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INTERVIEW

Japanese

ねごと

2016年11月号掲載

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Member:蒼山 幸子(Vo/Key) 沙田 瑞紀(Gt) 藤咲 佑(Ba) 澤村 小夜子(Dr)

Interviewer:沖 さやこ

-佑さんはもともと4弦を弾いていて、そのあと5弦を使うようになり、今回はとうとうシンセ・ベースにチャレンジ。いいステップですね。

沙田:進化してるね~。

澤村:佑はお化けの出るスタジオで、ひとりですごく練習してました(笑)。

藤咲:お化けが出るから、みんなと一緒にスタジオに入りたかったんです、そう決めてたんです! でも全然練習が終わらなくて、"残ります"っていうのが何度かありました(笑)。

-お三方は佑さんをお化けの出るスタジオに残して帰っちゃうんですね(笑)。

沙田:帰ります。"佑、頑張ってね~!"ってエールを送ってました(笑)。

-ねごとらしい空気感です(笑)。幸子さんは中野さんとどんな作業を?

蒼山:この曲は、中野さんが"幸子ちゃんは歌のことだけを考えてくれればいいから"と言ってくださって、キーボードは中野さんにすべてを託して、私はとにかく歌に集中しました。歌録りも中野さんとふたりでやって、セレクトもふたりでしていって。中野さんは"人間らしい部分を残そう。ちょっと声がへこんでたり揺れてたりしても、それをいいと感じるならそれは残すべきテイクなんだよ"と力強く言ってくださって。......中野さんは言いにくいであろうことも、ものすごくはっきり言ってくれるんですよね。それは自信がなければ言えないことだと思うし、20年以上BOOM BOOM SATELLITESを続けてきたうえでの生きた知恵や経験をとにかく渡したい、という気持ちを常に持ってくれているような気がして。だから信頼できたし、心を開いていきたいと思ったんです。

-これまでねごとが積み重ねてきたものに中野さんの想いや経験が重なって、音楽面でも精神面でも新しいものが生まれたんですね。「アシンメトリ」がエモーショナルな楽曲になった理由がわかりました。そして益子さんがプロデュースを手掛けたTrack.2「holy night」は音の引き算が施されていて、「アシンメトリ」とは真逆の解釈だなと。

沙田:曲はほぼできあがっている状態で益子さんに持っていって、まず益子さんから聞かれたのは"曲できてるよね。こっからどうする? どうしていきたいの?"ってことだったんですよね(笑)。雪化粧がパーッと広がるようなキラキラ感や、ちょっとひんやりとした空気感が出たらいいなと思っていたのでそれを伝えて。益子さんはフランクな感じで、私たちがどうしたいかという意見をピックアップしてくださってから、細かく詰めていきました。ミックスも益子さんにやっていただいてます。

澤村:アレンジもほとんど完成していたんですけど、益子さんが提案してくださったことをその場でやって、プリプロを2日間くらいやってからすぐにレコーディングして。ノリでできたものをレコーディングするという、「アシンメトリ」とは真逆の作り方なんです。

沙田:"勢い!!"って感じですね(笑)。どシンプルだし。

-歌詞は佑さんと瑞紀さんの共作ということで。

藤咲:瑞紀が"サビの歌詞だけできている曲があるんだけど、この歌詞の続きを書いてみない?"と私に提案してくれて。サビの"私だけじゃダメなのね/君だけじゃ足りないように"というのを読んで、"私と君はどういう状況なんだろう?"と考えて、恋愛観だけでなく人生観にも置き換えられる歌詞にしたいなと思ったんです。絶対にひとりでは生きていけないし、誰かと関わることでいろんなことを吸収していくし――そういうことをテーマにしていきたいなって。"人間"を歌詞で書き表したかったんですよね。人間は最初ひとつ共通点があるだけで嬉しいのに、どんどん"もっとないの?"と欲張りになっていっちゃう、そこからAメロの歌詞を書いて。でも悲しい歌にはしたくないから、最終的には前向きなラヴ・ソングにしたいなと思って書きました。

沙田:あなたも私も、自分だけでは生きていけないなと思って、"私だけじゃダメなのね/君だけじゃ足りないように"という歌詞を書いて。音楽をやるだけでは生きていけないし、恋愛に限らず"ひとつだけじゃ足りないな"、"いろんなものを抱えて自分から吐き出していかないといけないな"と思う瞬間が結構あるんですよ。本当はこれがすごく欲しいんだけど、それだけ持っていてもダメだなと思うことがあるから、この2行が出てきたのかな......。佑がこの2行からいろいろ汲んでくれて。

藤咲:その2行から瑞紀の言いたいことがすごくわかったので。......前まで私は、歌詞を託されるときは、全部書き換えたい派だったんですよね。でも、今のタームは"ここの歌詞はすごくグッとくるから、ここを軸に歌詞を考えよう"という状態なんです。

-ねごとの曲作りの方法論はどんどん増えていますね。その2曲を経て作られたのが「天使か悪魔か」と「school out」。幸子さんのメロディからできた「天使か悪魔か」は、ねごとには珍しくメロディが歌謡テイストで新鮮でした。

蒼山:まず"天使か悪魔か"というテーマから歌詞とメロディを作っていって。天使と悪魔は両極端であるようで混在しているというか、物事は表裏一体だよな、どちらかが正しいとは限らないな......と思って最初は書いていきました。「アシンメトリ」を作ったあとだったこともあって、私もどこか"自分のリアルな部分を絶対に残そう"という気持ちで歌詞をブラッシュ・アップして――"ハートの場所はいつも/傷ついてわかるの"とかは、そういう気持ちで書いた歌詞ですね。それに合わせて瑞紀の作るトラックが変わっていきました。

沙田:歌謡メロだったので、最初に作ったときは歌謡に合うバンド・サウンドだったんですけど、「アシンメトリ」からの流れがあったので、踊れるようにした方がいいなと思って一からトラックを作り直して。

-このアレンジは鍵盤とギターのバランスも絶妙な、ダンサブルなバンド・サウンドで。でも、ねごとの作る"歌謡に合うバンド・サウンド"のバージョンも聴いてみたいです。

沙田:そっちのアレンジを小夜子がすっごく気に入っていて(笑)。

藤咲:小夜子、最後まで粘ってたよね(笑)。

澤村:"これ消さないで~!!"って言ったけど消えちゃった(笑)。ギターが結構効いた感じで、「黄昏のラプソディ」(2014年リリースの両A面シングル表題曲)みたいなニュアンスに近かったんですけど、「アシンメトリ」の流れがあるので諦めました(笑)。でも、実際に収録されたアレンジも好きです!