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INTERVIEW

Japanese

ももすももす

2020年03月号掲載

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私の曲も聴き手が絵画みたいに感じてくれたら


-1曲目の「火星よ、こんにちは」は、すごくいい曲ですね。

ありがとうございます、嬉しい! 私も「火星よ、こんにちは」が一番好きなんですよ。

-1曲目からアルバムの世界に引き込まれるというか、身体ごと沈み込んでいくような感覚がしました。

最初の"息をして猫を出す"っていうフレーズとメロディがずっと自分の頭の中にあって、そこから引き出していった曲です。この曲は、最後の"I say hello,/My dear mars."のところで大コーラスが入っているんですよ。

-普段のももすさんのまっすぐな歌声と、このコーラスとではまた印象が変わりますよね。それらが1曲の中に入ることで、ももすさんの歌の魅力が引き出されているような気がします。このコーラス、相当な数を重ねてませんか?

たぶん64回くらい重ねてます。レコーディングで気が狂いそうになりました(笑)。ずっと同じ言葉を歌っているのに間違えたり、"あれ? なんだっけ?"って言葉がわからなくなったり(笑)。あと、コーラスの部分でエレキ・シタールも入っていて、そこが一押しです。

-最後のコーラス、エレキ・シタール、ギター・ソロの重なりがいいですよね。

この曲のギターはすべて宅録なんですよ。ベースとドラムも打ち込みだし、最新の技術ってすごいなと思いました。なんか、コスメとかより機材にお金を掛けている気がするんですよね(笑)

-ミュージシャンとしてはいいことなんじゃないですか(笑)。「saboten」も新しい曲なんですよね。この曲もコーラスがきれいなのですが、"白い文字"のところが不思議というか、違和感を与える感じになっていますよね。

そこ、逆再生しているんです。ここでもエレキ・シタールが入っているんですけど、逆再生とエレキ・シタールの相性が良くて。あと、"あ⤴あ⤵あ⤴あ⤵"っていうサイレンをコーラスでやっているところも気に入っています。

-え? あれご自身の声でやっているんですか?

はい、そこも気が狂うかと思いました(笑)。

-そういう効果音を入れているのかと思ってました......。「saboten」の"シャンプーの香りは残るといいな"とか、「桜の刺繍」の"僕の洗剤の匂いだけがする"みたいに、嗅覚に働きかけるような言葉が用いられているのも印象的でした。

匂いに想いを馳せることが多いんです。それと、絵を観るのがすごく好きなんですけど、私の曲も聴き手が絵画みたいに感じてくれたらいいなと思って。だから、その願いをより込めて、嗅覚にも訴えかけたいなと。

-ということは、ももすさんは絵画から嗅覚が刺激されるんですね。

はい。あと、音楽と匂いって、"目に見えない"という共通点があるじゃないですか? そこを共存させたいなって思っています。

-「桜の刺繍」は温かなサウンドの"春に浸りたい人"の曲ですよね。ももすさんにとって、春は特別な季節なんですか?

春は好きです。でも全部の季節が同じくらい好きですね。私は飽きっぽいので、1年中冬とかだとずっと同じ服を着ないといけないし、国外に逃げてしまうかもしれない(笑)。

-では、ももすさんにとって春ってどんな季節なんでしょう?

う~ん......桜もちの季節かな。おもちを食べたい。ピンクのおもちを食べて......あとは何が食べたいかな......キャベツ?

-(笑)例えば、夏は開放的な気分になったり、冬は物悲しい気持ちになったりってあると思うんですけど、そういうことで言うと春のイメージは?

瑞々しいキャベツしか出てこないです(笑)。食べ物のことしか考えられないですね(笑)。

-でも、歌詞にはあまり食べ物のことは出てこない気がします。

出てこないですね。自分の名前には"もも"が出てくるので、そこに集約されてます(笑)。歌詞には動物がよく出てくると思うんですけど、動物も大好きなんですよ。

-"猫"とかですね。それで言うと"海"にまつわる言葉も多いなと思いました。

水辺とかがすごく好きなんです。水って、ただならぬパワーを秘めているじゃないですか? 何色にでも染められるし、これがないと生きていけないし、自分の身体の7割が水だし。あと、水を見ているとなんか落ち着くんですよね。地元に水が多かったのというのもあります。

-今回のアルバムのリード曲「隕石」は、イントロからキャッチーなギターで引き込まれました。

作曲した当時はリード曲になるなんて1ミリも思ってなかったんですけど、アルバムを作っていくうちに好きになっていった曲です。いい感じになりました。

-"大好きな君と手を繋いでいるときに/大きな隕石が落ちてきてさようなら/そうしたら君の最後の人は私でしょう/ごめんね好きだよ死ぬまで好きだよ"というサビの歌詞は、いわゆるメンヘラな感じもしますけど、共感を得られそうな言葉でもありますよね。

歌詞については、わりと歌詞と真逆の気持ちで書いたかもしれないです。でも、こういう気持ちも存在していながら、"その気持ちがいつかなくなるんだろうな"っていうのも頭の中にあって。それが隕石みたいに落ちてきて、いろんなものが壊れる瞬間だったりするのかなって思いました。

-思っていることと真逆のことを書く場合もあるんですね。

はい。自分が思っていることを正直に言いたくない性分があって。

-冒頭に、言葉だけじゃ伝わらないことが世の中にあるから音楽を始めたと言っていたので、そこはとても興味深いです。

矛盾してますね(笑)。でも、思っていることを言わないからこそ、伝えられることがあるのかなとも思います。

-そして、アルバムを締めくくる「ハネムーン」は、ロック色の強いアルバムの中で異色の曲です。というのも、こちらは3拍子なんですね。

そうですね。私の記憶では、生まれて初めて3拍子の曲を作ったタイミングだったと思うんですよ。でも、拍子は特に意識してなくて、自分がいいと思う言葉とかメロディを手繰り寄せていったら、3拍子になっていたという感じでした。この曲のシーンは地球ではなくて、もっと遠い星での出来事なんです。自然界では実現しないシンセの音を入れられたのがすごく良かったなと思います。バグパイプも入っているので、ロックと民族楽器の相性の良さを改めて感じました。

-この曲、終わったかと思いきや、ローファイなサウンドが流れるのもいいですね。

あ! 気づいてくださいましたか!

-遊び心を感じました。それがあっての1曲目に戻る楽しみというか。

そうです、嬉しいです。

-さて、アルバムのリリースとなると、ライヴで聴くことを楽しみにしているファンも多いと思います。今後のライヴについて考えていることはありますか?

ワンマン・ツアーをしたいっていうのがひとつの目標ですね。あと、インストア・ライヴでは違うアレンジにして曲を聴かせてみたいっていうのがあります。それってソロだからこそできることだなと思うので、それがすごく楽しみです。

-ところで、ももすさんは楽曲制作もライヴも、どちらも好きですか?

はい。ライヴが近づくと"そういえば私は音楽家だったな"って思い出すんですよ。制作しているときはあまり人には会わないし、職人の気分になっていて。ライヴは自分が音楽家であることを再確認できる場所なんです。