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INTERVIEW

Japanese

クレヨンイーター

2016年11月号掲載

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Member:市川 マコト(Vo/Gt/サンプラー) アキヤマカズヒロ(Gt) 小野 町子(Ba) 武藤 巧磨(Dr/Syn)

Interviewer:蜂須賀 ちなみ

既存ジャンルのリバイバルに留まらず大胆な実験精神に富んだオルタナ・サウンドと、対象物を少し違う角度から捉える歌詞。クレヨンイーター初の全国流通盤『サタニックマジョルカ』で鳴らされる音楽は、新鮮でありながらもどこか懐かしく、聴く人によって受け取り方がガラッと変わるものだ。結成から約5年、自分たちだけが鳴らせる音楽を求めてきたこのバンドの真ん中には"同調の空気に呑み込まれずにいてほしい"というメッセージがあるという。その心は? ということで、メンバー4人に話を訊いた。

-まず、結成の経緯を教えていただけますか?

アキヤマ:もともとヴォーカルの市川マコトがやってたバンドがすごく好きで、よくライヴに遊びに行ってたんですけど、そのバンドが休止するということで、(市川が)"新しいバンドやりたい"って言ってるのを聞いて。それでまず俺が"一緒にやらせてよ"って言ったんです。それがきっかけでしたね。もともと自分もギター・ヴォーカルをやっていたんですけど、新しいことをやりたくて。彼のステージも、話すことも、作り出す音楽も全部面白くて、他の人にない魅力があるなと思いました。

市川:僕は、とにかく"新しいバンドをやりたい"っていうことだけは思ってたんで。そしたらそうやって結構強くアプローチしてもらったので、"じゃあこの人とやろうかな"っていう感じで話を進めたんです。

-おふたりの中には、"次はこういうバンドにしたい"みたいなイメージはあったんですか?

市川:お互い前のバンドは、60~70年代風のロックンロールをやっていたんですけど、新しいバンドではちょっとそこを抑えめにして、2000年代以降のオルタナというか、そういうロックをやりたいなっていう話はありましたね。ただ、そういうのってどうしてもクールなイメージがあるので、そのままやるんじゃなくて、あたたかい歌を乗っけたいなっていう。そういうことをしている人はきっと他にはいないから、自分たちで形にできたら面白いと思って。

-武藤さんと小野さんが加入したのはいつごろですか?

武藤:アキヤマがファンAだとしたら、ファンBみたいな奴が他にいたんですよ。

市川:彼は(アキヤマと)同じく"加入希望"みたいな感じで僕のところに来てて。

武藤:そのファンBは学校の後輩だったんですけど、そいつから"(クレヨンイーターと)スタジオで1回音を合わせてみることになったから、ちょっと遊びに来てくださいよ"って連絡があったんです。で、行ってみたら、結果的に俺がバンドに入ってそいつが入らなかったっていう(笑)。

アキヤマ:そのときは自分もギターを弾いてて、彼もギター希望だったので。

-担当パートが被っちゃったんですね。

市川:そのときファンBは、"ドラム決まってないんだったら先輩で上手い人がいるので連れてきますよ"って言ってて。でも高校2年生のそういう言葉って全然アテにならないじゃないですか。そしたら想像以上にいいドラマーで、僕もアキヤマもすごい驚いて。で、"これはドラマーの方だけでも口説かないと"って感じになったんです。

アキヤマ:話してみたら(武藤も)バンドを探してた感じで。

武藤:他のバンドもやってたんですけど、ちょうど違うことがやりたかったのでいい機会だなと。あと趣味も合ったし。

市川:で、そのあとベーシストも決まったんですけど、何回か替わって、町子は去年の4月に入ったんだよね。

小野:うん。

市川:で、今の形になりました。

-そもそも、"クレヨンイーター"というバンド名の由来は?

市川:そもそもは、僕が前にやってたバンドの曲のタイトルだったんです。

-へぇ、そうなんですか!

市川:はい。まず、クレヨンイーターっていう怪獣がいると想定したんです。その怪獣はクレヨンを食べちゃうんですけど、そのクレヨンっていうのはみんなの心の中にある個性というか、それぞれの色みたいなもので。クレヨンイーターの存在に気づかないでいると、みんながどんどん無色になっていってしまう。それで、例えばみんなと同じスカートの長さにしてみたり、みんながいいと言ってるものをいいと言わなきゃいけないと自然と思い込んでしまったり、そういうのは全部クレヨンイーターっていう怪獣がいるからなんだよ、っていうメッセージの曲だったんです。そのメッセージ性自体をすごく気に入ってたし、それが伝えていきたいことでもあったので、バンド名にしたんですよね。

ホームページのプロフィール欄には"クレヨンイーターは新時代の目覚まし時計とも呼べるひとつの哲学かもしれない"とも書いてありましたけど。

武藤:それも今の話に繋がるよね。でっかいものにとらわれる前にとりあえず自己に目覚めてくれよ、みたいな。

市川:怪獣にクレヨンを食べられてる状態が、それぞれの人間の個性が寝てしまってる状態だとしたら、そうじゃなくて、"自分が好きなものは何なのか"、"自分のしたいことは何なのか"っていうのをみんなが気づいてそのとおりに行動できるようになった方が素敵な世の中になるだろうなぁって思って。じゃあ"みんな起きてよ"って言えるような人になりたいなと。

-それが曲名として存在してたということは、今話していただいた考え方は前のバンドで活動してたころから根底にあったということですよね。

市川:そうですね。言葉にはしてなかったんですけど、そういう気持ちはずっとありましたね。

-ずっとというのは、音楽をやる前からということですか?

市川:物心ついたときから自分は"普通になりたい"っていう気持ちがあって。幼稚園に行ってても小学校に行ってても、"自分は周りと違うな"って感じることがあったんですよね。

-例えばどういうときにそういう気持ちになったんですか?

市川:なんだろう......。単純に、みんなが好きなものを自分は好きじゃないっていう感性の話とか、"流行りのオモチャを僕は持ってない、何で?"っていう疑問とか、家庭環境とか、いろいろあるんですけど標準とはズレているなってなんとなく思ってて。違和感みたいなものをモヤモヤ感じてたんですよ。当時僕はそれがつらかったので、"みんなと同じになりたいな"っていうふうにひたすら思ってたんですけど......ただ、"人と違うのは悪いことではないかな"ってことを中学生ぐらいのときに思い始めて、それに気づけてからはわりと楽しくなったというか。そういうふうにモヤモヤくすぶってるけどその殻を破れない人ってたぶん世の中にはたくさんいると思うんですけど、そこから自分が一歩出られたから、出られない人たちにもそうしてあげたいというか、昔の自分を引っ張り出してあげたいなっていう気持ちがありますね。