけど、そういう意味での"浪漫"も面白そうだなと感じたんです。温度のある恋のお話というか、そういうものを作りたかった結果、こういう曲になりました。ひさ子さんにPEDROでは初めてアコギを入れてもらって、ベースもいつも弾いている直線的なベースとは全然違うし、PEDROでまた新しい顔を見せることができたらいいなと思って。

-サウンドとしての温度感とともに、歌詞も温かいものになっていますよね。歌いだしの"お風呂あがりアイス分けあう夜"とか、すごくいい描写だなと。PEDROでの新しい顔でもあり、アユニさんの歌詞としても新しい顔というか。

これは自分の人生経験というよりかは、PEDROの作品として、ひとつの小説みたいなものを作ったんです。今までだとPEDROは"アユニ・Dのソロ・プロジェクト"みたいな意識が自分の中で強かったので"アユニ・Dを出さないといけないんだ"みたいに考えていたんですよ。だからこそ恋愛の歌とかも全然書けなかったし、書いてこなかったし、私は全然温かい人間じゃないので温かい曲も作れなかったんですけど、PEDROというバンドの作品として音楽を作ってみたら気楽にできたんです。自分を曝け出すことは恥ずかしかったり、後々後悔することが多かったりするんですけど、PEDROというバンドとして作る意識を高めたときに、まるで自分がそういう生活を送っているかのような言葉がたくさん出てきて。今回の作品はBiSHのアユニ・Dの作品というより、PEDROというバンドの作品として受け取ってほしい気持ちが大きいんです。

-この曲以外でも、歌詞から肩の力が抜けた印象があったんですよ。実際、気楽に書けていたんですね。今までは自分を削って曝け出す、みたいな感じでしたし。

そうですね。本当にその言葉がピッタリです。

-収録順としては最後になるんですけど、アユニさんが作曲をしたもう1曲「へなちょこ」は、どこか青春パンク的なエモさを感じました。

ぁあ! ひさ子さんに青春パンクって頼んだんですよ!

-青春パンクを感じさせつつも、ただ青春パンクをやりましたっていう感じではなく、そのエッセンスを取り入れた形でPEDROの音楽になっているんですよね。

青春パンクっぽくしたいけど、青春パンクをやっているバンドの真似をしようとは一切思っていなかったので、PEDROっぽいっていうのはずっとあるなと思います。歌詞が青春かどうかはまた別なんですけどね。

-「へなちょこ」の歌詞に関して言えば、「浪漫」のような創造性というよりは、力を抜いたありのままのアユニさんという印象で。

唯一私を全面的に出したというか、自分だけのことを書いた歌詞です。わりと昔の自分に近い書き方をしているなっていう意識はあります。PEDROをやっていなくて、BiSHに入っていなくて、ただの学生だった私が大人になっていたらどうだったんだろうとか、その当時は就くはずの職があったので、それになっていたらどうなっていたんだろうなとか、昔の自分を思い出しながら書きました。"泣きたい夜は泣いていいですか"っていう疑問形の歌詞があるんですけど、昔の自分だったら、たぶん疑問形のまま終わっていたんですよ。自分で自分の救い方もわからないし、助けてくれる人も近くにいない、みたいな感じだったんですけど、最後のフレーズで"泣きたい夜に泣けばいいよ"って変化していて、ここからの4行は今の自分だからこそ書けるなっていうのはすごく思います。

-最後の4行がとても重要で、その曲がアルバムを締めくくるっていうのも意味深いですね。

そうですね。人生劇場を表しました。

-アユニさん作曲以外の曲について、「さよならだけが人生だ」には"諸行無常"のようなテーマがあるように感じているんですけど、そういう歌詞があえて疾走感のあるバンド・サウンドに乗っているのがいいですよね。

他の曲は、眠れない夜とか、朝4時とかに作詞をした曲が多かったんですけど、この曲は自分が一番冷静に物事を判断できる時間に書いていたんです。サウンドとしてはPEDRO史上一番速いんじゃないかなってくらいのBPMで、ギターのリフもドラムも、本当に銃撃戦みたいな楽曲になっていて、あえてそういう曲に達観した視点で人生を見たときに出る冷静な表現というか、そういう言葉たちを書きたかったんです。"諸行無常"っていう言葉を聞いて自分でもすごく納得しました。まさにそうですね。タイトル"諸行無常"にすれば良かった(笑)。

