Japanese
クレヨンイーター
2016年11月号掲載
Member:市川 マコト(Vo/Gt/サンプラー) アキヤマカズヒロ(Gt) 小野 町子(Ba) 武藤 巧磨(Dr/Syn)
Interviewer:蜂須賀 ちなみ
-自分のことを語るというよりも、聴いた人に対して何かのきっかけを与えたいと。
市川:そうしたいですね。じゃないと、みんなを目覚めさせられないじゃないですか。僕の色で塗りつぶしてもしょうがないから。
-そこで怪獣クレヨンイーターの話に戻ってくるわけですね。では、13曲の中から印象に残ってる曲をそれぞれ挙げていただけますか?
アキヤマ:僕は7曲目「猫が歩いてたよ」ですね。この曲のイントロのノイズを自分たちで作ってるんですけど、楽器をいくつ使ったのか覚えてないくらいで。
市川:木琴叩いて、鉄琴叩いて、グランド・ピアノ弾いて、シンセサイザーの音も入れたりして。ひとつの楽器の音に聞こえるようにいろいろな音を混ぜて作ったりして、すごく贅沢にやらせてもらいました。
アキヤマ:すごく楽しかったですね。サビの歌詞もめちゃくちゃカッコいいし、単純に好きな曲です。
小野:私は10曲目「怪獣前線」のイントロがかわいくて好きです。いっぱい声が入ってて。
市川:自分たちも歌ったし、小学生に歌ってもらったりしたんです。
-そう、全体的にイントロに対するこだわりが強いなと思ったんですよ。曲ごとにいろいろな音が聴けて面白かったです。
市川:僕、ロック・ミュージックの中で一番好きな部分がイントロなんですよね。"あの曲のイントロかっこいいな"って思ってもサビを知らない曲とかあるし(笑)。だからカッコいいイントロを作りたいっていう思いはずっとありますね。
-なるほど。武藤さんはいかがですか?
武藤:やっぱり「サタニックマジョルカ」が好きですね。前に誰かが"ロック・ミュージックとポップ・ミュージックの違いはやっぱり歌詞だよ!"って言ってて、それにすごく共感できたんですよ。そういう意味でもこの曲はかなり強いと思うし、作詞したのは僕じゃないですけど、個人的に思ってたことがそのまま歌われてるので。これがMステ(ミュージックステーション)とかラジオで流れたらびっくりしますよね。"なんじゃこいつら!"って思えるような曲というか。
-たしかにそうなったら痛快ですよね。では、最後に市川さんは?
市川:僕は4曲目の「白亜紀の想い出」で。これはあるときの僕の思いつきを形にした曲なんですけど――ちょっと話が飛びますが、臓器移植をされた人が前の臓器の持ち主の方の記憶や習慣が移るみたいな話をしているのをテレビで見まして。真偽はさておき、それが本当だとしたら、記憶や感情って脳に残るものじゃないのかな? ということで。心臓を移植されたり、目を移植されたりしてもそういうことが起きるっていうことは、身体のいろいろなパーツに記憶や感情が残ってるということじゃないですか。ということは、骨にも残ってるということになるし、そしたら化石にも記憶が残ってると思うんですよ。そう考えると、博物館の恐竜の化石の中にも、昔好きだったメス恐竜の記憶だったり、おいしかった食べ物の記憶だったりが残ってるかもしれなくて。それを掘り出すような研究が進んだらすごく面白いことになるなと。
-めちゃくちゃロマンありますね。
市川:はい。で、それを誰かに託そうと思って"誰か頑張って研究してください"という意味でこの歌を作りました。
-なるほど(笑)。では、そういう知識のある方に聴いてもらえるといいですね。
市川:そうなんです。学者のみなさん、よろしくお願いします(笑)。
-今回音源を聴かせていただいて私が思ったのは、この13曲の流れには主にふたつの感情が込められてるんじゃないかということで。それを簡単に言うとすれば、ひとつ目は"そもそも普通ってなんだっけ?"っていう疑問で、ふたつ目は"どうせ私のことなんて誰も見ていないんだ"っていう嘆きなんですけど。
市川:やっぱり自分の経験や成長の中で感じた部分が曲に表れてると思うので、ひとつ目はそのとおりだと思うんですよ。でもふたつ目は僕としてはピンとこないですね。......あ、でも"見てくれない"じゃなくて"わかってくれない"ならちょっとしっくりくるかもしれないです。でも"誰も僕のことなんかわかってくれない"ではなくて、"他の人から見えない部分は誰しもが持ってるよね"、"何を持ってるかはわからないけど、あなたが何かを持ってるんだということを僕は知ってるよ"っていう。それがまさに言いたいことだし、6曲目の「悪魔の涙」はモロにそれを歌ってるような曲ですね。僕がそれを言われたらすごく救われるなと思ったから、それを言いたいなと。
-誰かにそう言われたいからこそ、自分から先に言うようにしてるということですか?
市川:そうですね。自分を救える曲を作りたいっていう思いがありますね。それは現状の自分に対してではなくて、"中学生のころの自分がカッコいいと思う曲を作りたい"、"中学生のころの自分が元気になるような曲を作りたい"とか、そういう気持ちがあるので。
-だから"どうせ誰もわかってくれない"という否定的な意味ではないと。
市川:そうですかね。すごく単純に言うと、"わかってもらえないよね、なかなか"みたいな感じです。
-わかりました。では最後になりますが、バンドの今後の展望などを訊かせていただけますか。
市川:とにかく今はアルバムを聴いてほしいっていうのが一番で。もう気に入ってもらえなくてもいいぐらいの気持ちというか、ただただしっかり聴いてくれる人がたくさんいたら、それで世の中が変わってくれるような気もするし、単純にいいものができたから聴いてほしいという気持ちもあるし。これからどうこうしていきたいっていうのはもちろんあるんですけど、今はとにかく聴いてほしいっていう気持ちがデカいですね、僕の中では。
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