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INTERVIEW

Japanese

ナードマグネット

2019年06月号掲載

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Member:須田 亮太(Vo/Gt) 藤井 亮輔(Gt/Cho) 前川 知子(Ba/Cho) 秀村 拓哉(Dr)

Interviewer:TAISHI IWAMI

ナードマグネットが前面に掲げる"パワー・ポップ"は、ロックンロール/R&B、ハード・ロックやパンク、様々な形をしたロックから、青く甘酸っぱいメロディを持った作品を集めた呼称である。そこには意識的にそれを奏でたバンドもいれば、ひたすらに我が道を走るバンドもいれば、何者にもなれなかったバンドもいる。歌という全方位の共通項がありながらもどこか宙ぶらりんでマイナーなワードだ。だからこそ、そこに美学を見いだした人々の力によって生きながらえている側面も強い。その状況は、彼らの2ndフル・アルバム『透明になったあなたへ』の"透明"が意味する、"僕と君だけの世界"や"取り残された人"とシンクロする。そしてこれからパワー・ポップは、ナードマグネットはどこに行くのだろうか。最初に言っておく。その答えは明るい。

-昨年シングル『FREAKS & GEEKS / THE GREAT ESCAPE』をリリースしたタイミングで須田さんにインタビュー(※2018年6月号掲載)した際に、アルバムも視野に入っているとおっしゃってましたが、ついに完成したんですね。

須田:『FREAKS & GEEKS / THE GREAT ESCAPE』は完全にアルバムを見据えて制作した作品。構想自体は、その前のミニ・アルバム『MISS YOU』(2017年リリース)を出してツアーを始めた頃にはあったので、丸2年が経ってやっと形になりました。ずっと生みの苦しみを味わっているような状態だったので、今はすごくすっきりしてます。

-どんなアルバムにしたかったのですか?

須田:フル・アルバムとしてひとつの物語があるまとまった作品にしやかったんです。なおかつ、これまでのナードマグネットが歌っていたようなことから、もう一歩踏み込んだテーマで作ろうと思ってました。

-須田さんが"もう一歩踏み込んだテーマ"を求めていることを受けて、バンド全体のムードにも変化はありましたか?

藤井:構想みたいなものは、僕らは須田さんから何も聞かされてないんでわからないんですけど、出てきた曲を聴いて、須田さんが変わろうとしてることは伝わってきたんです。だからアレンジもいろいろと悩みながら新しいことをしようと思って作っていきました。

-いつも、テーマをシェアすることはしないんですか?

須田:別に言わなくてもいい思ってるんです。僕がコントロール・フリーク的な立場になってしまうと僕が思うバンド像が崩れるんですよ。だから、基本的には簡単なメロディとコード進行だけを持っていって、あとは各自に任せます。そうじゃないと意味がない。僕の考えてることすべてが正解ではないから、そこは聴いてくれた人それぞれの解釈でいいし、メンバーに対してもそういうスタンスです。考えてくれって。

前川:私としてはそれが不安で、もうちょっといろいろ言ってほしいんですけど......まぁいいかなって感じ。そのなかで、今回はパワー・ポップだけではなくいろんな曲調があったから、バンドが変化していく空気を私なりに感じてたので、今まで以上にその曲の魅力を理解しようとしたり、他の3人が出す音に注意したり、いろいろと考えることは多かったです。

藤井:曲調の幅も広がったし、歌詞も大きく変わっていったように思います。それまでは簡単に言うと冴えない男の恋愛話みたいなものが多かったんですけど、そこからもっと範囲を広げて、生活の中でしんどいと思うこととかを歌うようになっていった。それが重たいとかではないんですけど、すごく刺さってくるんで、ちゃんと作らなきゃなって。今までふざけてたわけではないんですけど(笑)。

-アルバムのタイトルが"透明になったあなたへ"で、最初目にしたときに、ある種の虚しさを感じたんです。個人的な話、子供の頃透明だから見えないってみんなに無視されていじめられた時期が少しあって(笑)。

須田:トラウマを思い出させてしまったんですね。すみません!

