Japanese
fhána
2015年11月号掲載
Member:佐藤 純一(Key/Cho) yuxuki waga(Gt) kevin mitsunaga(PC/Sampler) towana(Vo)
Interviewer:吉羽 さおり
-鼻歌で作ってるとは意外でした。
towana:ということは、歌えるんだ(笑)!
佐藤:大まかなところは鼻歌なんですよね。細かなところはもちろん鍵盤で詰めたりしますけどね。だから、完成したものをいざ鼻歌で歌ってみると、細かいところが違う(笑)。
-覚えやすさとか親しみやすさは、そのメロディを描くうえで重視しますか。
佐藤:気持ちのうえでは覚えやすく親しみやすく、歌いやすくしたいんですけど。作ってるときはそっちよりも、音として聴いて気持ちのいい方を選んでいるんでしょうね。結果、難しくなっているような気がします。
-では先ほど話にあがった、yuxukiさんの「c.a.t.」。この曲どこかエキゾチックというか、中華風な雰囲気のコーラスもあったりとか、不思議なグルーヴが面白い曲ですね。
yuxuki:これはインディー・ダンス・ロックをやりたくて作ったんです。
-たしかに、ファットなベース・ラインが肝で。
yuxuki:このベースはthe band apartの原さんなんです。おかげでタテのラインがかなり出てますね。今年に入って、共通の知人を通して知り合いになったんですけど。作った曲にノリが欲しくて、原さんにお願いをしてみたら、OKしてくれたので。もともとthe band apartが大好きなので嬉しかったですね。
-パッと浮かんだのが原さんだったと。
yuxuki:曲的にそうかなと思ったんですよね。いろいろ相談して、今回のは"モータウンぽい感じ"みたいな話になりました(笑)。
-ということは、お願いする際に具体的なオーダーをしなかったんですか。
yuxuki:"原さんらしく弾いて欲しい"としか言ってなかったんです。
佐藤:そういえばたしかに、中華風ということではこのイントロはなるほどな感じもありますね。僕は、細野晴臣さんの「スポーツマン」(1982年リリースの6thアルバム『フィルハーモニー』収録)という曲があるじゃないですか。そのイントロがこんな感じのシンセ・ループなんですよね。その雰囲気を感じたな。
yuxuki:そうなんだ。完全に北欧っぽい感じで作ってた(笑)。
kevin:それが意外と東洋に行っていたという(笑)。でもイントロで使ってる楽器としては、フルートにグロッケンとか、ちょっと北欧感がありますよね。
yuxuki:そうそう、フルートとグロッケンとピアノとハープ。ミニマル的に、ひたすら同じフレーズをループさせていて。
-温度的には控えめなイメージで。
yuxuki:そうです。楽器隊が入って一気に熱くなる感じにしたくて。
-で、モータウンも入ってきちゃいますからね(笑)。
yuxuki:そこがまた全然違う感じで面白いですよね。この曲に関しては制作スケジュールが詰まっていたので、僕が大半作ったものをみんなにスタジオでいろいろとやってもらった感じなんですよね。"Jupiter-8"というシンセの名機があるんですけど、それを使って打ち込みの音源をリアルタイムで佐藤さんに差し替えてもらったり。そういうスタジオ・ワークが多かった気がしますね。
佐藤:"TR-808"という、超定番のリズム・マシンを使ったりね。"TR-808"の音って、今やほとんどのソフト・シンセに入っているんですけど。今回はその、本物の音を鳴らしてレコーディングしましたね。
-そうした機材を使うこともこだわりだったんですか。
yuxuki:そうですね。"TR-808"って、不思議なグルーヴが出るんですよ。淡々と鳴らしているだけでも。
kevin:たぶん、"揺れ"があるんでしょうね。とにかく定番且つヴィンテージな機材で、"808"の音が入っている曲は本当にたくさんあります。
佐藤:機材に詳しくない人でも、聴けば"ああ、これね"っていう感じのね。
yuxuki:ソフトシンセで機械的に打ち込んでいくだけでは絶対に出ないグルーヴなんですよね。それに合わせてドラムとベースを演奏してもらったのでノリが縦に合って、結果的には"TR-808" を使って良かったなと思います。あとは、その場でウィンドチャイムを追加したり。そうやってスタジオでどんどん曲が仕上がっていくのが面白かったですね。
-kevinさんはこの「c.a.t.」ではどんな作業をしているんですか。
kevin:この曲に関して僕はそこまで音を入れてないんですよ。わかりやすくやってるのが、曲全体を切り貼りというか。1番と2番の境目でちょっと音が変化するところがあるんですけど、そこを主にやっていますね。"スタッター・エディット"といって、最近の音楽だとわりとよくある手法なんですが、できあがっている曲の波形をぶった切ってしまって、並び替えたり、ピッチを変えたり、加工することで新しい音を作ったりします。デジタルならではの手法ですね。
-やはり、みんな得意分野が違って、それぞれの分野を曲に持ち寄れるこのケミストリーが面白いですね。
kevin:そうなんですよね。、ちょっとずつ畑が違うので。好きなものは結構似ていて、同じ方向を向いてはいるんですけど、できることが別々なので。うまく分業しながら作れるのは強みですよね。
佐藤:ちなみに"コメットルシファー"の副題の"The Seed and the Sower"は、"種と種を蒔く人"という意味なのですが、今回のシングルを皮切りにfhánaの音楽の種を世界中に蒔いていきたいという想いも込められているので、ぜひよろしくお願いします。
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