-(笑)「さよならだけが人生だ」に続く「乾杯」は冒険的な意味での浪漫を歌ったような曲です。

"私"という人間として生涯を過ごさなければいけない事実を肯定しないと、強く生きていけないと感じていて。肯定する最上級の表現の仕方として"乾杯"という言葉が一番合っているんじゃないかと思って作った曲です。この曲はライヴをかなり意識しました。

-間違いなくライヴで強い曲ですよ。サビで"乾杯!"と叫びたくなりました。ライヴで言うと、もともと予定されていた"GO TO BED TOUR"が開催できず無観客ライヴ"GO TO BED TOUR IN YOUR HOUSE"として行っていましたよね。いろんな想いで臨んで、いろんな想いが残ったライヴだったようで。

いっぱいあるんですけど、何から言えばいいんだろうな......PEDROのライヴは生き甲斐と言っても過言ではないくらい楽しみにしていたし、精神的にも技術的にも場数を踏みたいと強く思っていたんです。だけど、世界がこういう状況になっちゃって、抗いようがないというか、強行したとしてそこで体調が悪くなったり、人を失ったりするのも怖いので、結果的にできなくて。本当に楽しみにしていたライヴで、どうにか形にしたいなと思っていたので、いろんな人の力を借りてようやく無観客ライヴとしてできました。なので、全身全霊ではやれましたね。

-無観客ライヴはBiSHでもやっていましたけど、PEDROとしてやってみてどうでした?

世の中では、めちゃくちゃカッコいい演出をして、めちゃくちゃ上手い演奏をして、それだけで成り立つみたいなライヴはあると思うんです。でも、BiSHのライヴの良さって、一番はお客さんとの一体感というか、客席に肉体があるからこそ成り立つ熱量みたいなものなので、お客さんがいないとやりきった感のない部分もあって。PEDROで言うと、それすらも感じる余裕がないというか、全然場数を踏んでいないので、自分のやることだけで頭がいっぱいになっちゃいました。山田健人(yahyel)監督が、お客さんを入れたツアー・ファイナルでやる予定だった演出をしてくれて、100人くらいのスタッフさんが朝から動いてくださって、クラウドファンディングもして、本当にようやく成り立ったものだったんですけど、手応えとかを考える余裕がなかったんですよね。

-終わったあとの達成感はあったんじゃないですか?

私は考えすぎちゃう人間なので......実際にあったことを言うと"練習は裏切らない"という言葉を信じて毎日練習して、ライヴが終わって、土砂降りの雨の中でベースとかを担いで帰ったんですけど、家に着いた瞬間めちゃくちゃ泣いたんですよ。"今日はやり切ったぞ"という達成感より、いろんな人の体力と労力と時間を私に注いでもらってライヴをやったのに、私はそれに応えられたのかな? って。

-とにかくプレッシャーがすごかったんですね。

そうですね。科学の力を使った画面越しのライヴだったので、ライヴ会場で観るのと比べると、観ている側も音が鮮明に聴こえるし、表情も鮮明に見えるじゃないですか? 私、めっちゃ歌が苦手なので......本当にすごいバッシングをされて。それがもう......精神も体力も削って練習したのに、私ができるのはこんなもんなんだって、自分にガッカリしちゃったんです。いろんなことを思ったライヴでした。PEDROのチームとかスタッフさんが愛のある方だし、ひさ子さんも、毛利(匠太/Dr)さんも、ライヴが終わった瞬間に温かい言葉をくれたりして、自分はこんなに温かくされていていいのか? みたいに、自問自答する時間もたくさんありましたね。でも私はPEDROが大好きだから、ここで投げだしたら自分は屍というか、本当にダメ人間になるし、大好きなことはやりたいと思って葛藤してました。

-いろいろ感じた無観客ライヴを経て、9月には"LIFE IS HARD TOUR"が行われます。

明日のことも見えない状態なので、意気込みみたいなものが出したくても出せないんですけど、世界がこんな状況になってなかったらたくさんライヴができて、ライヴ会場もどんどん大きくなっていって、そこでPEDROという存在を広めたかったので、もう......コロナがむかつくなって思います。安心安全のツアーができればそれが一番気持ちいいですね。