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INTERVIEW

Japanese

藍坊主 × 勝又 悠

2016年11月号掲載

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藍坊主:hozzy(Vo) 田中 ユウイチ(Gt) 藤森 真一(Ba) 渡辺 拓郎(Dr)
勝又 悠
インタビュアー:吉羽 さおり Photo by 川村 隼也

-女子高生が?

藤森:この厳つい見た目の中にいるんだと思うんです。

hozzy:びっくりするほど、脚本でのセリフとかが──俺は男なので、実際に女性が作品を観たときにどう思うのかは想像つかないですけど、俺が思う女の子のいらつきとか焦燥感とかが、リアルにセリフに出ているんですよね。よくこんな言葉が出てくるなというくらい、ガーッと言葉を羅列していく感じもまさにそうだし。作品としてのリアリティがあるんです。まさにモーリー(藤森)が言ったのと同じで、勝又さん、女じゃんって思って(笑)。でも、普段話を聞いてると、"制服が好きなんですよ"って言うんですよね。

渡辺:それだとなんか、語弊があるんじゃ(笑)。

hozzy:(笑)でもね、よく話を聞いているといわゆる性的なものではないんですよね。単純に若さの象徴というか、言い方が変ですけど、神聖なものみたいで。最初聞いたときは嘘くせぇなと思ってましたけど(笑)。だから、ああいう映像にしたときも、いやらしさがないキレイなものだし。自分もそうでしたけど、10代のあの時期にしかない、あの時期にしか感じなかった時間みたいなものが切り取られてる。あれを感じさせる作品って、稀有だしね。すごいなと思います。どこで培ったんだろうって。

-男性の監督が撮っていながら、女の子のモノローグだけで物語を完璧に成立させていて。そういう違和感のなさはたしかに、監督の中に女の子がいるような感じですね。

hozzy:あれ、本当に考えたんですよね?

勝又:もちろんだよ(笑)!

藤森:僕は昔から宮崎駿監督が好きで。ちょっと似てるところがあるなと思うんですよね。田舎の風景の感じにしてもそうだし、よく考えると宮崎駿さんの作品って主人公が女の子ばかりなんですよね。あの人の中にも少女が住んでいて、しかもあれだけの日本人が感情移入できるような少女ができあがるっていう、そういう感覚に近いものをきっと持っていると思うんです。僕は曲を書くときに、主語はだいたい"僕"で、"わたし"はほとんどないんですけど。勝又さんはまた違った物語の作り方なんだなというのは、刺激がありますよね。

-勝又さんの場合、視点が自分ではないんでしょうか? 自然と今の形になっているんですか?

勝又:そうですね。映画界から見たら、異端なことをやっているんです。それはどこかしら、映画に対して諦めている部分があって。"ああいう映画は、ああいう人がやっていればいい"と。ちょっと捻くれているんですよね。常に自分にしか出せないもの、できないことで勝負をしていきたいんです。それが評価されるかわからないし、生活が潤うかもわからない。でも少年のころから、曲げたくない部分というのはあるんですよね。曲げるなら映画をやらなくていい気がする。

田中:勝又さんの映像は、音楽的だなと思うところがあるんですよ。音楽では、ひとつのリフでも、バックの演奏が変わると雰囲気が変わるっていうのがあるじゃないですか。モチーフは変わらないけど、背景が変わると全然違って感じるというのが勝又さんの作品にはあって。例えば新作の"何の話をしているの"でも、女の子が早く喋っているという現象は一緒なんだけど、後半になると、まったく同じことをやっているのにすごく怖くなるとか。同じことを言っているはずが、状況が変わると違って聞こえてくる。自分は特にアレンジをするときにそれをめちゃくちゃ意識するので。構成の仕方は、音楽的だなと感じますね。

-新作"何の話をしているの"では、藍坊主がモチーフとなってますが、主演の女の子のセリフで、思い切り拓郎君がいじられるのがまたいいですね(笑)。

渡辺:そうなんですよねぇ。

勝又:作品の中では特に名前は言ってないし、"タンクトップ"って言ってるだけなのに。でも想像できるんだもんね(笑)。

渡辺:タンクトップなんてみんな着るはずなのに、なんでなんだろうなぁ(笑)。

-"何の話をしているの"は藍坊主のことが散りばめられているのはもちろん、アルバム『Luno』収録の「うさぎとかめ」が主題歌として使われています。この物語はどういうところからの着想だったんですか。

勝又:実はあの作品は、急遽作ったものだったんです。まったく別で予定していたものがあったんですけど、それが一気になくなって。これはヤバいとなって、20時間くらいで作らなきゃいけなくなったんですよね。

田中:すごいな。

勝又:だからもう、剥き出しで。自分の持ち道具を全部を使ったんです。使わないと間に合わないぞってなって。その持ち道具の大半を占めているのが、藍坊主なんですよ。それでまず4人に、"藍坊主をモチーフにして映画を作っていいか"と話をしたんです。

-その時点では具体的にどんな話なのか、4人はまったくわからず?

hozzy:わからないですね。主人公の女の子の資料だけきて(笑)。あぁ、かわいい子だなと思ったくらいで。"悪いようにはしないから"っていうから、間違いはないだろうと(笑)。もうドキュメンタリー映像を作ってくれた時点で、なんとなくそこはわかるしね。

-使う曲が「うさぎとかめ」というのは、そのときに決めていたんですか?

勝又:あとから言おうと思っていたんです。先に言うよりも、映像ができあがってから言った方が説得力があると思ったので。もしダメだって言われたらどうしようとは思っていましたけどね。