-(笑)でも同じ"透明"という言葉が入っている「透明になろう」は、透明になった僕と君だけの世界を歌った曲で。

須田:いろんなイメージを持たせてるんです。「透明になろう」はまさに、"世間の嫌な感じからふたりで逃げ出して誰からも見えなくなればいい。僕は君のことが見えているから"って、そういう歌です。この曲で歌っていることが"透明"が意味することとしてまず念頭にはあったんですけど、"透明"と聞いたら、そうじゃないこと、例えばなくなっていくことを想像する人もいる。最後の方になるとそういうイメージも出てきます。"取り残された自分"みたいな。

-冒頭とラストに、アメリカのスタンダード・ナンバーである「You Are My Sunshine」が出てくるのは、なぜですか?

須田:この曲は昔からめちゃくちゃ好きなんです。最初に意識したのは、いろんなシンガーが歌ってる曲なんでちょっと記憶が定かではないんですけど、映画の"オー・ブラザー!"で、ジョージ・クルーニーたちが歌っていたシーンだったように思います。そこからルイジアナの州歌になっているくらい有名な曲だと知りました。曲調が大らかで能天気な雰囲気もあって、歌い出しが"You are my sunshine, my only sunshine"なんで、"あなたのことがいかに好きか"を歌っているように思わせて、歌詞を読んだらめちゃくちゃ暗くて切ない。

-思いっきり失恋ソング。

須田:それがアメリカの国民的な歌になってることがすごく面白くて、このアルバムのことを考える前からいつかは採り入れたいと思ってたんです。そこにちょうど今回最後に入れることにした「HANNAH」の骨格がばっちりハマったんです。アルバムの最初に出てきたフレーズが後半でまた出てくることって結構あるじゃないですか。すごく好きなんですよね。伏線が回収されるみたいな。だから最初にも持ってきたら、本当にアルバムらしいものになって良かったです。

-そして「Intro」の「You Are My Sunshine」から一気にギアを上げて、2曲目の「アップサイドダウン」と3曲目の「FREAKS & GEEKS」、4曲目の「バッド・レピュテイション」とパワフルな曲が続きます。この前半の流れにある意図を教えてもらえますか?

須田:「FREAKS & GEEKS」と「バッド・レピュテイション」は、今までと違って"なんか言うたろ"と思って書いた曲の象徴。僕は、いつもフル・アルバムを作るときにアナログ・レコードのA面とB面を想定しているんです。今回は7曲目の「虹の秘密」までがA面で8曲目の「テキサス・シンデレラ」からがB面。A面で現状認識や問題意識を提示して、B面はそこから逃げ出そうとした人や取り残されてしまった自分を描くイメージで、流れを考えていきました。その現状認識の要素が最も強い2曲を続けて並べたんです。

-この2曲の歌詞が面白いのは、不満はぶちまけるけど、それは誰かを攻撃するものではなく、人が自分らしくいることを肯定する歌になっていること。

須田:まさにそうですね。

-そこにナードマグネットのバンドたる面白さをすごく感じました。須田さんの言葉がみなさんの演奏に乗ることで、言葉のエネルギーがすごくいい方向に向かうように思うんです。普通のことを言ってても、何かとんでもないことを言ってるような気がしたり、ネガティヴな言葉を発していても、それがちゃんとメッセージになったり。

須田:僕の書いてることなんて日常生活で感じる愚痴みたいな話ですからね(笑)。それがネガティヴなだけじゃなくて、ポップ・パンクみたいな曲調に乗ることでポジティヴな響きを持てるのは、たしかに面白いと思います。ただ怒ってるだけだと響かないじゃないですか。世の中を見てると、みんな怒ってる人は嫌いなんかなって。だから僕もよく嫌われるんですけど、そこをポップに届けられたらいいなって思ってます。

-須田さんはよく怒るんですか?

藤井:酔ってるときはよく怒ってますね(笑)。