Japanese
ねごと
2017年12月号掲載
Member:蒼山 幸子(Vo/Key) 沙田 瑞紀(Gt) 藤咲 佑(Ba) 澤村 小夜子(Dr)
Interviewer:沖 さやこ
-ダウン・ビートとなると、特にリズム隊が鍵になってくる気がしますが。
澤村:「DEADEND LOVE STORY」(※『DANCER IN THE HANABIRA』収録曲)でこういう曲を初めて叩いて難しかったんですけど、今回もなかなか(笑)。Bメロの2拍3連のリズムで手と足でばらばらなことをやるのは特に難しくて。練習しました。今回はちゃんとプリプロをできたので、それも良かったですね。でもライヴでできるかな? 1回崩れたら戻れない怖さがある(笑)。
沙田:そうだねー......ビートがゆっくりしていると余白があるぶんすごくリズムも歌もシビアになってきちゃうから。ベースもBメロが特に難しいよね。
藤咲:Bメロもそうだけど、全部難しい(笑)。この曲はずっと空ピッキングが入っているんですけど、それまで一切空ピッキングをしたことがなかったんです。でも"こういう弾き方がこの曲には合うよ"と(沙田から)言われて......(笑)。
沙田:"どう? やれそう?"って(笑)。
藤咲:"こういう人たちの弾き方を見てみたらどう?"と動画を紹介してもらって、時間をもらってちゃんと練習をして。このアルバムの中で一番難しかったです。プリプロが終わってからも"どこに空ピッキングを入れたらいいかな"と試行錯誤しています。
-「INSIDE OUTSIDE」、「moon child」、「undone」の3曲はROVOの益子 樹さんプロデュースですが、作業的には以前と同じようなやり方でしたか?
沙田:前回と同じく益子さんのワンルームのスタジオに全員の機材を入れて、その中でプリプロをしつつ"これでいいね"となったらそのままレコーディングをするという感じだったので、わりとトントン拍子で進んで。
藤咲:前回はバンドである程度しっかりプリプロをしていって、それから益子さんのところに行っていたんですけど、今回は益子さんのところでプリプロをしたので、前回よりもプリプロを始めてからOKが出るまでが短すぎて(笑)。"これでいいね。じゃあ明日レコーディングしよう"と言われて、"あ、もう突入するんだ......!"って(笑)。
沙田:お昼にプリプロをしていて、"いいじゃん。このまま夜に録る?"っていうのもあったね。それは小夜子が"さすがに明日がいいんじゃないかな......"と言って明日になりました(笑)。あれは面白かったなぁ。
澤村:本チャンとなると後世に残るものでもあるので、へなちょこな音だな~と言われないためにも、もっとちゃんと音作りしたくて、"ドラム・ヘッドとか張り替えたいです"って(笑)。
-ははは(笑)。とはいえ益子さんがGOサインを出すくらいですから、いいグルーヴができていたということでしょう。
澤村:1日目のプリプロで1曲録り終えたくらいだったので、相当勢いはあったのかも(笑)。益子さんは初日に"(レコーディングにおいて)ライヴで4人ができることを最大限にやれたらいいね"という話をしてくれて。バンド感や人力でできることをすごく大事にしている人なんだなと改めて思いました。
-「moon child」は曲の終わり方もアクセントがあります。これぞ人力のなせる業。
藤咲:最後の音はベースを叩いて止めている音なんですけど、ああいうことをやるのも初めてでした。
沙田:もう少し音を引き延ばして叩くかと思ったら、結構早いタイミングで叩いたよね(笑)。でもそういう勢いのあるテンションでやっていたことが詰められたかなと思います。
藤咲:自分のイメージでは結構引き延ばして叩いたつもりだったんだけど、あとあと聴き返したら"あれ? 結構早かった......?"って(笑)。
-(笑)「undone」は作詞が佑さん、作曲が瑞紀さんと佑さんですが、どういう順序で曲ができていったのでしょう?
沙田:そもそも2013年くらいにバンドで合わせていた曲だったんです。メンバー全員が"すごくいい曲だな"と思いながらも、メロディがなかなか乗せられなくて。なんとなく試してみたものの決まりきらず、"いまのタームではないのかもね"と寝かせておいて。それで今回アルバムを作るうえで"アルバムに入れたい曲、入れたいテンションのものってなに?"と聞いたときに佑が"「undone」すごく好き。あのダークなテンションはいまだったらできるかもしれない"と言ってくれて作り始めたんです。
藤咲:アルバムの制作に入る前に、眠っている曲を含めて全部聴き返してみて。自分はこれが好きだなと思う曲が何曲もあったので、それをピックアップしていくなかで「undone」がいいんじゃないかなと思って。
沙田:サビ前まで佑がメロを作ってくれて、"サビがどうしても難しい"ということで私のもとに届いて。サビで鳴っているシンセサイザーのリフがもともと昔からあるもので、ずっと印象的だなと思っていたので、これを壊さずに面白くてかっこいいメロディを探していった......という感じですね。シンセとメロディの絡みが面白い曲になったと思います。
澤村:もともとは「week...end」(2011年リリースの1stフル・アルバム『ex Negoto』収録曲)みたいな曲だったんですよ。シンセ・フレーズが残っているくらいで、原曲とは全然違うオケになっていて。"こんなに変身するんだぁ"とびっくりしました(笑)。
沙田:前段階からあったいい部分は抽出したいけど、それを引っ張りすぎると昔のねごとのままなので。いまの自分たちでどういうふうに聴かせたいかが大事なので、あんまり気にしないでアレンジしていますね。
-歌詞は佑さんの人柄がよく出ているものになっているなと思いました。
藤咲:AメロとBメロは、メロディと歌詞がほぼ同時に出てきたのですんなり書けて。そのあと瑞紀がつけてくれたサビのメロディに歌詞を書いていきました。今回は聴いてくれる人がいろいろ想像できたり、経験したことを重ねられるような余白を残そうと思って。さっき瑞紀が話したことと似てるかもしれない。言い切らないというか。
蒼山:佑ちゃんは最初、もっとちゃんとストーリーや言いたいことがわかる歌詞を書いてきてくれたんです。でもこの曲がオケだけでも神秘的だし、もともと書いていたこともすごく良かったから、はっきり言いすぎなくてもいいんじゃない? という話をして、この歌詞になりました。
-幸子さんは赤裸々な想いを歌詞に綴ることができるようになってから、他のメンバーが書く歌詞を歌うことで思うことなどはありますか?
蒼山:私以外の人が書いた歌詞でも歌ううえで違和感はまったくないし、アルバムで曲が並んだときに、いい意味で誰が歌詞を書いたのかがわからないなとも思う。それはメンバー全員同じものが見えているのかなと思う瞬間でもあって。佑ちゃんの歌詞に限らず、自分もスッと歌詞の中に入って歌える曲が多かったなと思います。特に、益子さん(ROVOの益子 樹/Syn)はみんなが言っているように人力を大事にするから、"時間経過も音楽だ"という哲学を持っているんですね。歌を録るときもAメロ、Bメロ、ひとつずつ録るのではなく、頭から最後までちゃんと流して歌いきる――そこから生まれる抑揚で自然なストーリーが生まれるから、それを大事にしたいとおっしゃるんです。だからナチュラルなテイクが録れているなと思います。
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