Japanese
PEDRO
2020年04月号掲載
自分がカッコいいと思うことをやりたいですね。こんな私がライヴ中にタバコ吸い出したり、酒を飲みだしたりしたらめちゃくちゃ怒られますけど(笑)
-続く「WORLD IS PAIN」は、それこそ衝動に任せたように音を鳴らしているイントロへの導入に高ぶりました。個人的には、ジャンルが違えど、銀杏BOYZの音源を初めて聴いたときの血が沸騰するような感覚が蘇って。
デモではあんなに完全なノイズ・パートじゃなかったんですけど、ああいうのをやりたかったんです。衝動的に楽器を弾いているようなサウンドって、ノイズのパートっていう印象が強くて。それをモロに表したら100パーセント伝わっていたみたいで、すごく嬉しいですね。
-アユニさんって言葉遊びでタイトルを付けていることがよくありますけど、"WORLD IS PAIN"というタイトルもそういうところはありますか? "World is Mine"とちょっと響きが似ているなと思ったんですけど。
いえ、言葉遊びではないですね。このタイトルは"世界は痛いな"って思って。
-アユニさんが感じてきた生きづらさのようなものが出ていますけど、それを受け入れつつあるようにも思えて。
そうですね。生きづらさを受け入れたんです、今までは受け入れられなかったけど。
-それもPEDROで活動してからの変化ですか?
自分で自分を掴めない部分がたくさんあって。わからないんです。
-歌詞を書くことで、自分の変化にあとから気づくような部分もあるんですかね。
そうかもしれないです。今まで歌詞を書いていたときは、自分を偽っているというか、カッコいい自分になりきって書こうと思っていて。でも、今はそういう感覚はまったくないですね。
-自分が思っていることが素直に出た結果が本作なのかもしれないですね。前はそこにトゲだったり毒だったりを加えていたとか。
それは本当にありました。表現の仕方の部分で偽りがなくなったというか、わざと中毒性のあるワードを入れたり、カッコつけたりする部分がなく書けるようになりましたね。自然と感覚は変わりました。今も小さい世界で生きているんだけど、前はもっと殻に閉じこもって、世間知らずで生きてきたので、自分の世界が広がったからなのかもしれないです。「無問題」の"問題ない"とかは今まで思わなかったですし。"問題しかない"、"問題ありすぎ"って思っていたんですけど。
-「無問題」は、"衝動的な生き方のススメ"みたいな印象も受けました。
そうですね。ただ自分に向けてのメッセージでもあるかもしれないです。普通に、真面目に、なんの変哲もなく生きてきたんですけど、"別にそうじゃなくてもいいんだよ"って自分に言い聞かせるつもりで書きましたね。私が堂々と書いた、みたいに見えるんですけど、自分に対して言っている気持ちもあります。
-この曲、田渕ひさ子(NUMBER GIRL/toddle)さんのギターが尖りまくりで。
ヤバいですよね、意味不明です(笑)。デモにもギターは入ってるんですけど、ひさ子さんが弾くときに自分なりにいろいろ変えてくださるんですよ。だから、より"ひさ子色"が強くなってます。
-田渕ひさ子さんとの制作はどうでしたか?
今回のレコーディングは宅録で先に弾いてくださって、それをスタジオでリアンプしてレコーディングしているんです。ひさ子さんは優しいので、なんでも楽しそうにやってくださるんですけど、今回も楽しんでもらえてたらすごく嬉しいですね。
-制作は一緒ではなかったんですね。ツアーのリハーサルなどで今作について何か話しましたか?
ひさ子さんは"PEDROの曲は難しい"って言ってました。私のベースは1本のベースで弾けるようなベース・ラインしか入れてないんですけど、ギターは3本も4本も、ひとりじゃ絶対に弾けないギターを入れてくださっているんです。だからライヴでやるってなると、弾くところを分けないといけないので、難しいって言ってましたね。でも、今回もめちゃくちゃカッコいいギターを弾いてくださってます。
-そして「生活革命」は恋愛ソングですね。
前作でも何曲か恋愛ソングを入れていたんですけど、「NIGHT NIGHT」とか「おちこぼれブルース」の評判がすごく良くて。恋愛ソングを聴きたい人が多いのかなって印象を受けたんですよ。「生活革命」はすごく切なくて、聴いていて胸が苦しくなるサウンドだったので、こういう歌にしました。
-この曲にはどんな"衝動"が込められているんですか?
宮崎夏次系さんっていう漫画家の方がいるんです。その方の短編集の中で、"結局私たちは地図に収まっているんだね"みたいなセリフを夫婦が言う場面があって。それがすごく印象的だったので、そのセリフを見たときに感じたことを衝動的に書きました。その物語では、今言ったセリフがマイナスに書かれていたんですけど、私は違う印象を感じたんです。全然自分の柄じゃない、キモいことを書こうと思ったので"地図にない場所連れてって"って(笑)。
-(笑)さて、新たに4曲が加わってライヴにも変化が起きそうですが、まずは昨年、初めてのツアー("DOG IN CLASSROOM TOUR")を回ってみてどうでしたか?
良かった部分も、悪かった部分もたくさんありました。地域によってお客さんの人間性が全然違うんだとか、ライヴをやっていて学んだことがいっぱいあって。BiSHのときは振付があるので、サビとかでも手を上げたらお客さんも一緒にできるようになっているんです。だから"ライヴをやれば盛り上がるだろう"みたいな感覚がずっとあったんですよ。でも、それが全然違くて。私もライヴを観るときは、心ではノってるし、感動もしてるんですけど、棒立ちで観ちゃうんです。バンドだとそういう反応が明確に出ますね。難しいです、お客さんを音楽だけで楽しませるっていうのは。
-これから、STUDIO COASTを含めて、全公演ソールド・アウトした"GO TO BED TOUR"が行われますね(※取材は3月上旬)。
ツアーでは『衝動人間倶楽部』から1曲ずつ解禁するつもりなので、セットリストの流れとか、ライヴの感じとかもまたひと味違うものが加わってくるのがすごく楽しみです。ツアーでは"衝動"を大切にしたいと思っています。前回のツアーでも"やりたいようにやっていいんだよ"ってたくさんの人に言われていて、私自身もそう思っていたんです。だけど、柔軟性がないのが自分の性格なので、ライヴの前に全部を決め込まないとできない人間なんですよ。それはライヴの場数を踏んでないからっていうのもあると思うので、前回のツアーでできなかった壁とかは全部ぶち壊していけたらいいなと思います。
-新型コロナウイルスの件も心配ですが、アユニさんはNUMBER GIRLの無観客ライヴの配信を観ていたようですね。
あ、観ました。森山未來さんのダンスもすごかったし、ライヴもめっちゃカッコ良かったですね。
-それこそツアーでは無観客ライヴでの向井秀徳(Gt/Vo)さんのような、思うがままのパフォーマンスを観ることができたらいいなと思います。
自分がカッコいいと思うことをやりたいですね。こんな私がタバコ吸い出したり、酒を飲みだしたりしたらめちゃくちゃ怒られますけど(笑)。
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